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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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良い仕事をした

 じたばたしているうちに眠ってしまったヨンをはじまりに、それぞれが一休みをすることになり、全員が一巡して睡眠をとったところで遺跡探索が再開となった。

 太陽が見えず今が何時かわからないので、なんとなくの行動開始である。

 

 昨日の間に開けていた通路からアンデッドがやってくることはなく、どうやら前方に活動中のアンデッドは存在しないらしいことが分かる。あるいは、ハルカたちの存在を察知できていない可能性もあるが。

 同じような部屋を更に三つほど抜けたところで、クエンティンが一行の進みに待ったをかける。そうして作っていた地図を集まった仲間たちに見せて言った。


「あのさ、もしここからさらに向こうっかわの壁方向に進むと、遺跡をぐるっと回ったことになるんだよ。で、ここがアンデッドが大量に出てきた大部屋。そこのちょうど奥の方に出ることになる。あの部屋と繋がってるかどうかは分からないけど、アンデッドが来ないところを見ると、多分繋がってない」

「でも、何か大事なものを納めている場所には違いない、だろ」

「そう!」


 クエンティンの言葉を継いで悪戯っぽく笑ったヨンを、クエンティンが指差して同じく笑う。そうしてパンと音を立てて二人で手を合わせたところで、ジーグムンドが難しい顔をした。


「あいつらがなだれ込んでくるかもしれないってことだな」

「そういうこと!」

「なら俺たちが先に進むか」

「そうするか」


 アルベルトの提案にジーグムンドが同意。

 他の面々も異論はないようで、それからしばらく部屋を探索したのち隠し通路を発見。


 話し合いの結果アルベルトとモンタナが横並びで先頭を、そのすぐ後ろをハルカとジーグムンドが進んでいく。

 ジーグムンドが前へ行くと言っていたのだが、アルベルトが譲らなかったのだ。

 別に新しい発見を一番に見たいわけではなく、戦いの機会があまりに少なかったので退屈しているだけである。


 通路を抜けた先に待っていたのは、天井の高い部屋。

 広さはそれほどではないが、部屋中に敷き詰めるように壺が並んでおり、刀剣やら、金銀財宝らしきものが見えている。壁や柱もハルカの出した光球に照らされることで、白くつやつやした素材が使われていることが分かる。

 この世のありとあらゆる豪華さを詰め込んだような部屋であった。


 そうしてその真ん中に鎮座しているのが、ぼんやりと薄く光った石の棺である。

 どうやって作り上げたものなのか、その棺はうっとりするほどに角のない滑らかに整った形をしており、それと対照的に、表面には読み取ることのできない複雑な文様が彫られていた。


 誰かが部屋へ入り見渡す度、感嘆の声があがる。


「よし、開けるか」

「あの、あれどう見ても魔法的な効果のある何かですよ?」


 ヨンが腕まくりして前へ出たところで、ジーグムンドが摘まみ上げ、ハルカが見たままのことを伝える。


「そんなことは俺だってわかってんの。でもせっかく来たのに開けないで帰るわけにはいかないだろ!」

「それはそうだが、せめて逃げ道を確保してからだ。何が起こるかわからん」

「賛成です」

「私も」

「俺も」


 全員一致の意見に、ヨンも「うっ」と押し黙って目を泳がせる。


「まぁ、確かにそうだな、そうだよな……。この部屋の隠し通路も探すか」


 ちょっと前ならジーグムンド以外の他の遺跡冒険者仲間は、飛び上がって棺に走ったかもしれないが、彼らはついこの間それで痛い目に遭ったばかりである。

 喉元を過ぎて熱さを忘れてしまったのはヨンだけだったようだ。

 何とか良い言い方をするのであれば、それだけヨンが遺跡馬鹿を極めているとも言えるだろうか。


 床に下ろされたヨンと仲間たちが、部屋に散らばって隠し通路を探し始めて暫く。

 何も見つからず、一人の冒険者が副葬品の下を調べようと、壺の一つに手をかけた瞬間であった。

 棺の蓋が開いていないのに、ぼんやりとした人型の何かが棺から浮かび上がってきた。


「全員下がれ!」


 部屋をじっと見張っていたジーグが号令をかけると、仲間たちはあっという間にジーグの周りに集まり、盾にするようにして通路の方へと避難する。


 その青白い影がゆっくりと体を起こすようにして浮かび上がるのに合わせて、部屋に置かれた壺に挿された大小さまざまな武具がゆらりと宙に浮かび上がる。


「うわ、マジか」


 思わず声を上げて、アルベルトが僅かに口角をあげながら剣を構える。

 飛んでくればすべて叩き落とすつもりだ。


 そうしてその切っ先が全てハルカたちに向いた瞬間、ハルカは丁度いい感じに同じくらいの高さに浮いている武器を、左右から真ん中に集めるように、障壁の中に仕舞い込んだ。


「ポルターガイスト……、ですかね」


 どんな動きをするかわからない以上、動き出す前に何とかしてしまう方がいいに決まっている。ぎゅっぎゅと幾重にも障壁を重ねて、万が一にも発射されて武器自体が傷ついたりしないようにも気をつかったつもりだ。


 良い仕事をした。


 ハルカがそう思って青白い影、おそらくゴーストの次なる行動を待っていると、青白い影はゆっくりと頭の上にまとめられた武器を見つめ、しばらくそのまま動きを停止してしまったのであった。

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― 新着の感想 ―
相変わらずダンジョンギミックみたいな戦法だ ボスっぽいのにかなり可哀想になってきた
アルは残ってりゃ良かったと悔しがってるでしょうね。
何と言うことでしょう?! か、かわいそう〜(⌒www⌒; )
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