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マギシ〜氷の帝王〜  作者: totoko
8/12

一章 天の衝撃 7

「で、結局捕まって鉄拳制裁を受けたと」

「おう……」


 京はケラケラと笑いながら椅子によりかかっている。対して、天は頭上に漫画のようなたんこぶを付けて、ムスッと不機嫌顔でソファの上にあぐらをかいている。たんこぶは少し青みのある痣のようにも見える。


「ったく、あのオッサン、ご丁寧に肉体強化魔技で殴ってきやがったんだよ。あー痛え……」

「あーなるほど、だから魔傷になってんだ……くくっ……すまん、悪気は……ひゃーはっはっは!」


 最初は笑わないように冷静に言おうと心掛けていたが、やがて決壊したのか、我慢できなくなり腹を抱えて笑い出した。


 魔傷、文字通り、魔技によってできた傷のことである。

 通常、魔技士が魔技を使用する上で必要となる魔量というものは他人に渡すことは不可能である。なぜなら、魔技士の体外から魔量が放出される際に、デバイスを通じて属性化がされてしまう。そのため、その魔技士の意思に関係なく第三者へ干渉を起こしてしまうのである。


 この干渉というのが、魔量の減少(いわゆる、魔技によるダメージ)として現れるのだが、その際に痣のような形で現れてしまう。これが魔傷である。

 魔傷が発生する原因は一つで、他人の魔量が体内に潜入することで、一種のアレルギー反応として起こすのである。


 これが軽度のものならば、自己治癒が働いて、時間経過で回復するため大事には至らないのだが、重度のものとなると適切な処置や治療を行わなければ最悪、死に至る場合がある。死因は魔傷によるショック死となる。


 今回の天の場合だと、伊藤の肉体強化魔技(自分の属性の力を体に纏わせることで一時的に運動能力を向上させる魔技のこと)によるゲンコツを受けたのだ。筋骨隆々の伊藤のゲンコツだけでも痛いというのに、これに魔技の力が加わって、余計にダメージが増加したのだった。


 天自身の魔量はそれなりに多いのでいいのだが、これを魔技デバイスを装着していない一般人にやってしまったら、きっと死んでしまうだろう。

 全く、危ない男だ。納得がいかない。なぜ、俺が殴られないといかないんだ……。


「おまけに携帯もどっかにいっちまうし……ついてねえよ」


 はぁ……と溜息をつく。

 そうなのだ。伊藤から逃げているうちにいつの間にか携帯を紛失してしまったらしく、伊藤の説教から研究室へ戻ってきている間に気がついたのだった。

 今度の休日携帯屋に行かないといけない……。


「全部悪いのはあいつだ!」

「いや、君だろ。常識的に考えて」

「んだとぉ!」


 天は立ち上がるとずかずかと京の元へと近づく。一触即発の危機だ。京も怒りに燃

えている天を見て一応のため、臨戦体制を取る。

 まさに二人の距離が……となったその時だった。

 コンコンとノックの音がした。二人は同時に扉の方を見る。


「先生か?」

「いや、ジジイはノックしないだろ」

「じゃあ、伊藤先生か?」


 天は嫌な顔をする。


「おいおい、これ以上何を要求してくるんだよ」

「天、君が開けるんだ」

「なんでだよ。お前あ開けろよ」


 ……。沈黙。


「じゃーんけーん……ぽん!」


 天、グー。京、チョキ。突然のジャンケン勝負は天の勝ちであった。京は仕方がない顔で立ち上がると、扉を開ける。


「はいはい」

「あっ、すみません」


 いきなり謝られた。京はぽかんとした顔をする。

 扉を開けた先には二人の女性がいた。どちらも知らない顔である。


「ん? どうした、け……」


 近づいてきた天の声が止まった。

 目の前にいたのは女神だった。


 深めの赤いロングスカートに、薄での黒の服。派手でもなく、だからといって無頓着ではない調度良い感じの化粧を施した顔は、美人のそれである。その顔は少し戸惑っているのだが、それがまた元々の少し幼さの残る顔を魅力的にしている。


 その隣にいる女性もまあ、いい感じだが、天の目にはロングスカートの女性しか入っていなかった。


 まさしく、それは一目惚れというものだった。

 矢倉屋天、二十一歳、生まれて初めての経験であった。


次回から2章になります

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