sideグレン ソフィー ー告白ー
今回はグレン視点の後、ソフィー視点に変わります。
よろしくお願いします!
ソフィー嬢をダンスに誘うと、相変わらず青ざめたような顔をされた。
それ事態はショックだが、最終的には俺の手をとってくれる、彼女が可愛くて仕方がない。
いつか……俺にもアイラ嬢に向けるような顔で笑いかけてくれないだろうか。
そんなことを、いつも思ってしまう。
けどきっと、今のままでは、この関係のままでは無理なのだ。
だから……今日ではっきりさせる。彼女が俺のことをどう思っているのかを。
そのために、今日は真っ直ぐに……俺の気持ちを、彼女に告げよう。
そう決心した俺は、ソフィー嬢とダンスを楽しんでいる。
綺麗なピンクゴールドの髪に、ルビーのような瞳をもつ彼女は、アクアブルーのドレスを纏っていた。
「……綺麗ですね」
「えっ?」
「あ」
思わず思ったことを言っていまい恥ずかしくなる。
見れば、ソフィー嬢の耳もほんのり赤くなっていた。
「……ありがとうございます」
「……っ」
可愛い!!
と、叫びそうになったのは秘密だ。
ダンスを終え、ソフィー嬢は庭に行くようだった。
人に酔ったのかもしれない。心配だ。
それに、もしかすれば二人きりになれるかもしれないな……と少しだけ思いながら、俺はソフィー嬢を追いかけようとした。
そんな俺を、パートナーであるルイス・ウィルソンは止めようともしない。
……いや、俺が言うのも何だが、普通止めるものじゃないのか?
この公爵は、何を考えているかわからない。
誰に対しても笑顔で優しい絵にかいたような王子って感じで、正直苦手だ。
誰に対しても笑顔って言うのが、誰に対しても本気で接していない様に見えるから。
ああ……そういえば、アイラ嬢も同じような感じだな。
一定の距離をおいて、仮面のように社交的な笑顔を張り付けて……一般的な貴族のお嬢様だと、常々思う。
でも、知っている。
彼女は基本めんどくさがりで、俺に対して毒舌で……ソフィー嬢に……友達に対して、柔らかい笑顔を向ける人だということを。
心を開いた相手には、素直に接するのだろう。
口では文句を言いつつ、今日だって俺の頼みを聞いてくれた。
……良い人、だ。
……うん。アイラ嬢をこの王子と同じような感じなんて思うのは失礼だな。
そう考えている間、俺は無意識にずっとウィルソンを見ていたらしい。
苦笑いされながら言われた。
「あの……僕の顔に何か?」
「あ、いや……別に……」
や、やばい。見すぎた……。
「……行かなくて良いのかい?」
「は?」
「彼女、庭の方に向かって行ったけれど」
「……」
……何なんだこいつ?
無性にイラッとした。
何なんだ?余裕そうにワイングラス片手にしやがって。
嫌味か?嫌味なのか?
そもそもお前のせいでソフィー嬢とパートナーになれなかったんだが!?
理不尽すぎると自覚はしているが止められない恨みを込めて睨むと、ウィルソンは肩をすくめた。
「ああ……あの時は申し訳ない。
君が本気だとは思わなくて」
「あ"?」
「……ただ、ああいった誘い方は相手を怯えさせるだけだからやめた方が良いとは思うけれど」
「お前に何がわかる……」
「……わからないよ。何一つ」
「……」
「行きなよ。好きなんだろう?」
「……言われなくても行く」
「そっか。良かった」
イライラしながらソフィー嬢が行った方向へ歩いていく。
こいつ……何なんだよ、本当に。
……どうして。
「なあ」
足を止めて、話しかけた。
「何か?」
ウィルソンは、いつもの王子様みたいな笑顔でそう返す。
『わからないよ。何一つ』
だけど……あの言葉を言った時だけ、こいつは無表情になった。
それが、気になって仕方がない。
「お前は、好きな人……いるのか?」
だから聞いた。あの無表情の真意を、知りたくて。
「……いるよ。
その人は、もう何処にもいないけれど」
「っ……!?」
それって……こいつの好きな人は、もう……。
「だから……君の恋を僕は応援している」
ウィルソンのとても悲しそうな顔は……その時始めて見た。
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「疲れたあ……」
庭に出て、伸びをする。
ドレスもあの雰囲気も、とても窮屈なのだ。
てか、グレンさんと踊ることになるとは……うぅ。
これだから主人公なんて嫌なんだってば…!!
もっと平凡な……平民とかに生まれ変わりたかったな。
よりによって主人公なんて……。
“私にとっては”、残酷すぎる人生だ。
だって───。
「ソフィー嬢」
ビクッ。
振り向くと……グレンさんがいた。
び、びっくした!
「……グ、グレン様」
「体調は大丈夫か?」
「え……? あ、ああ、はい」
別に体調が悪かったわけじゃないけどね……。
「そうか。良かった」
そう言いながらほっとした顔で、グレンさんは柔らかく笑う。
……やっぱりこの人は、私のことを……って、余計なことを考えない考えない!
「……ソフィー嬢」
「は、はい!」
何だろう……?
その次の瞬間、グレンさんは言った。
「俺は、貴女が好きだ」
ザア───────。
風が吹く中……とても真面目な顔で、真っ直ぐに私の目を見て…………彼は、そう言った。
「ソフィー嬢は……俺のことを、どう思ってる?
もし……君が俺を選んでくれるのなら、俺は……」
……この人は、いつもこうだ。
「……私、グレン様のこと……最初は少し怖かったんです」
「ぐっ……そ、そうか。
本人から言われると結構くるな……」
いつもぐいぐい来て、距離感ガン無視で。
「でも、グレン様が優しい人だということも、段々とわかってきました」
そのくせ不器用で、すぐに照れて、些細なことで喜んで。
……私が嫌がることは、絶対にしなかった。
「……グレン様は、私のことを愛してくれる。
きっと、幸せにしてくれる。そう思えます」
この人は、私のことを想ってくれて。
私のことを、大切にしてくれるだろう。
……だから。
「だから私は……」
顔を上げて、私は笑顔で、グレンさんに告げた。
ずっと、言えなかったことを。
「……貴方の想いを、受け取るわけにはいかないのです」
グレン、フラれてしまいましたね……