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私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第三章 夏合宿編
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第56話 天兵長の謝罪

「いきなり来てもらってすまなかったな」


 前にも来たことがあった天界の王宮にある応接室に私を通して、天兵長のルーンさんが謝ってくれた。


「いえ、大丈夫です」


 応接室の中には、相変わらず金色の豪勢な家具がたくさん並んでいた。


「お待ちしておりました、ユキ様。わざわざお越しくださり、ありがとうございます」


 部屋の中央で私に向かって深々とお辞儀をしてくれるのは、薄紫髪を腰の辺りまで伸ばした天使。

 ルーンさんの秘書兼第一部下のフェルミナ・エンジェラさんだ。


「お久しぶりです、フェルミナさん」


 私の言葉に、フェルミナさんはほんわかとした笑顔を見せてくれた。


「とりあえず座ってくれ」


 ルーンさんに促され、私は赤いフカフカの毛布の椅子に座った。


「それで、話ってなんですか?」


「率直に聞くが、そなたは今吸血鬼界に赴いているのか?」


 私がルーンさんとの約束を破ってしまったことがまだ気になっているんだ。

 多分これは念のための確認のはず。


「いいえ、今は行ってないです。約束、ちゃんと守らなきゃって思って」


「そうか」


 ルーンさんが安心したように、椅子の背もたれに背をつけた。


「それならば我も安心だ。一応のため、確認したかったんだ」


 やっぱりそうだったんだ。確かに約束してた事だから気になるよね。


「あの、約束破っちゃって本当にすみませんでした!」


 私が椅子から立ち上がって頭を下げると、


「謝られたところで我の気持ちは変わらん。……と言いたかったところだが、今はそなたも我との約束を守ってくれているようだし、別に構わないぞ」


「ありがとうございます!」


 私は嬉しくなってもう一度お辞儀をした。なんだかんだ言ってルーンさんも優しい。


「あと、もう一つ言いたいこと、いや、謝りたいことがある」


 ルーンさんの言葉に顔を上げると、彼女は何だか暗い表情で俯いていた。


「ルーンさん……?」


「先日の吸血鬼界での戦闘で、我の部下が……フォレスとウォルがそなたに攻撃したこと、本当に申し訳なかった」


 ルーンさんが座ったまま、私に向かって頭を下げてきた。


「そ、そんなそんな! 大丈夫ですよ! 私が出しゃばったせいなので!」


 それは当然の結果だと思っている。


 吸血鬼と天使の戦闘に、人間である私が首を突っ込んでしまったのだ。

 不快に思われて、攻撃されても文句は言えない。

 先に首を突っ込んだ私が悪いんだから。


「二人にはちゃんと注意をしておいた。本人達も了承している。今後、そなたに一切手は下さないと」


「ありがとうございます」


 やっぱりルーンさん優しいな。わざわざそんな気を回してくれてたなんて。


「話は以上だ。付き合ってもらって悪かったな」


「いえ、とんでもないです! こちらこそありがとうございました」


 私がお礼を言って椅子から立ち上がると、


「出口までお送りします、ユキ様。さぁ、どうぞ」


 フェルミナさんが応接室のドアを開けて優しく微笑んでくれた。

「ありがとうございました」


 王宮の踊り場で後ろを振り返り、私はもう一度ルーンさんとフェルミナさんに頭を下げた。


「マコトが来るまで少し待っていてくれ」


 ルーンさんに言われて驚く。


 誠さん、わざわざ迎えに来てくれるの⁉︎


「は、はい。分かりました」


 申し訳ないなと思いながらも彼女の言葉に頷く。


 すると魔法陣による水色の光が地面から放たれ、VEO――吸血鬼抹消組織の隊長である鈴木(すずき)(まこと)さんが現れた。


 今日は鎧ではなく黒いスーツを着ている。


「雪、遅くなってすまなかったな。業務が色々と立て込んでいた」


 数段ほどの階段を上り、誠さんは王宮の踊り場に立つ。


「いえいえ! わざわざ迎えに来てくださってありがとうございます」


 頭を下げてお礼を言うと、


「そもそも俺が来ないとお前、人間界に帰れないだろう」


 呆れたような口調で言われてしまった。


 確かにその通り。私は一人では帰れない。


 吸血鬼界と人間界の行き来でも、イアンさんの力で魔法陣に乗らないと無理なのだ。

 天界に行くにしても、今日みたいにルーンさんに連れて行ってもらわないと行けない。

 おまけに帰りは、誠さんの魔法陣に乗って帰ることしか出来ない。

 何から何までお世話になりっぱなしだ。情けない、トホホ。


「とりあえず帰るぞ。まだやらないといけないことが残ってるんだ」


「あ、はい! すみません……」


 地面に魔法陣を出現させて誠さんが言う。


 自己嫌悪に浸っていた私は、ハッと我に返って地面に続く階段を降り、魔法陣に乗った。


「世話になったな、ルーン」


「いや、我もユキと話が出来て良かった」


 誠さんとルーンさんが会話を交わす。


 魔法陣の光が強まって視界がどんどん白くなっていく。


「ありがとうございました!」


 薄れていく二人の天使に向かって、私はもう一度深々と頭を下げたのだった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 VEOの基地に降り立った後、ルーンさんに言われたこと――今、私が吸血鬼界に行っているのか行っていないのか、という確認と、フォレスとウォルが私を攻撃したことに対する謝罪――について誠さんにも報告した。


 誠さんは私の話を聞いて『分かった』とだけ言うと、『もう少しで業務が終わるから待っていろ』と、VEOの部屋に入っていった。


 それから私は、業務を終えた誠さんに車で家まで送ってもらった。


 天界に行って帰ってきただけなのに、何だかすごく疲れた気がして、私はおじいちゃんが帰ってくるまでソファーで眠りこけてしまった。

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