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様子がおかしい?

よろしくお願いします!






パーティーが終わり、次の日のこと。


「ねえ……」

「変ですわね……」

「いったい何があったんだ?」

「さあ……」


ひそひそと、学校の生徒が話している声が辺りから聞こえる。

その原因は……。


ガタンッ!!


「……痛……はあ……」


……とある人物が、何度も壁に激突し、何度もため息をついてるからだ。

その人物を知っていた私は、声をかけた。


「……ご、ごきげんよう。グレン様」

「…………。

……ああ、アイラ嬢か。……はあ」


……間が長い!!


グレンは、ダンスパーティーの帰りくらいからこんな調子だった。

生気がないというか、ぼーっとしてて壁に激突したり転けそうになったりするというか……とにかく、様子が変なのだ。


……紬関係だろうな。


小声で尋ねた。


「グレンさん。あの後何かあったのですか?」

「……た」

「はい?」

「ふられた」

「……えっ!?」


私くらいにしか聞こえないくらいに小さく呟いて、グレンはとぼとぼと自分の教室に戻っていった。


ゴトンッ!!


……今度は何にぶつかったの……じゃなくて!!


ふられたって……告白したってこと?

それで、玉砕したと?


……気が早くないですか!?

せめて周りが気づくくらい良い雰囲気になってからにするとか、もうちょっと段階踏んでからにしてもらえません!?


まぁ、文句言っても仕方無いんだろうけど……。


グレンのことだし、ダンスパーティーの雰囲気にのったっていうのもありそうだしなあ。


「……はあ」


「ため息をついたら、幸せが逃げてしまうよ?」

「っ!?

……ウ、ウィルソン様……ごきげんよう」


び、びっくりした。


急に話しかけられたと思ったら、ルイスさんだった。


そう……ルイスさんといえば昨日のダンスパーティーを思い出す。

とても辛そうに見えて、ダンスを踊るのを承諾したあの後……一曲だけ踊り、別れた。


ただそれだけだったんだけど、あの表情を見てしまったせいだろうか。


……どこか、無理した笑顔に見えるのは。


そんなことを考えながら見つめていると、ルイスさんはクスクスと笑った。


「ルイスで良いって言ったのに」


そこっ!? 笑ってたのそこ!!

普通に慣れてなくて忘れてましたよー。


「……ルイス様。何故ここに?」


私が名前で呼ぶと、満足したように笑った。


何考えてるのかわからなくて怖い……っ。


「何故って……グレン男爵の様子が少し変だったから、気になってね」

「少しどころではありませんがね……」

「はは……。

彼が心配?」

「……そう、ですね」


「アイラ嬢は……彼が好きなのかい?」


……ん??


「は? んなわけな……ごほっ。

……そういう感情で、グレン様のことを気にかけているのではありませんよ」

「……」


「ただ……嫌いでは無いので。それだけです。

他意はありません」


「では、アイラ嬢は優しい人なんだね」

「……ありがとうございます」


その言葉に、胸がチクリとした。


本当に優しかったら……もっと、出来たことがあったはず。

私はただ、紬の意志も、グレンの意志も捨てられなかった、中途半端な人間。

自分が傷つかないように、いつだってやり過ごしているだけで。

優しくなんて、ない。


そんなことを思うと……ふと、前世を思い出した。






『優しいよな』


『……あなたの目は節穴でしょうか?』


『急な敬語やめろ。

素直じゃ無いなー』


『……本当に優しい人は、誰にでも優しいと思うけど』


『そんな人間見たことないけど』


『……』


『人は完璧じゃないし、好きな人とか、周りの人に優しく出来たら、十分優しいだろ』





 

これ、今思うと、遠回しに私が嫌いな人とか関わりの無い人には優しい人間じゃないって言ってるよね……。


「……アイラ嬢?」


はっ。


「……は、はい?」


あ、危ない。ぼーっとしてた。


「いや、様子が変だったから。

……そうだ。グレン男爵のこと、ソフィー嬢に聞けば良いんじゃないかな?」

「え……」

「このままでは困るだろう?」

「そう……ですね」



このままだと気まずいだけなのは本当だ。


今日も、いつもと同じように紬と昼食を食べる予定だったので……その時に紬に聞いてみることにした。





───────────────────────




というわけで昼休み。




「……紬」

「ん? ほぉに?」


サンドイッチを頬張りながら不思議そうに紬は私の方を見た。


「グレン・ウォードさんの様子、変だったけど……あのパーティーの時、何があったの?」


そう尋ねると、紬は口に含んでいたサンドイッチをごくりと飲み込んで、何てことないような顔で言った。


「あー。告白されて、断っただけ」


「……そ、そうなんだ」


……あ、あっさりしすぎー!!


「でも、グレンさんから聞いたんじゃないの? それ。

二人仲良いじゃん」

「仲良くは無い……って、え?」


私……グレンとのこと、紬に言ってないはず……。


声が震えた。


「何で……知って……」

「ん? 何でと言われてもなあ。

……ね、千夜。私も聞きたいことあるんだ」


「……」



「……千夜はさ、何がしたいの?」



……背筋が、凍っていく。



「何って……」


「今の質問と、千夜の反応からすると、私とグレンさんにくっついて欲しかったのかな?」


……それ、は。


「……グレンさんは、紬が思ってるような悪い人じゃ無かったから」


何を言ってるんだろう。こんなの、ただの言い訳だ。


「私、グレンさんのこと悪い人って思ってないよ?」


「え」


「良い人だよね。あの人が本気で私のこと好きなのも、大切にしてくれるんだろうってことも、よくわかってるよ」


「そこまでわかってるんなら……」


「でもそれは、私がグレンさんを好きになる理由にも、グレンさんを受け入れる理由にもならない。

もう、恋愛はしないって決めてるんだ」


どうして……そんなに乾いた笑顔で、笑うの?


「……っ。

紬……私が死んだ後、何かあったの?」


「どうして?」


「だって……紬、付き合ってる人、いたよね?」


「それ、何も関係無いよ」


「じゃあ、何が関係あるの?」


「……言わないといけない?

千夜は、私に何も言ってくれないのに?」


「っ」


「グレンさんとのことだけじゃない。

前世の時だって、いつも何か隠してた。

辛そうにしてたのに、私の前では何でも無いような顔して、何も教えてくれなかった。

“あんなところ”に閉じ込められた理由だって、本当のこと、何も言ってくれなかった……!!」


「それは……」


それは、前世の時の話。

でも、言えない。言えるわけ無い。




……“紬”には、言えない。





「……ほら、また言ってくれない。

千夜が何も言ってくれないなら、私だって言いたくないよ」


「……ごめんなさい」


「謝ってほしいんじゃないよ。

でも……」


「……」




「グレンさんとのことは、私が自分の意志で決めたことなの。

……私には、しなきゃいけないことがあるから。

恋愛する資格、ないから」


紬は、真っ直ぐ、私の方を見た。





「……私が何をするかは、私が決める。

だから、口出ししないで」





……その言葉は尤もで、私がどれほど身勝手だったかに、気づかされた。







最近ソフィー(紬)が不穏ですね……。

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