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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第三章 夏合宿編
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第62話 からかいすぎだよ

「村瀬。お爺さん大丈夫だったか?」


 翌朝、自分の席に着いた私を見て、風馬くんが心配してくれた。


「うん、大丈夫だった。幸い重体とかじゃなかったしピンピンしてるよ」


「そっか。良かった」


 風馬くんは安心したように笑った。


 結局、今日もいつも通り学校に登校した私。


 おじいちゃんの事が心配で、先生が帰った後も『行きたくない』って言ったんだけど、おじいちゃんは『行きなさい』の一点張り。


 おじいちゃんに押されて学校に行く事になった。


 おじいちゃんはもう二、三日様子を見るため入院を続けるらしい。


「ごめんね。心配かけちゃって。風馬くんは別に関係ないのに」


「良いよ。ピンピンしてるなら安心だな」


 風馬くんは笑顔で私にそう言ってくれた。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※



 昼休み、私はまた先生に呼び出しを受けた。


 私が職員室に行くと、


「夏合宿、どうする? 村瀬さん。お爺様の体調も心配でしょうし、参加は無理しなくて良いのよ」


 先生は夏合宿の案内プリントを差し出して尋ねてきた。


 おそらく今日の終礼で配る予定のプリントなんだろう。


 夏合宿についても昨日おじいちゃんと話し合っていたから結論は出ている。


「祖父には『行きなさい』って言われました」


 言われたけど、やっぱり心配だ。


 二、三日入院して退院した後、もしおじいちゃんがまた倒れても私はお見舞いに行けない。


 私が夏合宿に行っている間におじいちゃんにもしものことがあったらと思うと、とても行く気にはなれないのだけど……。


「そう。じゃあ分かりました。村瀬さんは判断しづらいと思うけど一応このプリント終礼で配るから、お爺様ともよく相談して決めてください」


「はい。ありがとうございます」


 先生にお辞儀をして教室に戻る。


 その後、終礼で夏合宿の案内プリントが配られた。


 それを持って私はおじいちゃんが入院している病院に向かった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「おじいちゃん!」


 引き戸を開けると、おじいちゃんが顔だけ入り口の方を見た。


「おお、雪か」


「体調どんな感じ? しんどい所とかない? あ、あと、痛い所とか! ちょっとしんどいなぐらいでも言ってね。あと、何かあったらすぐ教えてね!」


 質問攻めの私に思わず吹き出し、その後に数回咳き込みながらおじいちゃんは言う。


「わしのことは心配せんくて良いぞ」


「で、でも咳してるじゃん! せ、先生呼んでく――」


「大丈夫じゃよ。唾が喉に詰まっただけじゃ」


 そう言いながらおじいちゃんは病室を出て行こうとした私の腕を掴んだ。


「ほ、本当に?」


 不安でついつい疑ってしまう。


「こんな時に嘘なんかつくわけないじゃろが」


 ――だっておじいちゃん、体調悪いことも私に言ってくれなかったじゃない。


 と、文句みたいなことは言えるわけもなく……。


 若干おじいちゃんが体調のことを言ってくれなかったのを不服に思いながら、私は制カバンの中から夏合宿の案内プリントを取り出した。


「おじいちゃん、これ今日配られたんだけど」


 おじいちゃんが見やすいようにベッドの柵に沿わせて置く。


「ほぉ。夏合宿、か。楽しそうじゃのう」


 無邪気に顔を輝かせるおじいちゃん。


「う、うん。楽しそうなのはそうなんだけど、行ってもいい?」


「当たり前じゃろ。行っといで」


 おじいちゃんの軽い言葉に思わず聞き返してしまう。


「えっ!? 本当にいいの?」


 おじいちゃんは首を縦に動かして、


「ボーイフレンドと愛を深めるチャンスじゃしのう」


 お、おじいちゃん! 何でその事を!

 ていうか、ボーイフレンドって風馬くんのこと⁉︎


「顔が真っ赤じゃぞい、雪。わしは全部お見通しじゃ」


 誇らかに笑うおじいちゃん。


「で、でも風馬くんとはまだそういう関係じゃないよ。ただ、何かと気にかけてくれる優しい子で。私と風馬くんじゃつり合わないよ」


「何でじゃ?」


「だ、だって、風馬くんはカッコよくて勉強も出来て運動神経もよくて皆の人気者なんだよ。それに比べて私は――」


 お、おっと! 危ない! 口が滑るところだった!


 おじいちゃんには友達いない事言ってないんだよね。


「つり合う、つり合わんの問題じゃなかろう」


「え?」


 おじいちゃんは微笑んで、


「二人がどう思っておるかじゃぞ? 真実の愛っちゅうもんは二人の気持ちなんじゃ」


 そ、そっか。気持ち、か。私は風馬くんのことカッコいいって思ってるけど風馬くんは……。


 って! 違う違う違う!


「まだそういう話になってないんだってば!」


 そもそも! そもそもまだ付き合うとかお互いに両想いとかそこまで発展してないのに何先走ってるの? 私!


 ていうか、うまく口車に乗せて私に変な気持たせたの、おじいちゃんだし!


 じと目でおじいちゃんを見ると、


「ま、雪の気持ちが確認出来たから良しとするかのう」


 ニヤつきながら寝返りをうって、わざと私に背を向けた。


「あ、あと」


 おじいちゃんはパッと振り返ると、人差し指を立てて言った。


「病室では静かにのう」


 茶目っ気にウインクして笑った。


 ……ん? あっ!


 思わず口を塞ぐ。そうだ! 熱くなっちゃってつい叫んじゃったんだ!


 どうしよう、どうしよう……。迷惑だったよね……。


 私は慌てて辺りを見回す。


 壁、壁、壁……。


 ……ん? あっ! だ、騙された……。


 ここ個室だからおじいちゃんしかいないんだった……!


 なのに他の入院患者さんもいると思って……。


 くううう、おじいちゃんってば私のことからかいすぎだよ……!

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