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第二話 囚われし人  作者: SecondFiddle
第二話 囚われし人
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第三部 戦い

 東京某所。午後四時。

 いつの間にか、傍受する通信機器が増えていた。

「国防院の動きはサッパリ読めねえ……暗号解読も進まんし」

 ヘッドホンを片耳に押さえつけている髭の男が呟く。

「少なくとも、現場は東京から地方に移ったようだな」

 青白い顔の男が続ける。

「傍受は続けていて頂戴! なんのために組織がここまで受信機を増やしたと思っているの、みんな」

 女支部長は憤慨した。

「機械が増えたって人員が揃わなければ何もならないだろうっ」

 髭男の不満に支部長がさらに激怒した。

「少ない人数でも我々がしなければ、我が愛する日本は変わらないわよっ!」

 青白い男が呟いた。

「支部長のヒステリーが始まったな……」


 暗黒騎士団……由来は中世ヨーロッパに遡る。

 カトリック教会が、エルサレムをイスラム教諸国から解放ことを目的に作られた十字軍の中の一つに、白馬の騎士団と呼ばれる組織があった。

 これをコインの表とするならば、裏の存在がこの騎士団だった。略奪、強姦、殺人を好んで請け負うならず者の集団と言える忌み嫌われるべき存在であった。

 近代では消滅されているはずだったが、現代においては今や国家転覆を狙うテロリスト集団として息を吹き返している。

 しかし警察も公安局、ひいては国防院もこの秘密結社についての資金源や組織の情報は未だ持っていない。

 今や日本は、内部からは暗黒騎士団と名乗るテロリスト集団と、外部からはキタ国の圧力を、ボデイブローのようにじわじわと受けつつあった。


 午後八時、畳の部屋で連絡を取りあっていた女が、やおら部屋の全員に言う。

「香川支部で情報が出た。仲間の情報によると、碓氷航空基地所属の兵士が脱走して香川県に逃げ込み、そこで何か事件を起こしている。軍と警察が一緒になって捜索しているようだけど、報道管制が敷かれたりして、行方は分からずじまいね」

 髭男がもじゃもじゃと生えている顎髭を引っ張る。

「脱走兵か……このところ日本もきな臭くなっているし、その重圧に耐えかねて脱走した、のかもな。そんな奴、我々の所に来ないかなあ。頼りになるぜ」


 時同じく午後四時。

「和田総括、基地司令がお呼びです」

 ジュピターの声に、保安司令室に陣取っている和田は受話器を取った。

「総括か? 先ほど国防全体会議で決まったことを伝える。君と朝倉、医療チームC班と必要機材をもって香川航空基地に飛べ。医療チームは後方支援だ。現場の指揮は君が執れ」

 勝呂の声に和田は訝かしげに眉間にしわを寄せた。

「現場の指揮?」

「そうだ。脱走兵をよく知っているのは君だ。ひいては君たち第六区の人間達だ。責任の重大さを分からせるためにいってもらう。今から一時間後、基地から輸送機を出す。現地では指揮を執ってもらうが、陸上軍と県警と連絡を取りつつ行動するように」

 勝呂は言うだけ言うと電話を切った。上層部の命令は絶対だ。和田といえども拒否することはできない。

 そして午後五時。

 夕日が当たる中、輸送機のジェットエンジンが轟いている。

「全く今日は目紛しいなあ……ところで先生、僕たちの方が早く着きますね」

 ごうごうとエンジン音が轟く輸送機内で西村は言った。

「そうだな。陸上よりも圧倒的に早い。先に到着するだろうね」

「七恵は吃驚するだろうなあ」

 西村は久しぶりに神室に会えると聞いて、目を輝かせた。

「連絡は取ってあるから吃驚することはないだろう」

 朝倉は素っ気なかった。

「え、先生そうなんですか」

 西村はがっかりしたように言った。

「全員座れ。出発だ」

 和田が言うと後部座席から輸送機の後部ハッチが徐々に閉じていった。

 閉じると一段とエンジン音が増し、輸送機はゆっくりと動き出した。左に向きを変え、ガタガタと激しく揺れながら滑走路に向かった。振動は増していき、轟音は爆音に変わると、急激に輸送機の速度が上がりはじめた。和田以外の輸送機に慣れていない全員は、不安そうな面持ちだった。

