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3話

アイク視点です。

 「久しぶりに時間が出来たんだから、ゆっくり過ごせばいいじゃない。屋敷の中じゃ商人の出入りが頻繁で気が休まらないなら、町でもうろついてみれば?


 色々と面白い事が起きるかもしれないし。」



 とのローズの勧めで町をぶらつく事に決めたはいいけどマリアの、



 「なるほどね、確かにその辺をうろつきまわっている怪しい奴とトラブルを起こしたら、状況が少しは面白い方向に進むかもしれないわね。


 流石ローズ、アイクさんを適当に町の中をうろつかせていればトラブルが起きるだろうって発想が容赦ないわね。」



 という不吉な言葉で送り出されてきたせいか、全く心が休まらない。唯一エリスが出掛けにお昼までにはストレージ内に弁当を作って入れておいてくれると約束してくれた事だけが救いになっている。



 適当に街の中をうろつくと言っても特に目的があるわけじゃない。ただ清歴162年目のこのルーフェスの町並みは、約一年前に来た時よりも活発な雰囲気に溢れて、街中に人と物があふれているように見えた。



 人の流れは以前もそれなりに多かったが、今では当時とは比べ物にならない位に人であふれ、そこかしこの広場で市場が立って取引も活発になっている。



 ふと目をやると、どう考えてもうちから流れた商品だとわかる元の世界のアパレル業界の某社のロゴマークが入ったTシャツ等が、結構なお値段で売られているのを目撃しあまりの違和感に戸惑ってしまったり、やたらとあちこちで香辛料が並べ売りされているのを見てやり過ぎていないか不安になったりして、何か所か市場を冷やかして過ごした。



 何故かお供についてきた侍女のエリアがスタンバイしてくれたエリス作の昼食を二人で舌鼓をうって午後も適当に街の中を流していたが、それほど知り合いが多いわけじゃないしな。


 海岸の方へふらりと立ち寄って顔見知りになった漁師たちから昼前の漁でとれた魚介を仕入れられるだけ仕入れたら、特にやる事もなくなってそのままのんびりと砂浜にある岩に腰を掛けてぼんやりと海を眺めていた。



 エリアが持ってきた荷物から魔法瓶を取り出してお茶を用意してくれる。この世界に流通している紅茶ではなくて、緑茶だな。



 「あぁ、ありがとう。ってか、特にやる事もないから付き合わせて悪いな。」



 「いえ、アイク様をお一人にするわけにはいきませんから今後も特に理由がない限りは、外出の際には誰かがお傍に侍る事になると思いますので気になさらないでください。」



 気にするなと言われても、それはそれで煩わしいものがあるが、口には出さないで苦笑を返す。



 「ただのんびりしたいだけだしな。あんまり付き合せるつもりもないんだが。」



 「私にとっては役得ですし。ローズ様からもデートの心算で一日傍にいれば私にとってもお休みになるでしょうから、気晴らしの意味も込めて行ってらっしゃいって言われましたから。」



 なるほど、いつの間にか俺は侍女の一人とデートをセッティングされていたという事らしい。


 どうもローズ達はローズ達3人と侍女7人、御者4人の計14人がいつの間にか俺のハーレム要員にカウントされていると思っているらしく、自分達だけじゃなくて他の娘達ともくっつけようと色々としてくる。



 この先、長い時間を共に過ごすなら、どうあれ私達は家族のようなものでしょう?と言われてしまえば反論もなかなかできない。


 エリスからはアイク様ならちゃんと責任を取ってくださると信じていますわと真正面から見つめられてしまった。これって本当は不安だから釘を刺しましたって事だよな。



 自分の不安感からやっちまった事だとは言え、今更逃げられんかもしれんな、これ。



 唯一救いなのは三人娘含め、誰一人嫌な顔をしていない、という事か。というかこの世界本当に見た目よりも甲斐性なんだ、という事が証明されたかのように全員から肯定的に受け止められている時点で逃げ道が見つからん。



 まぁ、先はまだまだ長い、焦るこちゃないさ。焦るこちゃ……。どこの方言だかわからない言葉を内心で呟きながらお茶をすする。



 でも、そうか。これってデートだったのか。このまま砂浜で海を見ているだけだとエリアもつまらないだろうし、こんな場所に突っ立ってお茶を注いでいるだけじゃ可哀そうだよな。



