表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/31

【27】悪霊令嬢、遭遇する

「センセー、予鈴」

「あっ、ああっ、どうしましょう」

「どうしましょうって……教室行けば?」


 慌てる教師にハイドラがもっともな指摘を入れる。新任とはいえ本当に大丈夫だろうかこの担任。

 正体が闇精霊とはいえ、どちらが大人なのかわからない。


「え、でもまだ話が……」


 終わっていない。そうモダモダとしている彼にとうとう私は溜息を吐いた。


「そもそも十分程度で終わる話じゃないのよね、お馬鹿さぁん。さっさと教室にお行きなさいな」

「うっ、ううっ……はい……でも」


 以前電話口であれ程私を恐れていたのだから、即教室へ走り出すだろう。

 そんなこちらの目論見はどうやら外れたようだった。

 非常に煮え切らない態度ながらも小柄な担任教師はまだ私の前にいる。ぶるぶると震えながら。

 まるでこちらが虐め加害者のような構図に内心腹が立つと同時にうろたえてもいた。


「ロイちゃんセンセーさあ、姉貴の言ったこと聞こえてないワケ?それともオレたちとサボリたいってコト?」

「そういうわけでは……ですが……」 


 ハイドラに軽く威圧されて泣き出しそうになりながらも先生は動こうとはしない。

 どこかで見た構図だ。私は二人を観察しながら思う。

 ゲーム内のロイは臆病だがここまで判断が鈍いキャラではない。

 優秀な秀才だからこそ若くして名門校で担任教師をやっているのだ。

 それはゲーム内の設定でしかないと言われたらそれまでだけれど。

 ただ、この状況は変だ。凄い嫌な感じがする。

 こう、ぶっちゃけていえば前世で新卒入社したブラック企業のような。

 私はそう感じる原因を探るため二人から目を離し周囲を見渡した。


「……気分が悪いわね」


 ここは職員室。当然だが室内には他の教師がいる。耳に入る私たちのやりとりが気になっても仕方がない。

 けれど野次馬でも巻き込まれでもなくこちらを、いやロイ先生を監視しているような視線が幾つかある。

 それが誰か特定できなくなっているのが不愉快だ。魔法を使われているのか、それとも魔法よりタチの悪いものか。

 そういえばゲーム内でもこんな感じで担任教師が何者かに利用されている伏線があったような。

 ロイ先生ルートはクリアしていないからそれ以上の真実を掘り下げられない。

 いいや、後で探るなりしよう。必要があるならばだが。


「でもでもだってちゃんに付き合う理由はないわぁ、行くわよハイドラ」

「リョーカイ」


 人を動かせないのならば自分が動く。私が職員室から居なくなればいい。

 寧ろ最初から会話などせず、もっと早く切り上げれば良かった。無関係な人間が大勢いる所でする話ではない。

 何より肝心の当事者がいない。その時ドアが開く音がした。

 

「失礼します。ロイ先生は……リコリス」


 探し物をするような視線がこちらを捉え、青い目が驚いたように見開く。

 噂をすれば影。制服をきっちりと着こなしたルシウスが職員室の入り口から私を見ていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