 窓から滑走路を眺めていた和田が叫んだ。

「離陸するぞ」

 しかし和田の声は爆音でかき消された。

 離陸すると、いきなり振動が消え上昇を始めた。同時に搭乗者全員が斜め上方に持ち上げられるような加速度を感じた。


 一連の動きから遡ること二時間前、香川県多度津群白石町。

 瀟洒な一軒屋が立ち並ぶその一角。「佐藤」と書かれた表札の下、テレビドアホンが鳴った。

「はい、佐藤です」

「佐藤典枝さんですか、こちら香川警察です」

 ドアホンカメラ越しに身分証を提示した初老の刑事が言う。カメラは数人の警察官を捕らえる。

 身重の典枝は眉間にしわを寄せ、訝しげに言う。

「ご用件は?」

「単刀直入に申し上げます。あなたの身に危険が及んでいるんです。法源浩一郎……ご存じでしょう?」

「え?」

 典枝は信じられないという顔をした。

「こうちゃんがどうしたというのでしょうか」

「巷で噂の脱走兵は、その法源浩一郎です」

「まさか、まさか……そんな、ウソでしょう……彼、生きていたの? 感電して死んだときかされていたわ」

 典枝は戸惑いを隠せなかった。

「とにかく説明しようわいけん、ドアを開けてもらえませんか 」

 強い調子で刑事が言うと、程なくして典枝はドアを開けた。初老の刑事を先頭に数名の警官が入ってくる。

「な、何をなさるんです?」

 典枝は不安そうに叫んだ。

「安心してください。この場所は我々が見張ります。それより法源浩一郎はあなたを奪いにきますけん、保護します。さ、お腹の赤ちゃんと一緒に来てください」

「主人に連絡をつけないと」

 初老の刑事は優しく典枝に言う。

「それも我々がやります。それにご主人も保護対象です。あなたがいないことが分かったら法源浩一郎はご主人を脅すに決まってます。当然知らないと答えるでしょうから、法源は逆上して何かをしでかすかもしれません。だからご一緒です」

 かつての恋人は死んだときかされ、今の男と結婚したが、やはり法源には未練があった。その未練がようやく払拭し始めた頃、突然法源が生きていることを聞かされ、心が乱れ始めた。

