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8.

 **********


 半年後、カイル殿下とライラの結婚式が隣国で(おごそ)かに行われた。



 婚約式から半年、言うまでもなく、隣国の中でも王族や上位貴族の結婚式としては最速で婚約期間は最短。

 カイル殿下とライラの希望も有ったけど、隣国内でグダグダ言い出したり妨害するのが出てこないうちに、という意味も有ったらしい。婚約式は最速だったうえに(隣国から見て)他国だったから何かを企む間さえもなく、そうすると動けるのは結婚式までがチャンスということになるから。



 会場は、あえて王宮内の聖殿はやめて、王都中央の大聖殿で(おごそ)かさを重視し、国中に告知しやすいような形式を選んだそうだ……主に両国の王妃とその周りの女性陣が。


「この結婚での不祥事は国際問題。それを周知徹底して今後の混乱と騒動を防ぐ。そのための警備や演出くらい貴方たちならできるでしょう?! 国王の、王家の、国の、威信と実力を周辺諸国にまで知らしめるチャンスなのよ?」


 と、警備面などを不安がる男性陣を上手く鼓舞し、社交界の不審な動きを牽制してみせたとか……。



 私とレイド様は、新婦の親族枠で出席した。私の両親と、レイド様のお母さまも。

レイド様のお父様(公爵)は王弟として国王不在の国をまとめるために留守番役。国王の(義理の)姪と隣国の王子との結婚ということで、国王夫妻も揃って式に出ている。当然ながら侯爵筆頭であるライラの両親も新婦の親として国を空ける。だから、残ることができるのは王弟である彼が残るしかなかったのだった。

 そして、ラウル殿下は王族枠で国王夫妻と王太子様と第3王子殿下とともに居る。王太子様と第3王子殿下の隣にはそれぞれの婚約者、ラウル殿下の隣には婚約者候補の新たな筆頭となった伯爵令嬢。

あの婚約式から半年、ラウル殿下の年齢からしても、そろそろ婚約を決めなくてはならない。今回の同伴で、正式に婚約するかどうか判断する材料にすると同時に、婚約成立した場合の事前顔見せとするのだろう。

 ライル様は、公爵様の補佐として国内に残っている。



 私の大好きな従姉(いとこ)であり親友のライラ、どうか幸せに!

 忙しいだろうけど、半年後の私の結婚式で会いましょう!






 ライラたちの結婚式から半年後、レイド様と私の結婚式が、今回も(おごそ)かに行われた。



 この日程は、レイド様の『遅くても私の成人の1か月後』という要望が大きい。

それが婚約式から約1年後、ライラたちの結婚式の半年後だったから、『なんとかできるわよ』という女性陣の言葉で決定。


 最初、婚約式の後なのにレイド様は急ぐなぁと思ったら、レイド様関連と私関連と周囲関連とそれぞれの懸念事項と都合とをレイド様からこんこんと説明されてしまった。


「私は貴女との関係を1日でも早く確実なものにしたい。貴方はそう望んではくれないのか。」


 今回も真っ直ぐに私を見つめて言われて、同意以外の返事なんて無いでしょう? 私だって、レイド様との結婚を心待ちにしてるんだから。

 婚約式の後、誰が何を企もうと私も婚約解消なんて承諾どころか検討する気もなかった。

レイド様の想いも毎日のように語られて、疑惑の入り込む余地も無いから他人の言葉に惑わされるわけもな

く……。

 というか、そういうことを企んだ途端に、他ならぬレイド様によってしっかり『お話』されてるんだと、お義母様が笑って教えてくださった。

結婚前のお義母様呼びは、ご本人からの希望で、誰も止められず私も反論を撃破されたためだったりする。彼女は私にとって憧れの女性なので、照れくささとか周りの目とかが無ければ素直に喜べることだからね。


 今回も、ライラと似たような形式の結婚式。理由も目的もほぼ同じ。

ただし、関係者が国内ばかりなので警備等は、より神経を遣う。でも、主催者側だし自国内だから、腕の見せ所だと言われた男性陣がはりきったとか……。

女性陣は、ライラの真似とか手抜きとか思われないようにと、演出を変え趣向を()らしてくれた。

もちろん、大まかではあるけど、レイド様と私からの要望も最大限取り入れて……。


 隣国からは、国王代理で王太子殿下が、カイル殿下とライラを連れて出席してくださった。ライラたち夫婦は元気で、相変わらず仲が良くて、私たちは安心した。

 自国からは国王一家、公爵(王弟)一家、ライラのご家族、私の家族が全員揃っている。

ラウル殿下は、ライラの結婚式に同伴した令嬢と正式に婚約して、今回も伴っている。

ライル様は、リアブルの街から来ていて、最短期間のみ王都に滞在するという。そんな彼にはまだ婚約者候補も居ない。もちろん、その座を狙う貴族は多数居るが、『その時期ではない』と突っぱねてるらしい。


 そして、式は順調に進み、夫婦の誓いを述べ、祝福を受けて……。誓いのキスは、軽やかに、でも甘く、私の記憶に刻み込まれた。



 結婚に関わるすべてが終わり、公爵領内の別荘で短い新婚旅行をしてから、リアブルの街に戻る。

ライル様はレイド様と入れ替わるように王都に戻り、彼から引継ぎを受けた補佐官と共にレイド様が伯爵領(リアブル)の当主として仕事を始める。

新婚旅行を短く切り上げることもあって、当面はレイド様のスケジュールには余裕を持たせてくれるらしい。それに合わせて私も予定を調整して2人で過ごす。


 読書好きの2人、国内随一の図書館は自らの邸宅の隣に有る。自然に、2人の時間は図書館で過ごすことが多く……仕切られたスペースで、時には別の本を、時には同じ本を、読んだり、(ささや)くように話したり、そうして流れる穏やかな時間。

子供を産むのはレイド様が20歳になってからということになってるので、それまでの2人きりの時間。夫婦の時間は甘く熱く、それ以外は穏やかに過ごしていく。

トラブルが起きたり、ちょっとした喧嘩(けんか)をすることも有るけれど、レイド様と結婚してよかったと思う。




 結婚してライラとの物理的距離が開いてしまったけど、あのライル様が義理とはいえお兄様になったけど、まだ独身男性が2人居るけど……。

誰も予想しなかった形ではあっても、ハッピーな人が圧倒的に多いんだから、ハッピーエンドってことでいいわよね?



 ***(本編 完)***


*番外編は、他のキャラたちの視点です。


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