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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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エリの報告

 ハルカたちはさりげなく翌日以降もサラの様子を心配していたが、仲間たちと話したり励まされたりしながら、問題なく立ち直ったようであった。

 後方でのんびりとそれを見守っていたハルカの横に、すいーっとノクトが現れる。


「元気そうですねぇ」

「良い仲間に恵まれたのだと思います」


 ノクトの視線の先にはサラたちの背中。

 今もアルビナに何かを聞きながら、周囲の警戒をしているようだ。


「手がかからなくてがっかりですか?」

「まさか。……無事に馴染めそうで良かったと」


 そこまで言ってハルカはふと言葉を止めて、少し考えてから小声で続ける。


「……彼女なら、他の道もあったでしょう。勝手な話ですが、ご両親のことを思うと色々と考えてしまいます。もちろん、サラが努力したことも分かっていますし、今はご両親もサラの応援をしてくれていることも分かっていますが」

「勝手ですねぇ」


 ノクトはふへふへと笑って言うが、ハルカならそんなものだろうとわかっているし、ハルカがそれを押し付けたりもしないこともわかっているから、咎めたりはしない。

 言われた方のハルカも自覚があるから、一度変な顔をしただけで終わりである。


 しばらくのんびりとしていると、エリとカオルが歩みを緩めて合流してくる。


「ちょっと話いい?」

「いいですよ」


 旅が始まってからエリの周りにはアルビナがいることが多かった。

 だから時間をとって喋ることがなかったのだが、旅も後半に差し掛かれば、サラたちのパーティも慣れてきて手が空いたというわけである。


「なんかアルビナがハルカに相談したって聞いて。悪かったわね」

「あ、いえ。いつもサラがお世話になってますし、不安になるのも当然です。仲良くしているようで何よりです」

「ま、私たちはアルビナのお世話係みたいなものだったから。ちゃんと説明して納得してもらったわ」

「というと……」


 エリとカオルの今後についての話になるのだろう。

 今まで通りでも、【竜の庭】に来るとしても、何が変わるわけではない。

 それなのにハルカはなぜだか緊張して唾を飲む。


「うん。移籍させてもらうつもり。でも、しばらくは〈オランズ〉でちゃんと依頼を受けて、自力で一級冒険者になってから森の拠点に移動しようかなって。冒険者の学校を作ろうっていうんだから、せめて一級にはなっとかないとね。二人だとちょっと不安だから、トットの奴でも誘ってみる。なんかあいつも相変わらず一人でやってるみたいだし。ハルカの方はそれでどう?」

「もちろん構いません、ええと、トットは……元気そうですか?」

「ふふっ、元気元気。依頼の時期が被っちゃったから今回は別行動なだけで次から一緒に受ける予定。ハルカってトットの奴だけは割と雑に扱うわよね」

「いえ、雑と言うか、その、一人で何でもできそうなので……」


 ハルカは目を泳がせて動揺する。

 軽く見たりどうでもいいと思っているわけではないのだが、最初の出会いが出会いだったうえ、本人が自力で頑張って頼ってこないので、なんとなく大丈夫だろうと思い込んでしまっているのだ。

 事実めきめきと実力を上げてきているようだし、今となっては〈オランズ〉の顔となるような冒険者の一人である。

 怖い顔だけれど。


 やさぐれて悪い方向に進みかけていた時期のことを思えば、トットにとってもハルカとの出会いこそが大きな転換点であった。街にいると聞きつければ顔をだしに来るし、【竜の庭】の一員だという自覚をもって、悪いことには手を出さず、真面目に依頼をこなしている。


 その割に【竜の庭】の秘密をほとんど共有していないのだが、まぁ、それはそれである。信じていないというより、機会の問題になってくる。

 半分くらい【竜の庭】〈オランズ〉支部、のようになっているので、エリたちが組んで一緒に活動するというのは、ハルカからすればなかなか喜ばしいことのように思えた。


「ま、実際よくやってるわよ。前衛としては頼りになるから、大抵の依頼は三人で余裕をもってこなせるはず。……と、物は相談なんだけど、街にいる間、【竜の庭】の拠点を使ってもいいかしら? いつもは定期借家契約してたんだけど、森にいる間に契約切れちゃって」

「あ、使ってください。その方が家も喜ぶと思うので」

「家が喜ぶって変な言い方ね。ありがと、助かるわ」


 街の拠点は、森の拠点と変わらぬ大きさをしている。

 二十部屋以上ある大豪邸をたまにしか使わないのでは勿体ない。

 なんならば、サラたちもそちらに移住すればいいのではないかと思うのだが、その辺りはメリハリをつけるためなのか、いまだにギルドの安宿を使っているようであった。


「随分と大所帯になってきましたねぇ」

「そうですね。……本当に」


 ハルカは最初のうち【竜の庭】の人数を考えていたが、そのうち〈混沌領〉に暮らす仲間たちの顔が浮かんできて、人数を考えることをやめた。

 コボルトたちを数にいれてしまうと、もう何人いるか分かったものではない。


「ま、とにかくそういうことだから、これからよろしくねってことで」

「よろしくお願いするでござる」


 きりっとした表情で丁寧に頭を下げるカオル。

 背が高く切れ長の目をしたカオルは、風呂関係のことさえなければ基本的にそれほど多弁ではなく、かっこいい系の美人だ。


「はい、エリも、カオルさんも、改めてよろしくお願いします」


 ただ、いつも『お風呂お風呂』とうきうきしている姿を見てしまっている手前、ハルカは悪いと思いつつもほおが緩んでしまう。

 ハルカはにっこりと微笑みながら新たに加入する二人を歓迎するのであった。

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― 新着の感想 ―
作者様が「あり得たもう1つの未来」として示唆されていた「エリとパーティーを組んで冒険」が遠回りながら実現されたのは嬉しいですね。
家庭では美人の嫁さんが世話してくれて、冒険パートでは美女二人と両手に花でお出かけ。 何このリア充ぶりは! トット爆破しろ(笑)
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