 典枝の頬に涙が伝わる。

「わたし、どうすれば……」

 典枝の涙声に刑事は優しく声をかけ、深々と頭を垂れた。

「大丈夫です、我々と一緒に来てください。お願いしますけ」

 捜査員に抱きかかえられ、蹌踉めくように歩いた典枝は、警察車両に乗り込んだ。

 こうして警察は佐藤典枝、旧姓脇坂典枝の身柄を確保した。


 ようやく暮れかかった午後六時。

「脇坂」と表札がかかっているやや大きめの総二階建て一軒屋の前に男が立った。

 男は法源だった。典枝の行方が分からない以上、両親に訊くしか術はない。

 法源は辺りを警戒するように見回し、誰もいないことを確認すると木戸を開ける。

 軋んだ音がする。

 庭に入ろうとした瞬間、「脱走兵、法源浩一郎ッ」と言う叫び声とともに住宅居間から拳銃を構えている陸上軍数名が躍り出た。

「貴様を逮捕する」

 振り返ると、何処に潜んでいたのか、やはり数名の陸上軍が拳銃を構えている。

「貴様は包囲されている。投降しろ。射殺命令は有効だ。抵抗すると撃つぞ」

 法源は両手を挙げた。挙げると同時に、ふ……と法源は笑い、頭を左右に振った。

「何がおかしい。大人しく逮捕されろ」

 法源が自信に満ちた声を出す。

「君たちは私のことをどれだけ知っているのかな」

「どういう意味だ?」

 陸上軍隊長の問いかけに法源はしゃがんだ。

 次の瞬間、陸上軍の前で法源が消えた。

「消えた?」

 頭上で重い響きがし、屋根瓦の破片がばらばらと降ってきた。

「あそこだっ」

 法源は屋根にいた。法源の体重で屋根瓦が数枚砕けたのだった。

 手を振ると法源は消えた。

 外で待機していた警官数名が口々に叫ぶ。

「追えっ」「緊急配備、緊急配備」

 法源は屋根伝いに走り、さらに隣家を飛び越えた。一連の素早い法源を追いかけていた警察官の一人が、大きく目を見開き呟いた。

「人間のやるこっちゃねえ……」


 明くる朝午前七時。

 香川県警に設営された対策室で和田を始め、県警副本部長と広域捜査二課長、高松陸上軍基地指令他数名が朝早くから対策を練っていた。

「その後の脱走兵の足取りは?」

 副本部長の声に広域捜査二課長が応じる。

「昨日、二十時四十分頃コンビニエンスストアの防犯カメラが法源を捕らえております。彼は弁当を買って支払いをしましたが、店を出るともの凄い気負いで走り去りました。どこの防犯カメラにも写っておりません。さらに今日、午前五時頃に洋品店から新品の服数着ととシャツが盗まれました。靴も何足か無くなっております。短時間の犯行から類推すると法源浩一郎に間違いは無いかと思われます。彼は服装を変えた可能性があります」

 広域捜査二課長は続ける。

「何とか脱走兵を逮捕する手立てを考えないと被害は広がる一方です。住民にも不安が広がります」

 その様子を見ていた基地司令補佐官が、発言をするために、立ち上がった。

「軍には軍独自の追跡カメラを設けている。本司令室で延べ二百人体制で解析を進めている」

「追跡カメラ?」

 初耳の副本部長が質問する。

「国家機密になるのあまり多くのことを言えないが、国防院では警察のカメラよりも数十倍もの解像度のある追跡カメラを要所要所に設置している。その追跡カメラにより、脱走兵の足取りを掴んだ。君、地図を」

 そう言いながら補佐官は、冷ややかに警察関係者一同を見回す。

「は」

 補佐官が傍らの部下に命令すると、大きな航空写真を取り出し壁に張った。

「つい一時間前に撮った嘴折山中心の航空写真だが、ご存じのように香川県出身の脱走兵は、ここ周辺に土地勘がある。追跡カメラの解析結果と照らし合わせると、脱走兵はここを中心に半径五キロ圏内に逃げ込んでいる可能性が高い。うっそうとした木々が茂り、山腹には社、鎭守、山頂には嘴折神社が祭られている。それらを勘案すると……」

 雄弁に語る補佐官の前で、副本部長以下警察関係者は、軍の力を悟った。

「補佐官の通り、嘴折中心に捜査を進めたいと思うが、何か意見は」

 和田の言葉に一人が手を上げた。

「典枝さんを囮にして、脱走兵をおびき寄せる方法はどうでしょうか」

 即座に県警副本部長が言う。

「それは危険だ。第一、もしもの事があったらどうする。諸君もお解りのように、脱走兵は特殊訓練を積んだ隊員だ。驚異的なジャンプ力を目撃している警察官がいる。箝口令は敷いているが、何をしでかすか分からん危険人物だ。和田指揮官、そうでしょう?」

 和田は、傷跡の残る左頬を挙げた。

「それも悪くない手だ」

 自信たっぷりの和田に対し県警副本部長が質問する。

「悪くない手ですと?」

 和田は机を叩いた。

「大々的にマスコミに報道する」

 警察関係者一同吃驚した。

「し、しかし、それでは、国家の極秘事項に抵触するのでは」

「いや、大々的報じて奴をいぶり出す」

「それでは街中が混乱し、悪戯に市民の不安を与えるだけです」

 警察関係者の不安を余所に和田は話す。

「心配なのは分かる。これは国防院の作戦会議の中で決まったことだ。これからその概要を話す」


午前十時。

 地元テレビ局が一斉に、脱走兵としての法源浩一郎の動向を流し始めた。

「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースです。午前九時四十五分、国防院軍事報道局よりますと、航空軍碓氷基地勤務陸上特殊隊員、一人が脱走したと発表されました。脱走した隊員の名前は法源浩一郎、三十二歳。特殊能力を持った隊員とされております。脱走兵の実体は謎ですが、今現在香川県多度津郡に潜伏している模様です。……」

