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俺様登場

俺様登場です。

よろしくお願いしますm(__)m






「おい。相談がある。ちょっと来い」

「は……」


その日の授業が終わり、カイ・マーフィーのことは気がかりだったものの、気にしすぎても仕方がないと、家に帰ろうと鞄を持って教室から出た瞬間。

急に声をかけてきて、私の腕を引っ張りながら空き教室に入っていくのは……攻略対象の一人。


俺様属性、グレン・ウォードだ。


本当なら叫ぶなり叩くなり抵抗するべきだと思うし、他の人間にならする自信がある。

だがそうしないのは、彼がこんなことをする属性なのをゲームで理解しているのと、空き教室で放課後話をするのは初めてのことでは無いからだ。


きっかけは、入学してから二ヶ月くらいたった頃にあった。





───────────────────────





「おいお前。もう昼食はあいつと食べるな」


グレン・ウォードの第一声は、これだった。


正直、は?って言いそうになった。

何様だよこいつ、とも思ったし、そもそも情報が抜けすぎてて、ゲームのことを知らなかったら何が言いたいのか全然わからなかったと思う。


ていうか思い返せば出会い最悪だな。


「……申し訳ありませんが、いったい何がおっしゃりたいのですか?」


態度が悪くて頭にきたので、何が言いたいのかはわかっているけど、そう笑顔で返した。


すると、グレン・ウォードはため息をついた。


「説明しないとわからないのか?」


イラッ。


その言い方だったらあなたの考えが人に筒抜けってことになりますけどそれで良いんですかね?


ダメだ。

ゲームの俺様だったら主人公には優しかったし、何も思わなかったけど、現実で俺様されると普通にうざい。


そんなことを考えていると、グレンはこう言い始めた。


「俺はいつもあいつを」

「あいつ、とは誰のことでしょうか?」


のを、遮った。

すると、グレンは顔を赤くした。


「っ……あ、あいつは……あいつ、だ」


え、何、怖い。

好きな女の子の名前も言えないほど初なんですかあなた。

……でも確かにそんな設定だったような気もする。


俺様っぽいのに実は初とかそんなありきた……王道設定好きだからな、『リアトリティ_』制作者。


「と、とにかく、だ。

俺はいつもあいつを昼食に誘っているのに、いつも断られる。

お前のせいだ」

さっき照れてたのが嘘みたいに私を睨んでくるグレン。


……それってつまりただの八つ当たりじゃ?


怒りがだんだん大きくなっていくのを感じるが、私は笑顔を絶やさずこう言った。


「……いいえ。私のせいではありませんよ」

「何を……っ」

「考えてもみてください。

私はソフィーさんよりも身分は下ですし、特に力を持ってません。

私は彼女を縛ってはいないですし、そもそも出来ないのです。

昼食は、ソフィーさんのご好意です」

「……」

「そして、私はソフィーさんが想いを寄せていられる方と同じ時を過ごしたいとおっしゃるなら、慎んで身をひきます。

……ですが私は残念ながら、ソフィーさんからそのような話を伺ったことはありませんし……」


自分でも遠回しな嫌味を言っていると自覚しているが、更に私はここで追い討ちをかけた。


「ソフィーさんが他の方から昼食のお誘いを受けていられたという話も、初めて聞いたのですよ」


これは嘘じゃない。


しつこいだとかうざいだとかはさんざん聞いたけど、グレンから昼食を誘われたなんて話聞いていなかった。


……多分。


「……」


グレンは俯いて黙ったままだ。


だが、このまま諦めてくれれば良いんだけど……と、淡い期待を抱いたのが間違いだった。


直後、グレンに頭を下げられたのだ。


……へ?


「グ、グレンさん……? どうしたのですか?」


「すまない。八つ当たりだった」


「え? は、はい」


何急に?

ていうか謝れたんだ?


「そして頼む……」


頼み?


「……えっと?」


「俺とあいつの仲を、とりもってくれ……!!」


………………。


………………は?


何言ってるんだろこいつ変わり身早すぎさっき自分が言ったこと忘れたの意味わかんない本当何様……って、待てよ。


良いかもしれない。


「……わかりました」


私が了承したのは、気づいたことがあったからだ。


もしかすると、上手いこと言えば、グレンは紬を好きじゃ無くなるもしれないし、少なくとも紬が本当に嫌なことを伝えれば、彼はそれをしないはず。

グレンが紬を好きなら私に害は無いし、紬の日頃の疲れを少しは軽く出来るかもしれないと。


友達のためなら、頑張れる。


という打算的な思惑だったのに。


「本当かっ!?

ありがとう……!!」


グレンがあまりにも嬉しそうに言うものだから、少し罪悪感が湧いた。

だから私は、目を反らした。


「は、はい」


それと同時に、少し驚いてしまった。

この人がお礼を言うとは思わなかったから。


意外に、良い人なのかもしれないと、そう思った。





───────────────────────





で、現在私がこの人……グレン・ウォードに抱いている想いはあの時とは違っている。


それは空き教室で恋愛相談にのっていたらわかったことで、まあ悪い人では無いと思うけど、考え方が安直というか単純というか……バカだなと思う。


そして今は、変人にしか見えない。


「無理ですよ」

「頼む。今回だけで良いんだ」

「嫌です」

「そこをなんとか……!」

「嫌です」


俺様はどこに行ったのだろう。

何度も何度も俺様態度に遠回しな嫌味を、慣れてくると直球の嫌味を返していた私に対して、グレンは頭を下げる頻度が上がっていった。


「なんでだ!?」


そして、時たま大声で叫ぶ。うるさいんですが。


「あなたこそなんで私なんですか?

他に誘える人いるでしょう?

というか誘うべきはソフィーさんでしょう?」


ちなみに、今の私がこんな冷たい態度をとっているのは、顔の前で手を合わせならがら、グレン・ウォードが変なことを言い出したからだ。


「それはそうだが……本当に、今回だけで良いんだ」


「……」



「俺と、文化祭のダンスパーティーに参加してくれ」



………………。



いつ俺様から変人にジョブチェンジしたんだろう?







主人公からの心にくるキツい言葉を浴びせられ続け、すっかり俺様属性が薄くなった元俺様……グレンをよろしくお願いします(*´・ω・)




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