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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第四章 宿命の吸血鬼編
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第91話 ちゃんと向き合って

 突然のキルちゃんとスピリアちゃんの戦闘が終わった後。


 ミリアさんがキルちゃんを支えながら、私、イアンさん、レオくんの五人は家に戻った。


 一方、泣きじゃくるスピリアちゃんを連れてまことさんが王都を散歩してくれた。


 今も二人は外出中だ。


 そして家に戻った組は、キルちゃんが寝ているベッドを取り囲むようにして座っていた。


「い、痛いわよっ、ミリアっ!」


 キルちゃんがベッドの上で痛みに声をあげた。


「申し訳ございません、キル様。ですが、こうしないと止血出来ませんので、我慢してください!」


 止まらない血を包帯で必死に抑え、ミリアさんがキルちゃんに言う。


「無理無理無理! 痛すぎる!」


 それでもキルちゃんは手足をバタバタさせて痛みをアピール。


「キルがあの子に刺された時はどうなることかと思ったけど、これだけ叫べるなら大丈夫だね」


 そんなキルちゃんを見ながらイアンさんが苦笑。


「そうですね」


 腕を組んでレオくんも口角を上げる。


「なっ、何よっ! イアンもレオも! 本当に痛いんだからね!」


 それからベッドに座ったまま両足をバタバタさせて、


「もう! 人の気も知らないで!」


 と、頬を膨らませた。


「ちょっとキル様、どうか落ち着いてくださいませ!」


 ミリアさんがあわあわと慌てていたけれど。


 そうして何だかんだ言いつつ、ミリアさんによるキルちゃんの治療は進んでいった。


「ミリアンジュ・リカバリー」


 ミリアさんが呪文を唱え、ベッドの上のキルちゃんのお腹に両手をかざす。


 すると、ミリアさんの両手からレモン色の優しい光が出てきて、キルちゃんのお腹、そして身体全体を包み込んでいく。


 私もイアンさんもレオくんも固唾を呑んでミリアさんによる治療を見守った。


「これで治るんですか?」


 たまらず聞いてしまうと、ミリアさんは回復魔法を使いつつキルちゃんのお腹を見つめながら答えてくれた。


「分かりません。ですが、応急処置にはなるかと」


「大丈夫よ。ミリアのおかげで痛みもだいぶ和らいできたし」


 キルちゃんがベッドにもたれながら言うと、ミリアさんは安心したように目を細めた。


 良かった、キルちゃんも大分落ち着いてきてる。


「にしてもあの子、一体何なんですか?」


 キルちゃんが寝ているベッドの側で立っているレオくんが、腕組みしながら尋ねた。


「急にキルに襲いかかってきたし、それに、キルが自分の一族を殺した、って」


 レオくんの言葉にキルちゃんは俯いて表情を曇らせた。


「あの子の言ってることは本当よ。私が昔皆殺しにした一族が一つだけあるの。多分あのスピリアって子があの時生き残ってた子だわ。私達キラー・ヴァンパイアが誰一人として近付けなかった……」


「ということは、ついに僕達が恐れていたことが始まってしまったってことだね」


 レオくんの横で、イアンさんが顎に手を当てる。


 イアンさんの言葉にキルちゃんは頷き、


「でもあの子には本当に申し訳ないって思ってる。だって私達は無差別に他の一族を襲ってたから。私が戦闘に参加して初めて襲った一族がホーリー・ヴァンパイアなの。あの子の言葉が本当なら、本当にあの子がホーリー・ヴァンパイアの末裔なのよ」


「ごめんね、キル」


 ベッドの上のキルちゃんを見下ろして、イアンさんが申し訳なさそうに謝罪した。


「え? 何でイアンが謝るの?」


 でもキルちゃんは不思議そうに目を見張った。


 それでもイアンさんは申し訳なさそうな表情を崩さずに、


「あの子のことをユキから色々と聞いた時点で察するべきだった。そうすればキルが怪我をすることもなかったのに」


「わ、私も! ごめんなさい……」


 イアンさんが謝罪するのを見て、私も慌てて頭を下げた。


 だって本当に悪いのは私なのだから。


 スピリアちゃんと出会って、私情に首を突っ込んで、誠さんにまで迷惑かけて、おまけに今はイアンさん達にまで迷惑をかけてしまっている。


 それに、キルちゃんの過去を知らなかったのならまだしも、私は事前にキルちゃんから聞いて知っていた。


 彼女の過去、彼女が過去に犯してしまったことも。


 にも関わらず、絶対に会わせてはいけないはずの二人を引き合わせてしまった。


 戦わせてしまった。傷付けてしまった。


「全部、私が悪いんです! 本当に本当にごめんなさい!」


「ユキのせいじゃないわよ。すぐに気付かなくてあの子を余計に怒らせちゃったのは私も反省しないといけないし」


「そうだよ。ユキが悪い訳じゃない。僕も悪かった。嫌な予感はしてたんだ。スピリアの一族が壊滅させられたって聞いたときに。それなのに……。事前に対策を取っておくべきだった。こんなことになる前に」


 キルちゃん、イアンさんが自身の落ち度を口にして、私を庇ってくれた。


 そんなことしなくて良いのに。本当に悪いのは私なんだから。


「もう、止めて」


 声がして顔を上げると、キルちゃんが太ももに置いた拳をぎゅっと握っていた。


「イアンもユキも悪くないよ。だからこれ以上謝らないで。自分を責めないで」


「で、でも……」


「これは、私とあの子の問題だから」


 私を遮ってキルちゃんは真っ直ぐ言った。


「決めたの。自分に誓ったの。どんなことが起こっても絶対に受け止めるって。あの子の大事なものを奪ってしまった私の罪は消えない。あの子とちゃんと向き合わないと、私も前に進めないから」


「キルちゃん……」


「キル様」


 ミリアさんは何かを悟ったように、力強く頷いた。


 キルちゃんもミリアさんに頷き返し、『回復してくれてありがとう』とベッドを立つ。


 そしてドアに向かって数歩進んでから私達を振り返った。


「私、あの子の所に行ってくる」


 キルちゃんは口角を上げてそう言った。

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