 ニュースが流れるやいなや、街全体が蜂の巣を突いたような騒ぎになった。

 当然、嘴折山の登山道並びに周辺区域は封鎖され、入山が禁止になった。

 商店街はシャッターを閉ざし、教育委員会により小中高は臨時休校に追い込まれた。各地元企業は、大小問わず、従業員を退社させる事態となった。

 国防院からの発表を聞いて、帝国日々新聞社報道部佐野を始め、各社報道関係者が続々と香川入りした。

 赤灯を回したパトカーと陸上軍の警戒車両が、街中を交差するように走り回る。

 主要道路には検問が設けられ警察官と陸上軍が見張っている。

 その陸上軍の中には、ひときわ背丈のある戦闘員が数名、武器を携行することなく覗うように偵察している。

 海上では海上保安庁の船とは別に海上軍の巡視艇数隻が浮かぶ。

 航空軍から派遣された軍用ヘリ『うみへび』三号が嘴折山上空をゆっくりと進みながら、拡声器を使って大声を上げている。

「法源浩一郎、君は無罪だ。大人しく出てきなさい。繰り返す、法源浩一郎、君は無罪だ。これ以上罪を犯すことはしないで欲しい」

 そしてヘリから大量のビラがまかれた。

 マンションのベランダから、幼い女の子と母親が、不安げに上空を眺めている。

「ママ、戦争が始まるの?」

「大丈夫、そんな事はないわ」

 母親は娘をぎゅっと抱きしめた。


 午後一時。

「一人の脱走兵のために、なんて大がかりな」

 長いすに座っている西村が、高松航空基地に設営されているテントの中で報道を見ながら暗い顔をした。

「なんてこった、こんな騒ぎになってしまって、B計画が世間に広まってしまったのも同然でしょ、朝倉先生……もう単なる脱走兵、と言う言い訳は効かない。法源の特殊能力を見た者もいるでしょうし……」

「たしかに彼の特殊能力を見たものがいる。それに関しては各軍、香川県警は箝口令を敷いている」

「でも誰か漏らさないとも限らないでしょう?」

 西村は頭を抱え込み涙ぐんだ。「ああ、先生……もう終わりだ、僕たちは秘密計画の首謀者として裁かれるんだ」

 朝倉は腕を組んだ。

「何を大げさな。何故裁かれなければならないのか理由が分からん。終わりかどうかはこれからの判断によるだろう」

 設営テントの前で車のブレーキ音がした。ドアが開き数人が下りたようだ。外から声が響く。

「神室特別陸士、二井見和子医師到着」

 見張りが入り口の幕を持ち上げた。重い足取りで二人は入ってきた。疲労感が隠せない二人だ。

「ただ今到着しました」

 神室は敬礼した。

「やあ七恵、待ってたよ。二井見先生もご無沙汰です」

 涙顔の西村が一転した。

「あらあ、泣いたカラスがもう笑った」

 西村を見た神室がおどけた。

「なんだってぇ」

 朝倉は二人の顔を見る。

「まあまあ、西村君、落ち着きたまえ。……ご苦労だったな、二人とも。そこに座ってくれ。変わりは無かったか」

「何しろ、休憩と食事時間以外は走り詰めでしたから」

 疲れが漂った二井見の表情だった。

「法源さんの居場所は特定しているの?」

 神室の問いかけに、朝倉は首を横に振る。

「嘴折山周辺としか聞かされていない」

 西村が喋り始めた。

「時間は分からないけど、明日の早朝に山狩りをするそうだよ、嘴折山を根城してるんじゃないかって。山の中腹には鎭守が二箇所、山頂には社があり、身を隠すにはもってこいの場所らしいよ」