 この世界には労働基準法なんかありゃしねぇ。普段休みなく働き詰めだし、給料を使う暇もなかろうからな。たまには羽目を外す機会でもなければやってらんねぇだろうし。


 そうだ、この後も特に予定も無いからこの前マリアを連れて行った茶屋にでも連れていくか。


 とりあえず午後の予定が一つ立ち目標が出来た事で気の張りも違ってくる。お茶をすすりながらエリアを誘うと存外嬉しそうに応じてくれた。


 もしかしたら俺から言い出すのを待っていたのかもしれない。




 「ええ、当家から出回っていますTシャツをはじめとした服飾品は人気商品の一つですね。もう既にかなりの数が出回っているはずですわ。あと意外と人気なのは色々な調味料でしょうか。」



 年頃の娘が何を話すのかわからん俺は、とりあえず茶屋で話す内容ではないだろうに、午前中に市場で見たTシャツについてエリアに話を振ってみたが、以外に詳しく把握しているらしく、色々と教えてくれている。


 途中途中にローズの事を褒めているあたり、主人想いの侍女さんだなぁと思わなくもないが、ローズを自慢している姿を見ていると何だか自分の娘を自慢している母親のように見えなくもない。


 外見は15~6歳のお嬢ちゃんなんだがな。あれ?この人だっけ?侍女の中でただ一人40代近かったお嬢さんは。


 あぁ、確かそうだった。ローズが小さい頃からずっと側に仕えていた侍女さんだったよな、エリアさんって。



 つい先ほどまで呼び捨てで名前を呼んでいたんだがつい、さん付けで呼ばないといけない様な気になってしまった。ここで漫画とかなら何故か考えていた事が相手に漏れて睨まれるっていうのが定番なんだが、純粋にこの世界出身であるエリアさんはお約束の空気を読むことなく、そのまま話を続けている。



 今までじっくりとローズ達が何をやっているのかを聞いたことが無かったけど、エリアから詳しく聞くとまぁ、何を狙っているのか色々とやらかしていることが解った。


 一応俺のコピーとある程度打ち合わせをしているんだろうから、構わんけどな。いつの間にか俺が管理している資産もアフォの様に増えていたから、一度くらいは何があったのか確認しておかなくちゃとは思っていたんだ。



 ローズ達は徹底的にアイルグリスをターゲットにして相場に介入しているみたいだな。エリアに聞きながら纏めると、香辛料関係や羊毛、羊肉の加工品。チーズなどの乳製品などアイルグリスの主要な貿易品を手当てり次第格安でルーフェスの商会に放出しているらしい。



 一応ランシスやそのほかの国の産業にも影響が出そうな分野においては、通常の相場で在庫品を大量かつ定期的にこちらが買い取ってネットワークに売り払い、産業の保護を図っているらしい。


 だが、アイルグリス産品の買い取りは一切しない為、現在ルーフェスだけではなく、周辺国やアイルグリスの各港町でもアイルグリス産品が売れず、彼らの国内の生産業は大打撃を受けているとの事。



 今はまだアイルグリス以南へ産品を回すことで何とか対応しているみたいだけど、既に南方でも品がダブついてきているようで、早晩行き詰り何らかの対応を迫れらるだろうとの話だ。


 ルーフェスの商人も抜け目がなく、アイルグリス以南にも比較的安い値で商品をばら撒き始めたらしいから、容赦ないな。



 ダニエルからの報告だと、既に何度か軍事的衝突を匂わせて、ランシスにアイルグリスの産品を買い取るようにと交渉があったらしいけど、当然そんな交渉に応じる訳もない。


 今の所内海に面している国の中でも比較的小国でアイルグリスに睨まれたら立ち行かなくなる国にも同じように恫喝を仕掛けているようだ。


 ぼちぼち内海に面している大国の幾つか、ランシスやエンデリング等にそれら小国から悲鳴にも似た助けを求める使者が行き交っている状況らしい。


 因みにそれらの情報は既に、内海に面している各港町では何処の盛り場に顔を出しても聞ける内容の話だそうで、いよいよアイルグリス近海はきな臭くなってきたともっぱらの噂だそうだ。





