王子様属性登場
よろしくお願いします!
「ウィ……ルソン……様?」
仮面をつけててもわかる。
……攻略対象の、ルイス・ウィルソンだ。
でも、どうして……。
「ルイスで良いよ……と、ああ。すまない。
ここでは名前を言うのはルール違反だったね」
「い、いえ別に。
……それよりも、どうして私だとおわかりに?」
バレないためにこんな格好したのに、あっさりバレてしまった。
なんで? 王子様属性だから?
そんな無茶な設定ある……?
「どうしてって……見たらわかったという感じだが……」
……あなたがわからなくて怖いです。
と、とりあえず、気にしないでおこう。
あれ? そういえば。
「あの……失礼ながら、ソフィーさんとパートナーではありませんでした……?」
「そうだね」
ん??
「……それでその、ソフィーさんはどうなされたのですか?」
「ああ。彼女なら外の空気を吸いたいと庭に出ていって、グレン男爵が追いかけて行ったよ」
「……え?」
「うん?」
……えっと、つまり、今ソフィーとグレンは二人きりということで……。
「……い、良いのですか?」
……なんでこの人、主人公ほっぽっちゃってんの?
てか、警戒しなよ? 普通するよ? しろよ?
確かグレンに迫られてたのを助けたんだよね?
じゃあなんでそんな奴(ひどい言い様)と助けた女の子二人きりにさせちゃったの?
バカなの?
仮にも攻略対象ですよね!?
グレンに協力してる私が言える立場じゃないけどさっ!!
もうちょっと、こう、あるよね!??
という言葉を飲み込んで、笑顔でそう言うと、ルイスさんは不思議そうな顔をした。
「良いと思うが……?」
「へ……?
し、失礼ながら……ウィ……ルイス様は、ソフィーさんのことをどうお想いで?」
「同級生……かな」
「それだけですか?」
「うん」
「……」
……頭痛い。
確かにゲーム内のルイスさんは好感度上がりにくいキャラだったけど、ヒロインの第一印象で気になる子、程度の好感度はあったはずなのに……。
ゲームとは違ってる?
それが良いことなのかはわからない。
……あ、でも“紬”は喜びそうかな。じゃあ良いか。
そんなことを考えていると、ルイスさんは口を開いた。
「……それに、僕もそこまで鈍くは無いよ。
グレン男爵がソフィー嬢のことを想っていることには気づいている」
「え……」
「そもそも君は、グレン男爵の恋を応援するためにダンスパーティーに参加したのだろう?
僕が邪魔して良いのかい?」
おかしそうに笑いながら、ルイスさんは言った。
……ど、どう、して。
「そこまでおわかりになられているとは……」
「あ、当たりか。
君はこういう場所が苦手なのに来ているから、何か理由があるのではないかと思っただけだけどね」
「……私のこと、知っておられたのですか?」
「……皆が知っているようなことだけ、だが」
周りの人達はおそらく私の名前も覚えてないと思いますけど……。
「君の気持ちもわかるよ。
グレン男爵を見ているとなんだか応援したくなる」
「そ、そうですね」
今の言葉、紬に聞かせたら喜ぶんじゃ……じゃなくて!
この人攻略対象なのに何でライバルキャラ応援しちゃってるの!?
「……グレン様のどういうところが、ルイス様は応援したいと思うのですか?」
おかしいと思ったので聞いてみる。
すると、予想とは大分違う答えを返された。
「具体的にと言われると難しいね。
……ただ……僕はこう思う」
……とても。
「本当に言いたいことは、言える時に言うべきだ。
間に合わなければ、一生後悔し続けることになる。
それに彼は……自分の気持ちに気づけているのだから」
悲しそうな顔で笑いながら。
「っ……」
どつして……そんな顔……。
「……そろそろ僕は戻るよ。
アイラ嬢はどうする?」
「あ、……」
さっきまでの顔が嘘のように、ルイスさんは私に笑いかけた。
「もし戻るなら、ぜひ一曲お相手を、と思っているのだけど」
「……ぜひ。よろしくお願いします」
そう言ってしまったのは、なぜだろうか。
普段だったら、言わないのに。
……ただ。
悲しそうな顔が、笑顔で何かを隠しているところが
──とても辛そうで、放っておけなかった。
王子様属性、ルイスの登場でした!
王子様属性ってこんな感じなのでしょうか……(作者はよくわかっていない)