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【3】悪霊令嬢、キレる

「私たち貴族と同じ学園に通うなんてなんて図々しいのかしら!」

「アナタみたいな地味な娘は下町で靴磨きしてるのがお似合いよ!」


 凄い差別意識と偏見だ。

 それを学園の廊下で堂々と口にできる羞恥心の無さが凄い。

 彼女たちは恐らくヒロインと仲のいい男子のファンだろう。

 自分の醜い罵声を彼らに聞かれたらとか考えないのだろうか。

 実際ゲーム内では攻略対象がこの場に現れ虐めっ子たちは手酷く軽蔑されるのだが。


「それとも婚約者の居るルシウス様に媚を売るような女は花売りの方が得意かしら?」

「アナタの軽率な行動のせいでルシウス様はリコリス様を傷つけることになったのよ!」


 おっと、彼女たちはルシウス派だったか。

 確かにヒロインと彼は一緒に食事をする間柄だ。

 好感度が一番高い相手がルシウスなら間もなく彼女を助けにこの場へ現れる。

 ただそれはあくまで前世でプレイしたゲーム内のこと。

 大体花スクでルシウスがリコリスを突き飛ばして怪我をさせるイベントはなかった筈だ。

 それなのに女生徒達は先程の出来事をネタにヒロインを責めている。


「泥棒猫に惑わされ婚約者に怪我をさせるなんて可哀想なルシウス様……」

「相手のいる殿方を誘うふしだらな娘がいる学園なんて怖くて通えませんわ!」


 ヒロインは先程からずっと押し黙って責められるままだ。

 確かに婚約者のいる男子生徒と二人きりで食事をするのはどうかと思う。

 これは前世、花スクのプレイヤー内でも度々ネットで議論されていたことだ。

 リコリスという婚約者の存在を知った上で彼に差し入れをしたり遊びに誘うヒロイン。

 婚約者がいるのにヒロインと親しくなり惹かれていくルシウス。

 二人の行動がモラルに欠けて正しくないと言われればそうかもしれない。

 だからこそ後味の悪い展開になりやすいのだし。


「リコリス様に呪い殺される前に自主退学したらどうかしら?」

「そうよ、前々からあの方はアナタのような女狐は嫌いと仰っていたわよ」 

「ルシウス様に手を出した娘は黒魔術の贄にしてやると笑っていたわ」


 でも目の前の彼女たちはただヒロインを排除したいだけ。侮辱して追い出したいだけ。

 その為なら今のように平気で嘘を吐く。私はこの娘たちの顔も名前も知らない。

 でもこの光景だけで充分だった。一番嫌いなタイプの人間だ。 

 集団で一人を囲んで、誰かが言っていたという無責任な嘘で責めて追い詰めて、そんな自分を恥じることもしない。

 自分が嫌で、憎くて、追い出したいなら自分の意見として言え。私を使うな。

 ストーカー婚約者に付き纏われて精神ズタボロ男子校生と頭お花畑なヒロインちゃんの小さな恋より余程吐き気がする。


「……気に入らないわぁ」


 私はヘアバンド代わりの包帯を解いた。


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