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(彼女に)会うとラスト  作者: 金糸公
2/3

〜そこに逃げ場はない〜

「まだ、始まってすらいないのに、終わった……」


何歩か歩いたところで、



とうとう我慢できずにその場に膝から崩れるマナト、


「あれ?どおしたの?そんな格好して」


マナトの元へ駆け寄り、上から見下ろして問う、女の子、



女の子の名前は猪狩 菜月


真名兎とは幼馴染みであり、現在、マナトが絶望している原因そのものである。





–––––ナツキとマナトは、小学生の頃からの付き合いである。



そして、マナト自身、ナツキに思いを寄せていた時期もあった……。



だが、今は違う、



なぜならマナトは他でもない、彼女から離れるために、わざわざこんな田舎まで引っ越して来て、知り合いが誰一人いない星将高校へ進学して来たのだから。




「今は違う……違うハズなのに……」







それは二人がまだ小学生だった頃、



ナツキはクラスの人気者だった。



見た目がすごく可愛いかったから、と言うのもある。


が、彼女はとても活発で、やりたい放題暴れ回っていたため、それが楽しそうに見えたらしい子供達が、彼女に寄っていったのだ。



マナトは、そんな彼女の性格抜きにして、単純に一目惚れした方の人だ。



クラスが一緒になり、席が隣同士になって初めて彼女を見た瞬間、コロンといってしまったのだ。


「あの……よろしくね、猪狩さん」


「ナツキでいいよ?うん!よろしくね、えーと……なんて呼んだらいい?」


「じゃあ、マナトで」


「分かった!よろしくね!マナト!」



その後、子供ながら何とか、ナツキと仲良くなろうと、彼女の気を引く努力をし、何とか知り合い、やがて普通に話ができる仲になった。





最初は、彼女の取り巻きの一人に過ぎなかったマナトだが、気がつくと、二人は誰から見ても仲のいい友達同士になっていた。



……とある放課後、



「……じゃあ次はここから夕日に向かってダッシュ、競争じゃーい‼︎」


「む、無理だよナツキちゃん、今までかけっこしてたじゃん、その前は鬼ごっこ、その前は……」


「とにかく‼︎これ以上ナツキについていけない‼︎みんな、あっちでおままごとしよ?」


賛成〜



と、提案を出した女の子について、ナツキから離れていく取り巻き達、



こんな感じがいつも繰り返され、最初に彼女に近づいた子供達が、ナツキのやりたい放題ぶりについていけなくなり、離れていったため、最後はいつも二人になっていたのだ。



一人ではなく、二人である。



「あ〜あ、またみんなどっかいっちゃった、あなたはついて行かなくていいの?マナト?」


「うん、僕はナツキちゃんといる方が楽しいから……」


「そっか……」




これもいつもの会話である。




マナトは必死について行った。


彼女もまた、それを知ってか知らずか、他の取り巻きが寄ってこようと離れて行こうと、気にした様子もなく、マナトの事だけを見るようになっていた。


だが、



日頃から何かと目立っていたナツキと、いつも一緒にいたマナトは、陰で有る事無い事言われ、ひどく嫌な思いをした。



だが、まだ陰であれこれ言われていた方がマシだと思えるようなことを、ナツキがする。



それが、マナトが現在ナツキから逃げたい理由となるのである。





ナツキとは一緒にいたい、でもそうなると陰で色々言われて嫌な思いをする。



という、なんだかモヤモヤする毎日を送っていたマナト、




そんなある日、ついに生徒達がマナトの陰口を言っていたことがナツキの耳に入ったらしい、


いつものように二人で話しをしていた時、ナツキが、


「私のせいでマナト、悪口言われてるよね?」


と問うてきた。



本当はすぐに”うん”と言いたかったマナトだが、男のプライドというものが、邪魔をして、


「言われてないやい!」


と、


つい強がりを言ってしまった。


「そっか……」


なんだか困った顔をしていたナツキの顔を今でも思い出せる。



ナツキにあの顔をさせた事を、マナトが後でどれだけ後悔したことか……



そんな会話があってから数日後、ナツキはとんでもない暴挙に出たのだ。



それはある日の朝、予鈴が鳴り、クラスの生徒達がみな席に着き、担任の先生が教室へ入ってくるのを、近くの席同士で話しをしながら待っていた時のこと、



ガタッと


誰か……と言うかナツキが、わざとらしく大きな音を立てて席を立ち、黒板の前に立った。


クラスの生徒全員、ナツキの突然の行動に、何事かと注目し、教室中が静寂に包まれた。



「……‼︎」


ものすごい圧を放ちながら黙って教室を隅から隅まで見渡すナツキ、


そして、



「みんなに聞いて欲しいことがあるの……」


その一言で、マナトは何となくだがこれからナツキが言おうとしている話の内容がわかった。



その頃には、マナトへの陰口は、ただの悪口になっていた。


つまりはその事をみんなと話そうとしているのである。


マナトとしては、放っておいて欲しかった。


女の子に助けを求めた、とか、自分では何もできないヤツだ、とか、マナト自身が、カッコ悪いと思っているし、もしナツキが言った事でマナトに対する陰口が無くなったとしても、全く嬉しくない、むしろ恥ずかしいとまで思っている。


だから、陰口は自分でなんとかする。


誰も何も言えないような人間になる。



そう言いたかった。



だが当時の彼はナツキの事を止められなかった。


何を言ったらナツキは納得してくれたのか、分からなかったのだ。


そして、マナトに対する陰口を言った生徒が、片っ端から吊るし上げられる様を、一人では何もできない無力感に襲われながら黙って見ていることしかできなかった。



こうして、無事、マナトに対する陰口は綺麗さっぱり無くなった代わりに、マナトは女の子に助けてもらった弱虫、という、レッテルを貼られる事になる。


陰口が無くなった理由も、マナトの陰口を言うと、ナツキが黙ってないから、である。



その後、小学校を卒業するまで、マナトに対するクラスメイト達の態度がものすごく遠慮がちになったことや、敬語で話をしてくる生徒も出てきたことも、全部ナツキの所為である。


マナトにとって、それがどれ程屈辱的なことだったか、計り知れない。



そして、中学生になったマナトは、自立を決意したのである。


「ナツキには頼らない!一人で、誰も文句のつけられない強い男になる!」



そのためにも、ナツキからは離れなければ、




そう決意したマナトは、”強い精神は強い体から”という、何処かで聞いた気がする名言を実行してみようと、



まずは、体を鍛えるための、トレーニングを始めることにした。

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