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6話

ローズ視点です。


アイク視点では彼女が酔っているようには見えていませんが、だんだん怪しくなってきています。

当然、アイク自身も無自覚に酔っぱらってきているのですが……。

 焚火とエイリーク、いや、アイクの元に戻った時には何とか表情を消せてたと思う。なんとなく気恥ずかしくて、誤魔化す為に無言で右手を彼に突き出す。何かを察したのかアイクも黙ってエビ的なものと一番を渡してくる。



 いや、500缶2本も片手じゃ受け取れないでしょう。慌てて両手で受け取って小声でお礼を言って自分の場所に戻る。



 「ジャージなんて本当に前世ぶりよ。ビールもカレーもチョコもだけど。」



 さっきのありがとはビールに対してのありがと。だから素直にお礼を言えたけど、着替えの一件はちょっと素直になれない。


 だから少し言い方を変えてお礼の気持ちを表現する。自覚すると久しぶりのジャージ生地の手触りとそのフィット感を今更ながらに感じてなんとなく彼方此方を触って着心地を確認する作業を始めてしまった。


 中学生とか高校生の頃を思い出して、懐かしさに少し涙腺が緩くなりそうだったけどこらえて、何本目かのビールを開ける。ここからが長丁場になる。お酒を飲みながらゆったりと、という態を崩さない程度にビールは飲み続けなくちゃダメ。雰囲気を維持しながら話を進める。だけど何度も中座するわけにはいかないから、ペースを速めたら自滅する。


 呑んでいる風に見せてあんまり飲み進めないように。一度催したら、次はもっと早く限界が来るはず。



 お酒の肴替わり、そんな雰囲気で淡々と、ゆったりと続きを話し始める。


 婚約解消がそう簡単には出来ないと悟った時から、悪役令嬢のポジションからの脱却を目指して、第一王子とつかず離れずの距離を保ったこと。立太子後の王妃教育を受けた事とその結果もたらされた評価に王太子がコンプレックスを感じ、それを私の立場的にどうすることも出来なかったこと。


 王太子とヒロインポジションである男爵令嬢マリアとの出会い。マリアが逆ハールートを目指した結果、私が命の危機に陥った事。過剰にマリアに干渉するとそれは悪役令嬢ルートをなぞることになる為に、微妙な駆け引きをせざるを得ない状況に陥った事。



 その頃から王太子側も色々とアクションを取り始めて、さらに状況が複雑化していった。しばらく混乱した状況が続いた後、マリア側からのアクションがあって、結果マリアが転生者であることが確定したことと、私と同じように婚約破棄ざまぁ物のファンだったことが明らかになる。



 そして始まるざまぁ名人戦。このネーミングセンス、我ながらどうなのかなと思わなくもないのですけど、マリアと和解した後、何度かしたお茶会の時に二人で話していたらいつの間にかそんな呼び方をしていたのよね。


 確か、将棋とか囲碁のように盤面を先読みしながら手を打っていった事から、二人で盛り上がっていて気が付いたらざまぁ名人戦、勝負無しみたいな。


 そうそう、結局千日手の様な状況になって、このまま行くとマリアは王太子と結婚できない、私は王太子と結婚せざるを得ない状況になって、しかも恨みを持った王太子にいつ何をされるかわからない、という状況になったのよ。





 マリアは私が僅かに有利と称してくれたけど、実際どうだったかはわからないわね。マリアの話だと王太子のヘタレ具合から、実際に私と結婚してしまえば身体が結ばれた後、情が残って大それたことは出来なくなるとみていたのよね。


 ただ、マリアの前世は高校生の時に死んでしまったらしく、男性との付き合いもなかったみたいなのよ。私は結婚まではいかなかったけどお付き合いしていた人もいたし、それなりに人生を経験していたから、王太子が体の関係を持ったからと言って、情から行動を起こせなくなるとは考えていなかった。




 あの王太子の性格上、女性を自分の欲を満たすための道具としてみる事はあっても、お互いを尊重して共に人生を歩んでいく存在ととらえる事が出来る人だとは思えなかった。これから先色々と挫折して人としての懊悩を経験していけば、変わるかもしれないけど。


 我儘に、自意識を過剰に増長させていった今の彼では、他者を己の目的を果たすための道具として以外には見る事は出来ないのではないかと思う。


 そういう意味では、このままいけば私の未来は風前の灯火だったはずだと確信していたわ。




 あ、なぜ高校生で人生を終えたマリアが、18禁乙女ゲームをやりこんでいたのかっていう野暮な突込みは、聞かないわよ?


