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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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アルビナの不安

 荷物を受け取って街の拠点へ戻ると、賑やかな声が聞こえてきた。

 中へ入って広間を覗くと、サラと仲間たちが楽しそうにおしゃべりをしている。


「あ、こんにちは。元気そうですね」


 ハルカがひょこっと顔を出して挨拶をすると、サラが目をキラキラさせながら立ち上がって駆け寄ってきた。


「ハルカさん、お久しぶりです! 街にいると聞いて帰ってくるんじゃないかと待ってたんです」

「そうでしたか、すみません。昨晩はちょっと森に用事がありまして……」

「いえ、今朝来たところなので! ユーリ君も元気そうだね。また少し大きくなった?」

「うん、少しだけ」


 ユーリとサラの関係は実はかなり気安い。

 ハルカたちが旅に出ている間にも、一緒にノクトから魔法の訓練を受けていたので、拠点で共に過ごした時間は相当長いのだ。

 サラがお姉さんの顔をしてユーリの頭を優しく撫でる。


「あ、アルビナさんに、アーノさんとテイルさんも、お久しぶりですね」

「はい! お久しぶりです!!」


 声をかけられて嬉しかったのか興奮した様子のアーノと、同じく嬉しそうに何度も頷くテイル。この二人はいつだか〈黄昏の森〉で悪漢に捕まっていたところをハルカに救出されたことがある。

 それ以来すっかりハルカのファンで、程々にわきまえつつお喋りのチャンスを狙っていた。

 ちなみにイーストンが冒険者登録をするときにも話しかけたりしていて、実は意外と【竜の庭】の面々と縁のある二人である。


 一方で「おー……」と曖昧な返事をして目を逸らしたのはアルビナ。

 【金色の翼】の冒険者で、本当にその昔、ハルカを『泥棒猫!』と罵ったことがある数少ない二人のうちの一人だ。

 当時は本格的に子供だったので仕方がないが、随分とヴィーチェから絞られたうえ、その後やっぱり色々と考えることがあったせいか、すっかり大人しくなっている。

 もともとパーティを組んでいたエリやカオルが【竜の庭】に入り浸っていることを考えると、今こそまさに泥棒猫状態なのでちょっとドキドキしてしまうハルカだ。


 最近では冒険者の先輩としてサラたちを導いてくれており、良い刺激を受けているようである。


「私たち来週から遠征依頼を受けるんです。初めての遠征になります!」

「おお、早いですね。どこまで行くんですか?」


 冒険者になってまだそれほどたっていないから、成長速度は驚異的だ。

 アルビナの補助があるとはいえ、ハルカたちの成長にも迫る勢いだ。


「〈アシュドゥル〉までです」

「結構距離がありますね」

「はい、頑張ってきます!」


 その後も旅の準備の話を色々と聞かれてぽつぽつと答えていく。

 昔だったらもう少し自信もなかったけれど、今では知識に加えてある程度の経験も積んできたので、説明にあまり迷いもなくなった。


 小一時間ほどそんな話をして、落ち着いてきたところで部屋の端の方でぽつんとしていたアルビナが、立ち上がってハルカに手招きをする。


「ちょっといいか」

「はい、なんでしょう」


 そのまま廊下まで出たアルビナの眉間にはたっぷりと皺が寄っていて、あまり良い話でないのは明らかだ。遠征に何か問題でもあるのかと心配したハルカに対して、アルビナは全く別のことを話し始めた。


「なぁ、エリとカオルってそっちに移籍するのか?」

「ああ……」


 それはそれで何とも答え辛い話である。


「……本人たちは何か?」

「いや、なんか最近よくヴィーチェさんと話してて、なんだよってしつこく聞いてたらカオルがそんな話してくれた」

「どうでしょう……。こればっかりは本人たちが決めることですから。もしうちに来るという話ならもちろん受け入れますが、悩んでいるからこそ話し合っているんでしょうね」


 アルビナの表情は相変わらずすぐれない。


「……やっぱ、あたしがあんたと仲悪くしてたから嫌んなったのか? パーティ組むのやめたのもそのせいか?」


 思わぬ深刻な悩みを打ち明けられて、ハルカは目を丸くした。

 彼女たちがアルビナを疎んでいるような発言をしたことは一度もなかったし、むしろ最近の成長を喜んでいるばかりだった。

 どうやらここでもコミュニケーションエラーが発生しているらしい。


「いえ、そういうのじゃないと思います。二人がどう考えているかは私ではわかりませんが、少なくともアルビナさんのことを悪く思っていることはありません。もともとサラたちと組んでもらったのも、アルビナさんがより良い成長ができるようにと願ってのことでしたし……」


 聞いた言葉だけを伝えてみるが、それでも表情のすぐれないアルビナにハルカは言葉を止めた。そうして少し考えてから提案をする。


「うん、やっぱり直接話した方がいいですよ」

「……でもな」

「大丈夫ですから。仲が良いからこそ、言わないとわからないこともあると思います。私はそれで失敗してきたことも多いので……」

「失敗ぃ? あんたが?」


 アルビナは胡散臭げにハルカを見つめる。

 アルビナから見ればハルカは、彗星のごとく現れて見る間に大成功を収めた冒険者だ。失敗ばかりの人間関係と人生なんて知らないのだからそんな目をするのも当然だった。


「はい、失敗ばかりでいつも仲間に助けられてます」

「……そっか。…………わかった、聞いてみる。悪いな」


 考えた末にアルビナはハルカの忠告に従うことにしたらしい。

 扉を開けて部屋の中へ戻っていく。

 できることなら遠征前にもやもやを解決できるといいなと思いつつ、ハルカもその後に続くのであった。

今日は日曜日ですね

『私の心はおじさんである3』は、もうお手元にございますか?

アマゾンの電子版だと半額分ポイントがつくらしいですよ!

だから何とは言いませんが!言いませんが!


3巻は表紙にノクトがいますので、それだけでもご覧いただけますと、より本編を楽しんでいただけるのではないかなと思います。

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― 新着の感想 ―
アーノの紹介 『イーストンが冒険者登録をするときにも話しかけたりしていて、』 アルビナの紹介 『【金色の翼】の冒険者で、本当にその昔、ハルカを『泥棒猫!』と罵ったことがある数少ない二人のうちの一人だ…
不安に駆られて付いていきたいとか過保護が出なくなった 前回のお任せといいなんか成長してるのペンさん嬉しいお
日常のようなものが丁寧に書かれる作品ていいですね。 そういえばハルカとアルビナの勝負って実現したんでしたっけ? 「竜の庭」での戦闘訓練も見たこと無い?
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