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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第四章 宿命の吸血鬼編
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第79話 何だか懐かしい気分

第四章開幕です!

 朝。私は校門の前で立ち止まり、そびえ立つ校舎を見上げた。


 四日間の夏合宿最終日に、スピリアちゃんを襲ったハイト達吸血鬼三人組と戦ってから、正確には私の方がボコボコにされてから今日で約二週間が経過していた。


 夏合宿、色々あったけど楽しかったな。


 風馬ふうまくんと海に行けてBBQも出来た。


 BBQの時は風馬くん以外の子が怖くて勝手に会場抜け出しちゃったけど、風馬くんがちゃんと迎えに来てくれた。


 あれは本当に迷惑かけちゃったな、反省反省。


 それから水色の髪をした小吸血鬼のスピリアちゃんに出会った。


 最初は私と風馬くんの事も警戒して怯えてたけど、次第に心を開いてくれた。


 藤本くん達にスピリアちゃんが見つかってた時は焦ったけど、何とか切り抜けられた。


 その次は、ハイト、スレイ、マーダの吸血鬼三人組に出会って、三人がスピリアちゃんを狙ってる事に気付いた。


 もし私がBBQ会場を抜け出してなかったらそれにも気付けなかったから、結果的には抜け出して良かった、かな。


 でも結局三人からスピリアちゃんを守りきる事は出来なくて、スピリアちゃんが襲われちゃった。


 助けようとしても私の力じゃ何も出来なくて、マーダに右腕噛まれちゃった。


 最終的には何とか飛び出してスピリアちゃんの笑顔を腕の中で確認できたから、事なきを得たって感じだけど。


 実際、スピリアちゃんも私も怪我して全治二週間。


 怪我が治るまでは誠さんが所属している組織のVEO基地で療養してもらった。


 誠さんにも迷惑かけちゃったな。


 お礼は言ったけど、まだまだ言い足りない。


 それから風馬くんにもお礼言わなくちゃ。


 毎日お見舞いに来てくれたんだもん。


 ……本当に、色々ありすぎたくらいだ。


 何だか長期休暇明けの気分。


 学校を見るのも懐かしく感じられる。


 はぁ、本当に久しぶりだなぁ。


 そんなことを考えていると、私の頬も自然と緩んでいたようで、


 「何であいつ突っ立って笑ってんの?」


 「さぁ。学校に恩でもあるんじゃね?」


 「鶴の恩返し?」


 校門の近くで立ち止まっている私を見て、登校してきた他の生徒達がチロチロと私を見て喋り合っていた。


 し、しまった! 絶対に変な人だと思われたよね!


 私は恥ずかしくなって穴に埋まりたい気持ちをぐっと抑え、校門をくぐった。


 教室に入って席に着くと、風馬ふうまくんが笑顔で、


「お、村瀬むらせ。大丈夫か?」


「うん。大丈夫。ありがとう」


 頷いて風馬くんにお礼を言う。


「元気そうで良かった」


 風馬くんは、私を一瞥してから言った。


「ずっとお見舞い来てくれてありがとう。すっごく嬉しかったよ」


「そうか? なら良かった。しつこくないかちょっと不安だったんだ」


 頭を掻きながら風馬くんは笑う。


「そんなことないよ! むしろ全然退屈しなかったし寂しくなかったし、助かったし有り難かったよ! 本当に」


 何を言ってるんだろう、私。


 全然まとまってない……。語彙力皆無なのバレバレ……。


 心の中で涙を流していると、


「それなら安心だ」


 風馬くんが安心したように笑った。


「あ、そうだ。まことさんから聞いたんだけど、合宿の時に戦いの状況、誠さんに細かく説明してくれてありがとう」


「誠さん……?」


 風馬くんは不思議そうな顔をして首を傾げ、『誠さん』が誰かを思い出そうとしているようだった。


「あ、えっと、ハイト達と戦ってた時に先生の通報で駆け付けてくれた男の人なんだけど。眼鏡かけてるちょっとだけ怖そうな人」


 後半の説明はいらなかったかな。


 というか、誠さんの前で言ってたら間違いなく怒られてるけど。


 でも、それだけ特徴的なんだから風馬くんも思い出せるはずだ。


 それから風馬くんは『あっ』と顔を綻ばせると、


「分かった。あの男の人か」


「うん。思い出せた?」


「ああ。あの人、誠さんって言うんだな。村瀬の事すごく心配してたぞ」


「えっ!? そうだったの?」


 誠さん、私には怒ってばかりで、どちらかと言えば『風馬くんが心配してた』って言ってたのに。


 私の事もちゃんと心配してくれてたんだ。


 何か、嬉しいな。


 「その、村瀬は誠さんと知り合いなのか?」


 風馬くんは、私が誠さんのことを知っていたのを不思議に思ったようだ。


 「うん、色々とお世話になってるんだ」


 本当に色々と……。


 「そうなんだ。あの人、何だっけ? ビーイーオー?」


 風馬くんが首を傾げた。


『ビーイーオー』ってことは、誠さんが所属してる組織の名前だよね。


 「あ、正しくはVEO(ベオ)って言うんだけど」


 「へぇ。何してる組織なんだ?」


 風馬くん、VEOに興味津々だね。


 まぁ、確かに風馬くんは誠さんとも初対面だし、組織の名前知ってるだけじゃ色々と気になるだろうし当然かも。


 にしても、『何してる』って言えば良いんだろう。


 流石に『吸血鬼を抹殺するための秘密組織だよ』なんて本当の事は言えないし、かと言って他に言い表す言葉も思い浮かばない。


 でもここで黙ったら余計におかしいよね。


 何か、何か答えないと。


 「警察と救急が合体した……みたいな感じかな?」


 「へぇ。何かカッコいいな」


 風馬くんが感心したように笑った。


 良かった、何とか納得してもらえたみたい。


 それに咄嗟に放った言葉とはいえ、あながち間違いではないと思う。


 実際に『警察』としては吸血鬼を調査してる感じだし、『救急』としては私とスピリアちゃんを治療してくれたから。


 私はこれで二回目だけど。


 もう風馬くんにも誠さんやVEOの皆さんにも迷惑かけられない。


 これからはしっかりしなきゃ。


 ※※※※※※※※※※


 そして放課後。


 風馬くんにバイバイと言ってから、大急ぎで学校を飛び出した。


 校門の外では、黒髪の吸血鬼が笑顔で待ってくれていた。


 「イアンさ~ん!」


 手を振りながら走っていく。


 「ユキ、お帰り。じゃあ行こうか」


 「はい!」


 イアンさんが出現させた魔方陣に乗って、私達は吸血鬼界へと転移した。

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