 どうしても突っ込みたい人は、ご自分の所業を思い返してみなさいな。誰だってあるでしょう?そういう経験が。ナニとは言いませんけど。




 ともあれ、ざまぁ名人戦を勝負無しで終えたマリアと私は胸襟を開いて妥協点を見出し、お互いのベストではなくベター。最大公約数を求める為に共同歩調を取り始めた。


 何度かお茶会の名目で集まって話し合いの席を設けた時に本来なら起きるはずのないイレギュラーな襲撃イベントが起きてマリアが刺されたわ。



 「言っておくけど、私の仕業じゃないわよ。これは私の誇りをかけて誓えるわ。」



 彼女が襲われた瞬間は、私は席を外していたから目撃していない。公爵家の庭のオープンテラスで余人を交えない2人だけのお茶会だったから、襲われたマリア以外の目撃者は存在しないのよね。


 テーブルが倒れるような物音を聞きつけてテラスに私が戻った時は、既にマリアは血の海に沈んでいて、何者かが走って立ち去る様な音が聞こえるだけだった。



 間の悪い事に、最近のマリアと私の行動に疑問を持っていたアルベルト、いや王太子が共の者数人を連れてお茶会の様子をうかがう為に我が家に向かっていたのが災いした。



 彼女の命を救おうと必死に行動していた私をいきなり現れた王太子が拘束。マリアに救急処置を施しながらどこかに連れて行った。私もそのまま公爵家の一室に幽閉されて、あとは全てがあっという間だった。



 予定通りにレイモンドに裏切られて、ありもしない襲撃の黒幕が私であるという証拠を捏造されて、陛下が隣国との交渉で国境付近の都市へ赴き、不在であることをいいことに即決裁判で断罪されてそのまま修道院に送られることになった。




 何故、罪人として処刑しなかったのか。修道院送りでは後日無実が証明されたら直ぐに戻ってこれてしまうのに。



 王太子は愚かではあるけど、全く状況が読めない人でもない。激高したり追い詰められたりしなければある程度先を見て行動できる人だ。


 おそらく、王家の立場がそれほど強くない事が理由の一つだと思う。処刑してしまえば、後日無実の証拠が出てきたときに王家と貴族間の対立が決定的になってしまう。



 多少無理はあってもこの時点で私を罪人として断罪し、婚約の自然な解消とマリアとの婚約を整えた後、無実が証明されたら最低限名誉を回復できるよう、彼なりの道筋を立てたのだと思う。


 その時点での王家の失点を受け入れてでも婚約を解消する事を覚悟したという事ね。彼も彼なりに追い詰められて、非常の策を取ったという事なのかな。私が王家と貴族間の対立の激化を望んでいないことも王太子は知っていたし。



 無実が証明された後、私が修道院から戻ってきてもそれほど破滅的な報復はしないだろうという見通しもあったのかもしれない。お城の地下牢に私を拘禁せずに公爵家の一室への幽閉という謹慎に近い処置をとったのも過剰な反発を避けるためよね。


 ただ、その場合は私の感情とか面子など関係なしに周囲がそれを選択してしまうものなのだけど、そこまでは思い至らなかったのかな。




 その後私はマリアが生きている事と両親が必死に私を救う為に行動していた事を辛うじて知る事が出来ただけで、数日の内に修道院に送られることになった。あとは彼も知っての通りよね。



 「なるほどな。イレギュラーな襲撃イベント、本来の流れではない修道院への護送でバッドエンド成立したとは考えてなかったところに予想外の護送隊襲撃。死亡エンド確定だと考えたわけだな。それであそこまでおびえていたわけだ。」



 「いえ、そうじゃなくてもあの惨劇を目の当たりにしておびえずに済む人がどれほどいるのかしら。あの数舜で人間が紙切れやゴミ屑のようにちぎれ飛んで、気が付いたらどこもかしこも血まみれの臓物まみれ。私自身血の海に囲まれて、その上目撃者は放っておけない、ですもの。普通に死を覚悟するわよ。」



 あんまりアイクを悪く言うつもりは無いけれど、正直あの場に居合わせた者にとって死を覚悟することは当然の状況だと思う。30人以上いた荒くれどもが数分もかからずに全員打倒され、全滅したのだ。


 しかもその惨状も尋常ではない。あの後、街道中にまき散らされた人間のパーツを片付けた人がいるのかは知らないけど、街道整備の為に片付ける人がいたとしたらお気の毒としか言いようがない。


 彼らの家族も、埋葬する為に自らの愛する人のパーツを集めるだけで一苦労だろうし、心をすり減らすに違いない。


 だけどここで彼を非難しても私との関係が対立に傾いてしまうだけで、あまり良い事ではない。ここは努めて話を逸らすべき。



 「あぁ、その件については申し訳ないが、状況もよくわかっていなかったしな。まぁ、それならば首を突っ込むなという話なんだが、今更なかったことにして、さようならって訳にもいくまい。いや、それでいいならそうするんだが。割と、かなり、本気で。」



 好都合に、彼もこの話を突き詰めるつもりは無いみたいだし。それどころか可能ならば話を切り上げて、距離を取ろうとしているわね。ここで話を切り上げさせるつもりは無いわよ。逃がすものか、とおもわず笑みが漏れる。



 「それで、私の事情は全部話したわ。今後の私の予定は私一人では決められないみたいだし、次はあなたの話を聞かせてくれない?」



 私に逃げるなといったのは貴方。これからの私の行動はまず貴方の了解が必要だという事。じゃぁその了解をだすあなたの事情はどうなっているのかしら。


 私の手札は見せたわよ。あなたの手札を見せて頂戴。さぁ、ここからが交渉の本番。事情の説明自体が交渉の手筋の一つ。あなたの事情を知るのも交渉の一つ。


 私にあなたを教えてほしいの。


 あなたは誰で、どういう人。あなたは何を愛し、何を感じて生きてきたの。




 ……私は貴方にとってどういう人になれるのかしら。


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