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【8】悪霊令嬢、思い出す

 リコリスとルシウスは年齢こそ同じだが身長差はそれなりにある。

 つまりこれは彼が私にぶつかった結果ではなく、向こう側の意思で接吻をされている。

 そう考えても間違いないだろうか。そう認識すると頭の片隅で爆発事故が起きた。


「んっ、んん……」


 口を塞がれてなければ大声で喚いていただろう。だって初めてのキスなのだ。

 リコリスとしてだけでない、二十代後半で事故死した前世を含めてファーストキスなのだ。

 しかも相手は絵に描いたような美少年である。色々な種類の混乱が一度に来て頭がおかしくなる。

 正直ショック死しそうだ。心のどこかに嬉しさがあるのが非常に悔しい。

 相手が美形男子であるだけで心が浮かれているのを自覚する。それが嫌なのだ。

 しかし正直イケメンは大好きだ。

 じゃなきゃ服や化粧品そっちのけで乙女ゲームに給料をつぎ込んだりしていない。

 しかも今キスしてきた人物はそのゲームの攻略対象の一人なのだ。ある意味夢のようだ。

 だが、この状況は異常にも程があるだろう。ときめく自分を脳内でビンタしながら考える。

 確かにリコリスとルシウスは婚約者同士。でも彼はストーカーである私を物凄く嫌っている筈だ。

 それこそ我慢の限界が来た相手に突き飛ばされたのが少し前の話。

 気絶から覚めて早退する為に保健室を出て職員室に行こうとしている途中が今という訳だ。

 突き飛ばすくらい拒絶していた相手に自分からキスするとか誰かに操られているとしか思えない。

 もしくは頭がおかしくなっているかだ。確かに先程から彼の様子はおかしかった。

 うっかり前世と同じ感覚で彼を年下のように君付けで呼んでからだ。

 昔のリコリスに戻ったと目を輝かせたと思ったら、急に積極的な態度になって挙句廊下でキス。

 確かに昔の人格には戻っている。前世の生まれてから一度も恋人なしな乙女ゲーマーの頃の人格に。

 つまりルシウスは勘違いをしている。そのことに彼が気づいた時を想像すると気が重くなった。

 このまま恋人同士のようなふるまいを続けていても真実を知った時にお互いの傷が深くなるだけだろう。

 ルシウスは好きでもない相手に勘違いでキスをした事実に傷つく。

 そして私は彼のその反応に傷つく。

 前世の中学時代、人気のあった男子に後ろから抱き着かれた時のことを思い出した。

 びっくりして振り返った途端、その男子生徒は汚物に触ったような反応をした。

 当時彼が付き合っていた彼女と私の背丈と髪型が似ていて勘違いしたのだ。滅茶苦茶嫌な記憶である。

 同じことをルシウスにされたら呪ってしまうかもしれない。リコリスに転生した私には闇の魔力があるのだ。 

 それに婚約者同士とはいえ学園の廊下で男女がキスしているのは普通に大問題だ。

 教師の耳に入ったらお説教だけではすまないかもしれない。

 よし、ルシウスから逃げよう。そしてさっさと早退しよう。距離と時間があれば彼も冷静さを取り戻すかもしれない。

 実は家に帰るだけなら職員室に行く必要はないのだ。家に帰った後で教師に連絡する方法だってある。

 しかし私が初めてのキスに内心大騒ぎしている間にルシウスはこちらを強く抱きしめている。身動きが難しい。

 仕方ないから黒魔術の力で気絶させるか。必要以上に恐れられるから闇の力を攻撃手段として使いたくないのだけれど。

 女生徒から人を呪い殺しそうとか思われているようだし今更だろう。私は自らの手に魔力を意識させた。



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