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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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報告とか紹介とか

「一人一つは必ず買えよ? はぐれた時困るからな。本当に真っ暗になるんだぞ。あ、手に持つのじゃなくて、腰にぶら下げられるのがいい」


 必要な物を買いそろえる時もヨンは騒がしい。

 『なるほど』と思ったハルカが、お勧めされたランタンを手に取ると、横にいたアルベルトが口を開く。


「ハルカはいらなくね?」

「いえ、なんかほら、急に魔法使えなくなるかもしれませんし」

「はいはい、それでハルカが安心するならいいでしょ」


 コリンはお金にしっかりしているが、決してけちなわけではないので、必要経費はしっかりと使っていくタイプだ。


「僕はトーチがいるです」

「いやいや、そんなんじゃ全然光源足りねぇって、うわ!」


 モンタナが頭の上でのんびりとしているトーチを両手で指さすと、ヨンは渋い顔をして手を横に振る。するとトーチは僅かにみじろぎしてから、口からぼっと小さな火球を吐き出した。


「び、びっくりした。なんだその生き物」

「火竜です。賢いです」

「はー……、火竜ってそんな小さなのいるんだな。俺は生き物には詳しくないから知らないけど……。いや、とにかく買っておけって、別に持ってりゃ便利なんだから」


 そんなやり取りをしながら買い物を一通り済ませて、今度はそのままハルカたちが泊まっている宿へと向かう。宿の部屋にはノクトが休んでいるはずなので、一応報告だ。

 フロントの広場でジーグムンドたちを待たせて、ハルカは一人でノクトの部屋へと向かう。

 ノックをするとくぐもった間延びした声で、「開いてますよぉ」とあったので扉を開けると、部屋の中ほどに仰向けに浮いていたノクトがゆるりと近寄ってくるところであった。

 そのままの体勢でのけぞるようにしてハルカを視界に収めている。

 腰やら首やらに悪そうだが大丈夫なのだろうかと、ハルカは少しだけ心配になった。

 見た目は若々しいが、いつの間にか認識がしっかりと老人相手のものになっている。


「どうしましたかぁ?」

「ジーグムンドさんたちと会いまして、遺跡に連れて行ってもらえることになりました」

「おぉ、良かったですねぇ。いつも思いますが、ハルカさんたちは人との巡り合わせがいいですよねぇ。日頃の行いですかねぇ……」


 喋りながらゆるりと姿勢を変えて、今度は障壁のイスに座るような形でハルカと向き合うノクト。尻尾は隙間にあけた穴からたらしているようで、背もたれは随分と後ろに傾いている。

 本格的にくつろいでいるのを見ると、まず断わるだろうと予想しつつも、ハルカは一応ノクトにも誘いをかける。


「師匠は一緒にきますか?」

「いやぁ、のんびりしてますよぉ。僕は日の当たる所の方が好きですねぇ」


 ふと窓際に目を向けると、カーテン越しに緩やかな日差しが差し込んできている。  

 きっとそこでのんびりと昼寝でもしていたのだろう。


「わかりました。それじゃあちょっと出かけてきますね」

「はぁい、気を付けて行ってくるんですよぉ。一応僕の方でサラさんの方は気にしておいてあげますから」

「ありがとうございます」


 最近のノクトは本当にすっかり隠居老人のような生活だ。

 とりあえず報告を果たしたところで戻って仲間たちと合流。

 するとヨン他数名が、宿の中をうろうろと見物して回っていた。


「いやぁ、いい宿泊ってるなぁ……。やっぱ地上の冒険者って儲かってんの?」

「まー、ぼちぼち?」


 【竜の庭】のお財布を握っているコリンが適当に誤魔化す。

 少なくとも彼らよりは相当儲かっているはずだが、それを言ったところで嫌みになるだけだ。


「やっぱりなぁ。いやぁ、俺たちも金払いのいい後ろ盾みたいなの欲しいよな……」

「あ、そうそう、それの紹介もしたかったんです。実は護衛してきた商人の方が遺跡に興味があるらしいんです。この宿もその方がとってくれたんですよ」

「へぇ、そんな酔狂なやつもいるんだな。どっから知り合ってくるんだよ、そんなの」

「呼びましたか!?」

「うわ、びっくりした!!」


 ぬるっとヨンの後ろの通路から現れて、途端に大きな声を出したのは商会長のフォルテだ。冒険者がたくさんやってきたのを見て、出てくるタイミングを見計らっていたのだろう。

 ヨンはぴょんと飛び上がってから、凄まじい速さでジーグムンドを盾にするようにして後ろに隠れる。


「早速遺跡の話をしていましたか!?」

「だからうるせぇっておっさん」

「すみません、興奮してました。それで、この方々はお知り合いで?」


 カッと見開かれた目には力があり、前のめりの姿勢は遺跡に興味がありますと全身で語っている。


「この街で遺跡の発掘をしている方々です。フォルテさん、新発見の遺跡について気にされていたでしょう?」

「素晴らしい! 冒険者というのは横のつながりが強いのですね!」

「こわ、なんだこのおっさん……」


 いつも騒がしいくせに、自分より騒がしい人間は苦手らしい。

 ヨンは思わず気圧されて小声でつぶやく。


「っていうか、俺たちが遺跡見つけてからまだひと月くらいしかたってないぞ。突入して帰ってきてからも三週間くらいだし。なんで知ってんだよ」

「面白そうな話は常に竜便で知らせが来るようにしています。特に今回は私の好みの話だと分かった現地の者が、特急で知らせてくれました。知ってすぐに人を集めて、適当な理由をつけて〈オランズ〉から急行してきたんですよ!」

「お、おお……、すげぇ情熱。でもまぁ、遺跡が好きなんだろ? どうだ、俺たちの後見しないか? 俺たちは遺跡発掘たくさんするぞぉ。一年の八割くらいは遺跡に籠ってるからな! 金にはならないけど」

「分かりました、取り急ぎいくら必要ですか?」

「は?」


 たいていの商人は金を稼ぐことに必死だ。

 フォルテのような見当も付かないような大金持ちは少ないし、まして遺跡に金をかけようなんてものはフォルテ以外にはいないだろう。

 断られる前提で話を持ち掛けたら、条件も聞かずに了承されてしまって、ヨンはぽかんと口を開けて固まることしかできなかった。

拙著『たぶん悪役貴族の俺が、天寿をまっとうするためにできること2』がきょう発売です。

もし色々と余裕のある方いらっしゃいましたら是非、へへへ

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― 新着の感想 ―
異世界タイガーファンディング始まったと思ったらALL達成してたw
後書き宣伝誤字ぃw
「いえ、なんかほら、急に魔法使えなくなるかもしれませんし」 グーで殴れば全て解決!!
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