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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
【ロギュルカニス】

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気付きと変化

 軽く仲間たちと相談した上、ハルカはアードベッグの同行を受け入れる。

 依頼で収入になることや目的が理解できたこともあるが、アードベッグとコリアたちが話をする機会を設けられるというのも、すぐに受け入れを決めた理由でもあった。

 彼らは元々アードベッグの下で船乗りをしており、今回の件ではすれ違いが生じてしまっている。もともと慕っていた相手と仲違いしたままでは心残りもあるだろう。

 どうせならばすっきりした状態で【竜の庭】へ来てほしいというのが、ハルカの願いである。


 翌朝ハルカたちがナギの下へ行くと、十頭の面々が見送りに出てきていた。

 街の出入り口には、ハルカの魔法を見に来ていた子供たちの顔もちらほらとあり、手を振ってやると、口々に別れの言葉が飛んでくる。

 短い期間であったけれど、別れを惜しんでもらえるというのは嬉しいものだ。

 ハルカは気持ち穏やかになりながら門を出て、十頭たちが待っている場所へと歩み寄る。

 こんな風に十頭が見送りに来ることなどまずないのだが、今となってはハルカはしっかりと国賓だ。知らぬ顔でさようならというわけにはいかない。

 ズブロクがアルベルトと拳を合わせ「また来い」と話している間に、アキニもまた、他の全員を連れてハルカの方へ歩み寄る。

 いざ意識して見ると、アキニのすぐ隣にはボルスが歩いていて、他の面々よりも少しばかり距離が近い。ハルカが夫婦なんだなぁと当たり前のことを考えているうちに、両者とも足を止めることになった。


「お世話になりました。何かと騒ぎを持ち込んでしまったようで申し訳ありませんでした」

「いや、それはこちらのセリフだよ。国内のもめごとに巻き込んでしまったのに、随分と寛大な対応をしてもらった。私には考えの及ばないことも含めて、反省すべきことは山のようにあるのだろうね」


 アードベッグ同様思うところがあったのか、アキニは街を横目で見てから目を伏せた。何かフォローをとハルカは考えるが、何を言っても偉そうになってしまう気がして、黙して次の言葉を待つだけになってしまった。


「さて、アードベッグに協力してくれるらしいと聞いた。海賊の問題はこれから国を挙げて取り組んでいくつもりだから、何かあれば問題はこちらに回してもらって構わないということだけ伝えておくよ」

「助かります」


 それからいくつかこれからの話や、いつでも歓迎するというような簡単なやり取りを交わし、ハルカたちはナギの背中に乗り込んだ。

 ズブロクに連れまわされていたドントルだけは、最後に「とんでもないことになっちまった」と「まったくあんたらのせいだ」と恨み言を言っていたが、ハルカたちは笑ってそれを聞き流した。

 どうもズブロクに気に入られ過ぎて空席だらけになってしまった十頭の一人に推されてしまっているらしい。ハルカたちが笑っていたのは、ドントルならばそれもうまくやるだろうと思ったからだ。

 またこの街を訪ねる楽しみが一つできたくらいの話である。

 本人は本当に困っていそうだったけれど。


 思ったよりも長く滞在していた〈フェルム=グラチア〉を発ってしばらく。

 アードベッグとコリアたちが話している姿が見れて、ハルカはほっと胸をなでおろした。このまま無言で〈マグナム=オプス〉まで着いてしまうようなら、自分が間に入ってでも話をしてもらおうかと思っていたからだ。

 アードベッグは頭こそ下げなかったが、コリアたちに謝罪をしているようだった。

 コリアたちも怒っているわけではなく、今回の件でアードベッグと仲違いしてしまったことを憂いていただけだ。規則を守るべきという考えや、アードベッグの元来の気質などを知れば、いつまでも遺恨を残すような態度はとらない。

 最終的には無事を喜んで熱い抱擁を交わしたのを見れば、もう何も心配はいらなかった。


 〈マグナム=オプス〉が見えてくる。

 ナギが近寄っていけば大騒ぎになるが、顔役であるアードベッグが大丈夫だと言いながら街へ入って説明をすれば、それもすぐに収まりを見せることになった。


「じゃあ、俺たちはちょっと顔を出してくる」


 そわそわしているドワーフたちに待てをして、コリアはハルカに一時の別れを告げる。

 アードベッグがいくら説明したとて、ナギを一人でおいていては街の人も不安になるだろうと、ハルカたちは街の外で一晩を過ごすことにしたのだ。コリアも「本当はすぐにでも街の案内をしてやりたいんだけど……」と言いつつ、ハルカの考えを支持した。


 彼らはこれから家族と再会し、そして遺族たちへ説明にまわる必要がある。

 話が落ち着くまでは案内は難しいし、下手をすれば余計な厄介事に巻き込んでしまうこともあるだろうと懸念していた。

 つい最近、アードベッグとカティの関係を見届けたばかりだ。

 どんな反応をされるかもわからない説明に恩人を巻き込みたくなかったのだ。


 そんなわけで、ハルカたちは〈マグナム=オプス〉の街の外で待機。

 港に浮かぶ沢山の船を眺めながら、アードベッグが買ってきてくれた夕飯を食べてゆっくりと休み、翌日の海賊島探索への英気を養うのであった。

漫画二巻予約への反応ありがとうございます(こっそり

なんか、インタビューに答えたみたいなので、お暇だったらどうぞ


https://x.com/kimi_rano/status/1896408984036515878

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― 新着の感想 ―
インタビュー楽しみにしてます
隊長、雲の上の存在になっちまった… とりあえず花でも置いとくか。
なんだかんだフェルム=グラチアの面々、いいキャラだったなあ
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