「ずいぶんと詳しいわね」

 神室が言うと西村は得意げに頭をかいた。

「何しろここじゃ待機状態だからね。本館の方に行って第六区の特別証を見せれば、お宝情報がざっくざく」

「何がざっくざく、よ」

 神室は呆れた顔をした。

「入るぞ」と言う和田の声が響き、幕が持ち上がった。「おう、二井見先生、神室、長旅ご苦労」

 二人を見つけた和田が言い、二人に接近するように、傍らの長いすにどっかりと腰を下ろした。

「役者が揃った所で作戦会議を行なう」


 午後四時。

 うっそうと茂っている通称「嘴折の森」の中の鎮守で、右手でビラを持ち仰向けに寝そべっている法源は、電気店から盗み出していた携帯ラジオを聞いていた。

 ラジオは盛んに脱走兵の事を喋っている。

 法源の事を特殊隊員と称しているだけで、特殊能力まで言及していない。国防院はそこまで情報を開示していないことが分かる。

 辺りには弁当の空箱が散乱している。

 しかし、いくら不死身の肉体を持った法源でも、街中に知れ渡った以上、表面切って行動するわけにも行かなくなった。

「こんな甘言にだまされるかよ」

 陰鬱とした森の中でビラを見た法源は唸った。ぎらぎらした目は、獲物を狙う豹のようだ。

「せっかく典枝に会えると思ったんだが、畜生」

 怒りにまかせた左腕が傍らの鎭守の柱をへし折る。メリメリッという音とともに鎭守が無残にも破壊された。

 起き上がった法源は言う。

「寝る場所が無くなっちまったな……」 

 時折、嘴折山上空を軍用ヘリが飛ぶ。『うみへび』二号と四号が交互に上空を飛来する。

「ここももうじき、発見されるだろう。そうなったら、山頂の神社まで逃げるか? いっそのこと博打にでるか?」


 次の日、午前五時。

 香川県警本庁に一本の電話が鳴った。

 当直の刑事が受話器を取るとくぐもった男の声が向こうから聞こえる。

「俺は指名手配されている法源浩一郎だ」

「何?」

 受話器を取っている刑事が受話口を押さえ、周りに合図を送る。「逆探逆探」

 その合図と共に逆探知が始まった。

 確認した刑事は、ゆっくりと話し出す。 

「お前……本当に法源か、今どこにいる?」

「何処だってかまわねえだろ。俺は典枝に会いたいだけだ」

「典枝さんを呼び捨てにするとはなんだ君は。典枝さんと君の関係は調べがついている。だが、典枝さんに会ってどうするつもりだ……」

「今言ったろう? 会いたいだけだ」

 明らかに法源はイラついていた。刑事は逆探知している警官を見る。会話を伸ばせ……と言いたげに一人がゼスチャーする。

「会って何を語ろうというのだ?」

「何を言おうと俺の勝手だろうっ」

「……君が、本当の法源なら、無実だ。……話は聞いている。罪を着せられて大変だったな。今までの罪は水に流そうじゃないか。だから安心して出てきなさい」

「水に流す? 何いってやがる。信じないぜその言葉。典枝はどこにいる? 匿ってるんだろう」

「典枝さんの居場所を訊きたいだけか」

「そうだ」

「自分では探しようがないから、こっちに電話をよこしたわけだろう……残念な知らせを君に知らせよう。酷なようだが君の言う典枝さんは、すでに結婚している」

「なんだと」

 法源の声が震える。

「もうじき、子供も生まれる」

「そんなの嘘だっ嘘に決まっているっ」

 取り乱した法源の声。

「残念だが、本当だ……」

 逆探知に成功した警官が小声で言う。「小浜町二十三番地の公衆電話。至急現場へ」

「まあ、会いたいなら仕方ない。佐藤典枝、旧姓脇坂典枝は小浜町の海岸近くで暮らしている。……場所だと? 君も知っての通り、竹居観音岬の崖の上にある一軒屋だ。しかしいくら軍の特殊隊員といっても、警備は厳重だ。手出しは出来ないぜ」

