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私の心はおじさんである【書籍漫画発売中!】  作者: 嶋野夕陽
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親と子の見た景色

あとがきに次ラノ投票へのご協力のお願いがございます。

滅多にない機会ですので、是非ご一読、ご協力いただきますと幸いです。

「そっかー……。コリンはそう言っていたんだ……」


 奥に通されたハルカが事情を説明すると、ショウは指を組んでじっとテーブルを見つめ、ゆっくりと状況を飲み込んでいるようだった。

 謝りに来たらという発言は、ハルカにとってはいかにもコリンらしいと思うのだが、どうやらショウにとっては違和感のあるものだったらしい。


 続けて話をせずに静かに待っていると、やがてショウは顔を上げて微笑む。


「私が知っているコリンだったら、時間がかかってもいつか甘えに来てくれるって思っていた。……どうやら甘えた考えをしていたのは私のようだね。コリンも……きっとアル君も、冒険を通じて随分と成長をしたらしい。二人とも、もう子供ではないんだ。寂しいやら、嬉しいやら」

「意外ですか?」

「うん。私は随分と甘やかして育てた記憶があるからね。私が何とかしてあげなきゃいけないと張り切りすぎたようだ。これじゃあ嫌われて当たり前なのに、どうやらコリンは許してくれるみたいでよかったよ。……子離れできていなかったんだなー」


 突っ込んだ部分の親子関係に関して、ハルカが挟める言葉はない。

 ただこの親子はお互いの事をちゃんと考えて行動しているはずだし、今回はたまたまそれがすれ違ってしまっただけだったのだろう。

 ハルカたちの前では頼りがいのある姿を見せることも多く忘れがちだが、コリンはいまだ十代後半に差し掛かったところの女の子だ。

 ハルカはややぼんやりしているし、男連中はどんぶり勘定だしで、背伸びしているうちにすっかりしっかり者の印象がどんどん強くなってしまった。

 怖がりの、甘えん坊な、何かを決める時には家族と沢山相談するコリンの姿を、ハルカもモンタナも知らない。逆に言えばアルベルトはそれを知っているからこそ、コリンのことをいつも気にかけてきたのだった。

 ハルカなんかはいつも甘えられているのだから気づいてもよさそうなものだが、その辺りは持ち前の鈍感さが悪い方に仕事をしてしまっていたらしい。初めの頃はずっと、若い女の子だからという認識が変なバイアスをかけていたのかもしれない。


「なんにしても助かったよー。仲裁してもらわなければ、このままずるずると長引かせてしまうところだった。ありがとう」

「いえ……。下手をすれば余計なお世話でもっとこじらせていたかもしれません。たまたま上手くいったから良いようなものの、家族だからこその繊細な話に首を突っ込みすぎたのではないかと反省しきりです」

「ハルカさんは随分と謙遜をするね。……もしかしてコリンも随分甘えてるんじゃないのかな?」

「ああ…………、いえ、どうでしょうか」


 実父の前だからこそ、そうですねという言葉をひっこめたが、思い当たる節はたくさんある。ハルカの反応を見たショウは笑った。


「あっはー……、そうかそうか。いや、本当にありがとう。あれであの子は元々怖がりでね……」

「それはアルから聞いたことがあります。頼りになる印象が強く、あまり想像がつきませんが」

「そうか、アル君はよく見てくれているね。しかし、きっとハルカさんみたいな人がいるからこそああしてのびのびと冒険者ができているのさ。至らぬ娘だけれど……なんて言うとまた怒られてしまうね。きっと君たちの方が今のコリンのことをよく知っているのだろうから」


 少しだけ寂しそうに苦笑するショウを見て、ハルカは耳のカフスを撫でながら何とも答えられずに軽く頭を下げた。子が成長して大人になっていく寂しさをハルカは知らない。

 少しだけ自分の両親のことを思い出し、二人がどう自分のことを見ていたのだろうかと考えてしまう。

 彼らが他界した時、ハルカは間違いなく今のコリンよりもずっと精神的に幼かったはずだ。もしかしたらずっと心配されていたのではないかと思うと、改めてもっと腹を割って話しておけばよかったと気持ちが沈む。


 なにやら自分の思考のうちに沈んでいるハルカの気配を敏感に感じ取ったショウは、わざと明るい声でハルカに問いかけた。


「それでー、間抜けな父は披露宴には呼んでもらえるのかな?」

「あ、はい。その話ですが、近日中のショウさんのお時間ある時に迎えに上がります。前日の夕方に私たちの森の拠点へ来ていただき、お話しする時間を作れたらと。翌日他の皆さんも招いて食事会をするつもりです」

「うん、分かった。そうだな……」


 ショウは話の流れからハルカたちに負担がかからない程度のちょうどいい日取りを想定して提案を投げかける。こういった予定を立てる段階になると、やはり大商人であるショウの勘と経験はよく働き、スムーズに話を進めることができた。

 ハルカももともと上司からは面倒ごとをよく投げつけられるタイプであったから、大人数のイベント事の計画を立てることだけは得意だ。いつも最後まで人のフォローばかりにまわり、全員が無事に帰路についたところでふっと寂しくなったものであった。

 昔取った杵柄というやつなのだが、今回は気持ちが前向きだから何をどうしようと考えているだけで楽しくなる。きっと当日だって同じく楽しいはずだ。

 ハルカはショウと軽い打ち合わせを済ませて、のんびりと待っていたモンタナたちと合流。そのまま友人たちに声をかけるべく気分よく街へと繰り出すのであった。

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いつも本作をご覧いただき、本当にありがとうございます。

12月になりましたので、もう一度だけお願いを。


本作『私の心はおじさんである』が、キミラノ様の【次にくるライトノベル大賞2024】にノミネートされております。

もし良い順位を取ることが出来れば、これからの作家人生の大きな力になります。

以下のURLより投票ができますので、どうか皆様の力をお貸しください。


https://static.kadokawa.co.jp/promo/tsugirano/


因みにタイトルの五十音順なので『私の心はおじさんである』は、下から二番目【147】にありますので、ごりごりとスクロールしてくださいませ。

どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
次の機会には必ず投票します
すでに投票しました!
勿論1作品目に投票したさ これを期により多くの人たちに本作が知られると良いなぁ
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