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3話

ローズ視点です。

相変わらず会話して拠点から移動していません。

 アイクのPC発言、ネットワーク発言から始まった一連の混乱は、私たちから正常な判断力を奪って、暫くの間コテージは狂乱の渦に巻き込まれたわ。



 可能性を考えなかった訳ではないけど、エリスって記憶にある限り85~6歳くらいまで生きていたみたいなのよね。そこまで生きていて、前世の記憶が残っていたにもかかわらず、人生経験の足りない小娘のようにレイモンドに固執して、暴走した挙句近衛騎士にマリアを襲わせた原因は、ある時点まで彼女はまるで夢の中で過ごしていたような感覚だったかららしい。



 それが乙女ゲーム原作の強制力のせいなのか、単に前世で亡くなる寸前に重度の認知症になり、そのまま死んでしまった影響なのかは、中々判断が難しいわね。




 彼女が正気に戻るきっかけになったのが近衛騎士の団長がレイモンドのすぐ前でアイクの六角崑の一振りで弾け飛んでしまった時。親しい人間の無残なあっけ無い死を目撃した衝撃か。それとも今世の人格がその現実を受け入れられなくて引っ込んでしまったのか。


 エリス自身も判断はつかないみたいだけど、その瞬間から今まで夢を見ている感覚で自分では動けなかったし動こうともしなかったのが、急に意識がはっきりして、自分の思う通りに体が動くようになったらしい。



 ……レイモンドが腰を抜かして大小お漏らしをしたから百年の恋が冷めたわけではなかったのね。



 「正直さ。必要な事だからって自分を納得させて王女を受け入れていたけど、本当なら文句の百や二百、ぶつけたいところなんだけどね。


 まぁ、年寄りを虐めるのは良く無いし?催眠状態の夢現だったっていうなら、責任能力ないかなって考える訳よ。お祖母ちゃん。」



 「いや、流石にマリアよね。貴女エリシエル殿下と顔を合わせても表情を一切変えなかったし、声にマイナス感情出さなかったわよね。怖いくらいにニッコニコしていたのを傍で見ていて絶句していたわ。」



 この辺がマリアがただの女子高生転生者とは思えないところなのよね。



「それを本人の目の前で言うあたりは、あなた達も一筋縄ではいかない方たちですわよね。まぁ、なんとなく手打ちというサインと打ち解ける為にやっているのかな、位は解りますけど。


 これって王女教育を受けた影響かしらね。以前の私だと馬鹿にされているようにしか感じなかったと思うんですけど、言葉と行動の裏を読むような教育を受けてきた成果が出ているみたい。」



 「そういう事が出来ていて、何で暴走したのかが謎よね。」



 「焦って自制心無くせば、どんな教育も無意味よね。それは置いておいて、アイクの提案、どう思う?


ここから移動するのも港町に拠点を置くのも私は賛成なんだけど。」



 既にアイクは自分のテントに戻って何やらゴソゴソやり始めた。


 私たちも食堂から私の部屋に場所を移して、アイクから話せる範囲でレクチャーされた、「ネットワークで私たちが出来る事」の検討とルーフェスで必要になるであろう事の確認作業に入る。


 その第一声がマリアの一言なのは、作業に入る前に一度ケジメをつける為の儀式の様なものなんでしょう。




 ダイニングでは侍女たちが集まって朝食の片づけと昼食の準備を始めてくれている。既に仕込みに入っているのか、台所の方からいい匂いが漏れてきている。昼食寸前にメインの食材を私が調理することになっているけど、本当なら全部やりたいのよね。


 その辺はこれから徐々に環境を整えていこうかな。それはそうとしてアイクの港町ルーフェスに家を買って、拠点を持つという提案を真剣に検討する。



 「私は全面的に賛成。アイクが心配している、町で行動する際の護衛も確かに必要だと思う。


 治安がいいとは言ってもそれはこの世界では比較的って話で、日本と比べると真昼間に買い物に出るにしても女性一人だと無事に帰ってこられる保証はないわ。



 御者は兎も角侍女は身なりもいいし、元は良いとこのお嬢様が行儀見習いで勤めているのもいるからさ。


 身なりやしぐさで目をつけられてナンパ野郎に声を掛けられて、お持ち帰りされるくらいならまだ良い方ね。下手したら人買いに連れていかれて、ルーフェス移住初日に何人か行方不明になるのが落ちね。



 現実は漫画やアニメの様にはいかないしね。御者の人たちも侍女も、実は戦闘の訓練を受けていて、その辺のチンピラなんか片手で片付けられるのでした、って都合のいい話はないし。


 王家の方から来ている侍女さんたちもそんな都合のいい侍女さんはいないでしょ。」



 「ええ、まぁそうですね。ラノベやアニメのようにかっこいい戦闘メイドとか鋼線使いの執事とかがいればよかったのですけど、生憎、ここは現実ですから。


 一応王家から派遣されている侍女たちは護身術の初歩位は身に着けているようですけど、所詮は付け焼刃。実戦経験も当然ありませんしね。


 町のチンピラにめでたくお持ち帰りされて、おめでたにされてしまう事間違いないでしょうね。」



 生前に下手なラッパーでもやってたことがあったのか、さらりとクロい冗談を放り投げるエリス。無いわ。この娘絶対腹黒だよね。



 確かに今いるここは現実世界ではあるけど、ラノベやアニメのように転生者が存在して、アイクの様なでたらめな存在がいて、尚且つこの世界は乙女ゲームの世界である。


 マリアとエリスの物言いに突っ込みを入れたくてたまらなくなるのを抑えていると、



 「まぁ、この世界乙女ゲームの世界なんだけどね。」



 意地悪な目をしてマリアが指摘する。私が突込みを我慢しているのに気が付かれたか。


 ええい、そんな枝葉末節にこだわっていてはいつになっても検討が終わらないし、反応するのも業腹だから、スルーする。



 「まぁ、確かにそうでしたわね。それにアイク様の様な方もいるのですから、この世界にも探せば戦闘メイドとかいるかもしれませんね。」



 エリスは当然のようにその突込みに反応する。少し頭が痛い。まぁ、護衛に関しては問題になる事は最初から分かっていた。



 エイリークを気遣い、ハーレム状態の集団に男性を入れる事を憚ったという態をとっているが、これは王家からしてみればある種の意趣返し兼国内にエイリークをとどめておくための策の一つだ。



 いみじくもアイク自身が言っていたように、いくらアイクが強くても一人ではこの人数をカバーしきれないのは解り切った事だ。当然、足は遅くなるだろうし、エイリークが自分の女たちを守ろうとすれば容易に他国へ移動などできないかもしれない。



 結果、王家はエイリークとの縁を最大限に利用して国をまとめる事が出来るという塩梅だ。上手くいくかどうか頼りないことこの上ないし、エイリークにしてやられた情けない王家という一面を喧伝してしまう事にもなりかねない。


 だが今まで彼に対抗できた権力者は皆無であるうえ、娘を側に送る事が出来た者も皆無だったのだから、この事実はエイリークの実在の情報と合わせて国内の貴族だけではなく周辺国にも十分な影響を与える事になるだろう。



 もちろん、上手くいくとは限らないけどね。


読んでくれてありがとうございました。

またお会い出来たらうれしいです。

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