表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の英雄は吸血鬼  作者: 希乃
第一章 出会い編
11/302

第11話 全部全部、甘えてた

「そ、そうなの……?」


 『来ない方がいいかもしれない』と、レオくんにそう言われてしまった。

 せっかく来たばかりだったのに。これから楽しく生活していけるかもって思ってたのに。


「……ユキの気持ちもわかるけど、ユキを戦いに巻き込むわけにはいかない。人間をこっちの世界で死なせたとなれば、大問題になるんだ」


 確かにそうかもしれない。

 今までこの吸血鬼界に人間が来たことはないから、私が初めて吸血鬼界に来た人間ということになる。

 それだけでも前代未聞なのに、そこで人間が命を落としたりしたらどうなるか。

 人間界と吸血鬼界の繋がりは絶たれ、VEOによって真の吸血鬼抹殺が行われるかもしれない。


 そんなの、嫌だ!

 でも、ここにいたい……!

 帰りたくない。現実逃避だってわかってるけど、でも今は逃げたい。


 学校に居たら……あんなところにに居たら、孤独と恐怖と不安で自分の心が潰れそうになって、自虐ばっかりして他人を妬むことしかできなくて、私はどんどん最低な人間になっちゃう。


 でも__!

 私がうまく人間関係を築けないだけなのに、この世界まで巻き込むのは絶対に嫌……!


「っ!」


 私は走って家を出た。


「ユキ!」


 レオくんの叫び声がしたけど、振り返らなかった。振り返りたくなかった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ただ必死に走った。闇雲に。目的地もないけど、とにかく走った。

 受け入れたくなかった。これから先、吸血鬼界に居られなくなってしまうかもしれないという可能性を。


 そんなのは甘えだってわかってる。 

 あれもこれも、全部私の甘えが招いてきたことだ。

 入学式当日、高校受験のために塾に通っていたにもかかわらず、誰一人として友達はいなかった。


 そしてそのまま高校に通うようになった。

 周りの子たちは塾が一緒だったり中学からの知り合いだったりで、既に輪を作っていて楽しそうに喋っていた。

 でも私だけ、ろくに話しかける勇気も持てずに、黙って縮こまって座っていた。


 今思えば、あそこでほんの少しでも勇気を出してあの輪に入っていれば、少しは変わってたのかもしれない。

 でもそれが出来なかったのは、私の心に甘えがあったから。

 勇気が出ない事を言い訳にして、皆と私は違うんだって思い込んで自分の心に閉じ込もって、全部他人のせいにして甘えてた。


 いつもそうだった。

 自分から勇気を出して動いたことなんてなかった。

 周りに合わせて周りと同じように行動して、それで良いんだって思ってた。


 全部全部全部____。 

 たったニヶ月の高校生活は、全て甘えながら過ごしてきてた。


 なのに吸血鬼界に____亜人界に逃げるだなんて……。


 学校じゃ楽しくないから、皆と上手に関われないからって、全部他人のせいにして、自分だけが安全になるようにして。

 安心したかったから、ここに来たのかもしれない。


 自分から楽しもうとせずに、全部楽しくなんてないと思い込んで。

 自分から頑張ろうともせずに、どうせ上手く出来ないんだと思い込んで。


 馬鹿みたいだ、私。

 ううん、本当の馬鹿だ。何で今まで気付かなかったんだろう。

 自分が、どれだけ甘えた人生を送ってたかってことに。


 亜人界に来てイアンさんたちと出会ったら、少しは自分が変われるんじゃないかって期待してた。

 でもそんなことなかった。私は結局、自分からは何もしなかった。

 天界から天兵軍が攻めてきた時も、私は戦えないし、何も出来ないからってキルちゃんに任せて甘えてた。


 きっと私のことはイアンさんが守ってくれるって勝手に信じてた。

 自分からは何も動かなかったのに、他人に甘えるなんて最低だ。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 息が切れて立ち止まった。膝に手をついて荒い息遣いを何とか抑えようとする。


 どこまで来たんだろう。


 辺りを見渡すと、そこは薄暗い路地裏だった。細い道がまるでゴールまで導いてくれるみたいにまっすぐ続いていた。


 もうそんな時間が経ったのかと思って空を仰ぐと、オレンジ色の夕焼けが眩しく空を染めていた。まだ日は暮れてない。


 私は深く息を吐いて改めて周りを見た。

 石畳みの地面、土でできた茶色い壁____路地裏が、目の前に広がっていた。

 目線の先には三段ほどの小さな階段もある。


「ヤバイ、早く帰らなきゃ!」


 感情に任せてひたすら走ってきたけど、よく考えてみたらきっとイアンさん達に迷惑かけちゃってる。

 どこに行ったかも分からない私を、皆で必死に探してくれてるかもしれない。

 家を飛び出した時はまだ青空が広がってて昼みたいだったけど、もう今では夕焼けの空が広がっている。

 時計を持ってないから時間は分からないけど、空の色の変化を見る限りでは結構時間は経っているはずだ。


 私は後ろを振り返って、来た道を戻ろうと足を進めた。

 その瞬間だった。


「うぐっ!」


 急に背後から口を塞がれた。思ったより力が強くて、抵抗してもなかなか手が離れてくれない。

 それでも何とか外そうと、必死に相手の手を掴む。

 茶色い手袋をはめているその手は、明らかに私より大きかった。

 多分大人の手の大きさだ。


 そんなこと考えてる場合じゃない! このままだと……。


 嫌な予感が頭をよぎって、急いで払いのけようと懸命に頭を振る。

 足もバタバタさせてるけど、余計に身体を浮かせるだけで何の効力も示さない。


 早く、イアンさん達のところに帰らなきゃいけないのに……!


「そんなに騒ぐなよぉ、()()。すぐ楽にしてやるからさぁ」


 焦る私の頭上で、低い男の人の声がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=39470362&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