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3.

 **********


 で、あれから1カ月。またライル様に壁ドンされてたり……。あ~あ。



「手を引くって言わなかったか? 言ったよな?」

「言ったわよ? 手出ししてないわよ?」

「ライラに入れ知恵したり余分なことを言うなと、俺が言ったのを了承したよな?」

「余分なことは言ってないわよ? (なぐさ)めて、(はげ)まして、力付(ちからづ)けただけ。」


 聞いてくるのは、ほぼ予想通りの『約束履行の確認』。



「じゃぁ、なぜ、ライラは貴女にくっ付いてばかりいる?」

「相談に乗ったり気分転換に付き合ってるだけよ?」

「女同士の会話中に(ライル)が割り込むなんて非常識出来るか!」


 ライル様は、ラウル殿下がライラに絡むチャンスが少なすぎるのが気にくわないらしい。王子様には公務が多くて自由時間が限られてるからね、ライラとタイミングを合わせるのはなかなか難しい。

普通だったら、婚約者候補として交流の時間がセッティングされるんだろうけど、ライラの事情が事情だし、他にも候補者は居るからと、誰も───とある2人を除いて───ライラにこだわらない。その結果、彼女は救われて、とある2人───ラウル殿下とライル様───は()れているというわけ。



「私達は、この1か月の間中、ずっと、しかも朝から晩までくっ付いてたわけじゃないわよ?」

「減らず口ばかり……。貴女はライラからもう少し離れろ。」


 当然だけど、ライラと一緒の時間を過ごしてるのは私だけじゃない。けど、プライベートでライラと一番仲がいいのは私だから、相談に乗るのも気分転換に付き合うのも私なのは普通よね?



「彼女の意志が最優先って言っておいたわよね?」

「わかってる。だから『もう少し』と言ってるだろう? それとも俺と婚約するか?」

「卑怯者。わかったわよ。」


 ホントはわかってる。口でどう言おうとライル様は卑怯なことを実行しない。王族がそんなことをするわけにはいかないし、王籍は捨てる覚悟できたとしても彼の性格的にも難しいだろう。

それをわかっていて駆け引きをする私もズルいことは自覚してる。でも、ライラのためだ。






 ライル様のことは、嫌いなわけではない。ラウル殿下の件で評価が下がってるだけ。他の点での評価は高い……なんとなく悔しいけど。でも、あの件についてだけは会うたびに評価が下がる気がする。

嫌いではなく全体評価は高いのに、特定の部分だけ評価が下がっていくんだから、彼に対する態度とかは微妙なものになってしまう。


 最初、私を驚かすような声のかけ方をしてきたことは、まぁいい。彼からしてみれば従妹(いとこ)であるライラの従妹(いとこ)にして親友、彼自身にとっても年下の幼馴染みといった気安い感覚が私に対して有ったからこそだろうから。

ただ、そこらの令嬢のように、色仕掛けでなんとかなるかもと思われたのは心外だし腹が立つ。

あの時から、彼の話し方が微妙に(かん)に触ったのは確かだけど……たぶん彼は気づいてない。


 そして今回、再びとなるあの体勢と言い分、彼は何を考えてるのか。

 年頃の未婚の男女が2人でも堂々と話すには解放された場所である必要が有り、彼が私を見つけたのは王宮内の廊下という解放空間だった。

私はイヤな予感を感じとったら迷うことなく逃げるタイプなので、話をしようと思ったら捕まえるしかないのもわかる。幼馴染みという程度の関係では、彼が私を " 呼び出して " 会うなんてことは非常識だから、偶然の機会を待つしかないのもわかる。

前回から今回の約1か月は、彼なりに様子を見ていたんだろう。今日会ったのは偶然だ!そうに違いない。

 でも、あの体勢はナイ。必要が無いどころか、お互いにとってあらぬ噂を呼びかねない。

前回のは、おそらくライル様が誤魔化して噂を封じたんだと思う。もちろん、彼の家族や私の家族も手を回したはず。彼も私も、家族との関係は良好だから不必要な隠し事はしないし、自分の限界を知ってるから家族に協力してもらうことに躊躇(ためら)いは無い。あの体勢ながらもライル様は一瞬で面白がってる表情に切り替えたから、もし誰かに見られていても誤魔化しは()いたんだと思う。

それに対して、今回は、彼の一言目(ひとことめ)を聞いた時点で私は逃げようとする動きを止めている。つまり、普通に立ち話でよかったはずなのだ。

 しかも、今回は、婚約要求という、あの体勢に似つかわしい内容を含んでいる。それが、たとえ実際には(おど)しという色気も何も無いものだろうとも、誰かに聞かれたら、あの体勢ともども誤魔化しは()かなかった可能性が有る。

ライル様にも私にも現時点で婚約者はおらず候補者も公表されてない。身分的には釣り合うし、関わってきた年月も長い。つまり、噂を否定するのが難しい。彼らしくない失態だ。




 ───あぁ、もうっ!ラウル殿下、いっそのこと、さっさとライラに求婚して、きっぱりフラれてくれないかしら。

陛下たちにもライラの両親にも、子供たちに結婚相手を押し付ける気は無い。そんな結婚が必要な状況を作ることも無い。だから、ライラにその気が無い以上、ラウル殿下がフラれることは確定。

両家の家族が見守る態勢でいて、周りもそれに準じている……本音や水面下はともかくとして。だからこそ、ラウル殿下の地道な口説きもバカにされることなく静観されてるんだけど、その件でライル様に絡まれる私としては不敬を承知で『さっさと玉砕しろ』と " 内心で " 毒づいてしまうのだった。


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