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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
14章

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ユーリの森歩き

 ハルカはノーレンとユーリを連れて〈オランズ〉へつながる森の道を歩いていた。

 ノーレンはしばらく北方大陸で冒険者としての仕事を探してみるらしいので、〈オランズ〉の支部長であるラルフに紹介をしておこうという魂胆である。

 ついでに〈黄昏の森〉もノーレンに案内してやろうという形である。


 これは〈混沌領〉へ戻る前に聞いたことであるが、ノーレンはカナの仕事の手伝いもしていたことがあり、破壊者に対する偏見のようなものはない。そもそもイェットの宿に所属しているソフィリムが、ラミアであるという認識も持っているようだ。


 一応街に行く前に〈オラクル教〉の基本的な考え方は、改めてレオンとテオドラに説明してもらったが、流石に長年生きているだけあって、その辺りの常識はある程度持ち合わせているようだった。


 ハルカは足元にウィンドカッターを放って草刈りをしながら道を進んでいく。

 ここはいつもナギが踏み均している部分だが、暖かい季節には、数日経つとすぐに草が生えてきてしまうのだ。

 ほとんど客が来ることなどないのだが、一応こうして夏場は道を整備して歩くのはハルカの日課でもあった。


「うわぁ、ホントに好き放題に魔法を撃つんだね。その上丈夫なんだから、やっぱり戦わなくてよかったよ」

「まぁ、私はアルたちほど戦いが好きでもありませんから、戦わなくて済むのならその方が」


 魔法使いの攻撃は威力が高い代わりに集中力を要するのが普通だ。

 雑談をしながら魔法を放つことができるのは、ハルカが常日頃から魔法を展開し続ける訓練をしてきたおかげだろう。

 

 モンタナたちに索敵の方法を学んでいるユーリは、ユーリなりに周りに目を配って野生の獣や魔物が飛び出してこないか警戒をしている。

 〈黄昏の森〉ならばハルカたちの庭のようなものだが、それにしたって中級冒険者以上が歩くような場所である。

 大きな魔物が出没している時などは、四級以下の冒険者には立ち入りをしないように警告が出るくらいには危険なエリアなのだが、ハルカはさほど心配していなかった。

 ユーリは体こそまだまだ小さいが、身体強化ができるのだから、すぐに命を落とすような事はまずない。モンタナによれば、ホーンボアくらいならば正面から受け止めても傷一つつかないだろうとのことだ。


 それに今はハルカが一緒にいるのならばいつでも守ることができるし、もし怪我をしても治してやれる。

 ユーリにとっては丁度いい具合の冒険であった。

 森を歩く良い訓練にもなる。


 ハルカがこの道を頻繁に整備しているのは、いつか拠点と〈オランズ〉で人が行き来するようになることを想定しているからだ。

 今は神殿騎士がやってくると厄介だから本当は草ぼうぼうにしてるくらいでいいのかもしれないが、単純にハルカたちに用事があって頑張ってやってくる依頼者だっているかもしれない。

 将来への希望のようなものも込めて、ハルカは思い出したときにはこうして道を整備するのであった。


 道の途中には、ハルカが切り開いた広場も用意されている。

 こちらも見事に草がぼうぼうであったが、これもまたハルカが綺麗に草を刈り取って野営ができるように準備する。

 ユーリの訓練ということで、ユーリが薪を集めたり火をつけたりするのを見守りながら、のんびりとした野営準備だ。


「……手伝いましょうか?」

「ママは座って待ってて」


 そわそわしながらハルカが声をかけるが、ユーリに制されてハルカはまた腰を下ろす。とりあえず見える範囲で動いているので心配はしていないが、ユーリ一人に働かせて自分が座っているのが落ち着かなかった。


「あの子優秀だね。もしかして実はもう二十歳くらいだったりするのかな?」

「まさか。まだ四歳になったところです」

「ふふ、流石に冗談だよね」

「本当ですよ? 私が冒険者になって初めての旅で見つけた子なんです」

「あ、ハルカさんの実の子じゃないんだね。っていうか、え? ん? ハルカさんたちって冒険者になって何年?」

「五年目ですね」


 ハルカは色々あったなぁ、と冒険者になったばかりの頃のことを思い出す。

 この森の中心部付近でタイラントボアに追いかけられたのも、今となっては良い思い出だ。


「五年目で特級冒険者になって宿も作ったの……?」

「はい。旅に出て、その帰りに師匠に会ったんです。それから王国を巡って……、戻ってきたころにこの森にアンデッドが溢れたんですよ。その件を解決したことで特級ということに」

「なんか……僕が言えたことじゃないけど、すごく巡り合わせが良かったんだね……」

「はい。仲間たちにも師匠にも、本当にお世話になってます」

「ううん……、僕も頑張って早く一級になろう」


 拳を握り気持ちを新たにしているノーレンは、とても年上には見えない少女らしさがあった。やはり本人の意識も周りからの認識も、見た目に引きずられる部分は大きいのだろうなとハルカは思う。


 ハルカがぼんやりとノーレンの横顔を見ていると、急にその目が細められた。

 なんだろうと思いユーリの方を見ると、ユーリもじっとして耳を澄ませている。


「……ママ、何か来るかも」


 茂みの中をじっと見つめるユーリは、ハルカが気づかない何かを察して剣を抜きながら声を発したのであった。

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― 新着の感想 ―
ユーリ未満の索敵力…さすママ
やはり今回も何も知らない(気付けない)ハルおじ…
今回も何も気づかないハルカママかわいい
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