 うちから出て行った商品は内海、外海を通じていったいどこまで持ち込まれているのか。下手したらアイルグリスや東のエンデリング所か、もっと遠方の国に影響を与えていてもおかしくないな、これ。



 特にエンデリングへ輸出された鉄の量はちょっと理解できない位の量になっている。この量は全軍の武装を鋼を基調とした物に取り換えて、更に鏃も全部鉄に変え、国内で使用する釘や調理器具などの金属製品を全て鉄に変えてもさらに余るんじゃないだろうか?これ。



 一体何に使っているのか、そのあたりを把握しておかないとヤバい様な気もするんだが、まぁローズ達がやっている事だからな。その辺はとうに織り込み済みなんだろう。



 もしかしたら騒ぎを起こすだけ起こして、それを俺が端から全部叩き潰せばそれで解決っていう脳筋スタイルな計画かも知れないけど。


 まぁ、そんなことは無いよな?



 一体この一年でどれだけの商品と金を動かしたのか、正直まったく想像がつかない。既に俺の懐だけを見ても、彼女達を強化する為に消費した資産を取り戻し、その上で更に資産を何倍にも増やしている状況だ。



 そう言えばこの所、航海から帰ってくるたびに周囲の空いていた土地がいつの間にかうちの物になっていたり、いつの間にか大きな倉庫が何棟も立っていたりしていたから、随分と商売繁盛しているんだなぁとは思っていたんだけどな。



 ついでに言うなら、家の何件か隣にあった大きな屋敷がいつの間にかラーゼント商会の本部になっていたり、ひっきりなしにうちとラーゼント商会の倉庫の間で荷物が出入りしていたりと、朝から日が暮れるまで商品のやり取りが止まる兆しが見えない等という怪現象を度々見かけていたけど、事態はそこまで進んでいたのか。



 外側の倉庫とラーゼント本部周辺を警備するための兵もまた随分と増やしたらしい。一応屋敷内を警備するものと外を担当する者は分けたようで、屋敷の敷地内に入れる人員は制限したままだそうだ。


 セキュリティ意識が高いようで結構な事だが、状況があまりにも急テンポで進むために今一、俺が付いていけていない。



 ふと気が付いて茶屋で出された菓子を見ると、以前来た時には小麦と甘味を混ぜて焼いたようなクッキーともビスケットともつかない様な焼き菓子が出されていたはずなんだが、今回出されていたのはカステラ生地の上に保存が難しいはずの生クリームがのったケーキが供されている事に気が付く。



 これって作るのに冷やす作業が必要なはずだから、中世以前の文明しかないこの世界で春先に気軽に出てきていいものでは断じてないはずだ。



 今更慌ててエリアに聞いてみると、ここだけではなく、町に数軒ある茶屋に毎日朝と昼すぎにビニールで二等辺三角形に詰められた冷凍ホイップクリームを幾つか届けている商人がいるとの事。家から仕入れて解けない内に直接茶屋に持ち込み、このケーキを実現させているのだ。



 庶民では簡単に利用できないはずのこの茶屋は、今ではケーキを目当てにした女性客に人気爆発中なのだそうで……。


 個室を利用したハイソなお茶を楽しむ余裕はないけど、テイクアウトで生クリームをたっぷりと使ったケーキを楽しみたいという、ちょっと生活に余裕のある層のレディ。


 もしくは昼食や夕食のデザートに、お茶会のお菓子として客に提供したいという裕福層のお嬢様方に大人気で、一日に納品する生クリームの量も鰻登りらしい。



 今更ながら、歪な形に発展してしまったここルーフェスになんとなく恐ろしいものを感じて、紅茶でケーキを流し込こむ。



 因みに、今回の外出中にローズ達が期待していた通りの出来事は起きなかった事を追記しておく。


いつも読んでくれてありがとうございます。


今回はルーフェスやらアイク達の資産やらが飛躍したようです。

段々と周辺がきな臭くなってきています。

アイクは頭痛を感じ始めたようです。


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