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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
北城家の未来

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衝撃の事実

 〈竜の庭〉の拠点が見えてきた時、レオンとテオドラは感嘆の声をあげた。いつしか〈ヴィスタ〉を臨んだ時にハルカたちがそうしたようにである。

 自分たちの住まいに驚いてもらえるというのはこそばゆくも嬉しいもので、ハルカたちはしらずのうちに笑顔になっていた。

 双子が驚いたのは別に拠点に素晴らしい建築物があったからではない。

 森が急にひらけたことと、中型飛竜がのんびりと好き勝手に歩き回っていることが主な驚きの要因だ。こんな森の奥にもかかわらず壁もなく、人が普通に暮らしていることもまた、驚きの理由ではあった。


 ナギがゆったりと降りていくと、拠点の仲間たちがわらわらと集まってくる。畑仕事をしているものはその手を止めて、ノクトと魔法の訓練をしていたユーリやエリも同様だ。

 畑仕事をしていたのは拠点の住民たちだけではなく、【神龍国朧】からの客人までも、手足に泥をつけてかけてくる。何かできることはないかと手を貸しているだけなのだが、一応お殿様と家老という立場の方々なので、それを確認したハルカはギョッとする。

 いつも国王という立場にもかかわらず好き勝手して人を驚かせているのだから、たまにはこんなことがあってもいいだろう。


 迎えにきた面々のうち双子に面識があるのはユーリだけだ。イーストンは真っ昼間なのもあって、屋内でのんびり過ごしており姿が見えない。


「レオ! テオ!」


 駆け寄ってくるユーリに双子はまた目を丸くして驚いた。初めて見た時はまだまだ赤ん坊であったはずなのに、今ではそろそろ二桁くらいの年齢に見えるようになってきている。

 一瞬本当にこれがユーリなのか疑いたくなるほどだ。


「ユーリか! マジでデカくなったなぁ!」


 駆け寄ってくるのを受け止めて抱き上げたのはテオドラだ。酷い惨状の中生き残ったユーリの元気な姿が見られて、それだけでなんだか妙に嬉しくなってくる。

 ユーリの方も、赤ん坊の頃から二人が何かと気にかけてくれていたことを覚えているから、遠慮なく甘えることができる。


「うん、久しぶり」


 ユーリがにっこりと笑うと、テオドラは思わずその体をギュッと抱きしめた。


「ほんと元気そうだ!」


 二人が感動的な再会をし過ぎているせいで、割り込めないレオンは苦笑して、拠点の面々に挨拶をする。


「すみません、これから二人してお世話になります。〈オラクル教〉から派遣されてきました、レオン=スタフォードです。あっちは妹のテオドラ」


 〈オラクル教〉ときいて、住民たちの一部が表情をこわばらせる。交渉や戦いに慣れていない面々は素直で、感情を隠すことがあまりうまくない。

 レオンはここで神殿騎士たちがやったことについてデクトから聞いていたが、改めて〈竜の庭〉の面々と〈オラクル教〉の間に、隔たりがあることを確認する。

 聞けばいいのにこうやって自分でわざわざ確認するのはレオンのよくない癖だ。

 さて、誤解を解こうと口を開きかけたところで、アルベルトに乱暴に肩を組まれた。


「こいつら俺たちの友達。前来た奴らとは違うから心配しなくていいぜ」


 ペースは崩されてしまったけれどそれほど嫌な気分ではなかった。


「そういうことです。コーディというハルカさんたちと仲良くしている枢機卿直属の部下で、これ以上仲違いすることがないように遣わされています。……そうでなくとも遊びに来るつもりだったので、用事はついでのようなものです」


 肩をすくめてレオンが笑うと、アルベルトの宣言効果もあってか、住民たちもホッとしたように気を抜いた顔をした。


 軽い挨拶を済ませた面々は、荷物を片付けるために屋敷へ向かう。どうせ泊まっていくのならと、双子の部屋も割り当てたところで、テオドラが口を開く。


「なあ、なんであいつらはこの屋敷じゃねぇの?」


 アルベルトとコリンが一軒家に戻っていくのを見ての純粋な疑問だった。


「あ、あの二人結婚したんですよ。だから、少し前に二人の新居を作ってもらったんです」


 テオドラはポカンと口を開けて、家の中へ入っていく二人を眺め「まじ?」と呟いた。同い年くらいの二人が結婚をしていたことにも驚いたけれど、テオドラにとってアルベルトは悪友のようで、数少ない距離の近い男性である。


「ハルカさんは?」

「何がです?」


 ポカンとしているテオドラをフォローもせず、レオンが平静を装って尋ねる。


「ハルカさんは恋人ができたり結婚したりしてないの?」

「私がですか? まさか、全然ですよ」

「ふーん。ま、ダークエルフって寿命が長いしそんなものだよね」


 聞いておいてさして興味もなさそうに、あてがわれた部屋へと消えていくレオン。内心はホッとしていたけれど、おくびにも表情に出さなかったのは流石だ。


「……そういうのに興味が出てくる年頃ですよねぇ」


 まさかレオンが自分に興味を向けているなどとは、当然のようにカケラも思っていないハルカは、他人事のように呟いた。

 隣では繰り返し「まじかー」と呟くテオドラが、モンタナに背中を押されながらレオンの後について移動を始めていた。

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― 新着の感想 ―
相手はいないけど中身おじさんだからなぁ。報われてほしいとは思うけどどうも無さそう…
ハルカは今のところTSものによくある「精神が肉体に引っ張られている」ような描写はあまり無いからねぇ… かと言って女性にムラムラしているような感じもしないし、養子とは言え既にユーリという息子が居るし (…
ここからこの世界有数の国家元首になった事まで話していくのかー… 双子の頭こわれちゃーう
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