 電話の向こうから粗い鼻息が聞こえた。

「特殊隊員の中でも俺は特別だ」

 刑事は再度問い詰めた。

「今さら典枝さんに会ってどうするつもりだ」

「殺すっ」

 そう言い放つと電話が切れた。

 現場にかけつけた警官は、無残にも拉げている公衆電話ボックスを発見するだけだった。


 午前六時。

 空は何処までも青く澄み切っている。

 罠と知りつつも、法源は崖の上の一軒屋を目指し上っていた。

 並行して林立している林の中の、太い幹にしがみつくと強靱な手足を使い、頂上近くまで簡単に上り、頭上から様子を覗う。

 道は一本道だが、遙か先には検問が数カ所敷かれているのが見て取れた。林の中には、警戒態勢をとっている複数の陸上軍が確認できた。

「易々とは抜けられないようだ」

 バサ、っというと共に次の木に飛び移る。

 次々に飛び移り、検問の目をかいくぐる。

 飛び移る際には音はするが、警官達が音の方向を見やったときには、素早い動作の法源を確認することが出来ず、音の周辺をきょろきょろと眺めるだけだった。

「でくの坊が」

 法源は得意げに毒づく。

 よい調子でひょいひょいと飛び移っていたが、何本目かの広葉樹に飛び乗ったとき、その重さで枝が派手な音を立てて折れ、一緒に地上へと落ち尻餅をついた。

 折れる音を聞きつけ、林の中で待機していた地上軍数名が音の方向へ殺到した。

「三六部隊、脱走兵発見ッ」

 兵士が通信機に向かって叫ぶ。

「了解。射殺せよ」

 冷徹な本部からの命令が隊員に伝わった。

 間髪入れず、アサルトライフルが一斉に火を噴く。瞬く間に辺り一面、焦げた薬莢が転がる。破裂する連続発砲音は、次々と木々を撃ち倒す。木っ端微塵に砕け散る木々。

 土がえぐられる。

 瞬く間に岩が砕け散る。

 銃声を聞きつけ、第三七部隊が合流し、さらに銃撃が激しくなった。

 逃げ惑い、跳躍する法源。

「十時方向」

「撃て、撃て」

 いくら素早く動く法源でも数発の弾丸が太腿に、胸に、当たった。しかし人工筋肉は簡単に跳ね返した。

 法源には幸いなことに、吹き飛ぶ大量の葉っぱが目隠しになり、林の奥底深く逃げ込むことができた。

「射撃止めぃ!」

 部隊長の号令に銃声が止んだ。

 辺り一面濛々と硝煙が広がり、火薬独特の臭いが立ちこめる。

「なんて素早い動きだ。いくら特殊隊員とは言え、あの動きは尋常じゃない。奴は一体何者だ?」

 構え直した陸上軍兵士は驚愕した。

「三六、三七部隊ともに目標見失った」

「両部隊は三八部隊と合流し〇六方面索敵活動開始。各G部隊は目標を追え」

 崖の上の一軒屋に向かって突き進んでいる法源の前に、いきなり戦闘服に身を包んでいる一人の大男が立ちふさがった。

「誰だコイツは」

 法源は身構えた。

 無表情で虚ろな目をした男は丸腰だった。色は浅黒く、頭髪は一本も生えていない。

 日本人とも西洋人とも判別のつかない顔立ちで、一言も言葉を発しなかった。ただ大手を広げて行く手を阻んでいるだけだ。

「行くなと言うことか? だが俺にはやることがある、どけ」

 法源は体を丸め、男に突進した。

 間違いなくボーリングのピンのようにはじけ飛ぶはずだった。

 しかし、その男は突進してきた法源を平然と体で受け止めた。さらに法源を掴みあげ、いきなり後方に法源を放り投げた。

「うわ」

 予期しない行動に法源はもんどり打った。

 法源が立ち上がるのを見ると、その戦闘員はゆっくりと法源に近づき、法源を掴もうと両手を広げた。

 咄嗟に跳躍し振り払う法源。

「なんだコイツは」

 勝ち気な法源でもこの戦闘員には戸惑いを感じ得なかった。

 人の気配を感じた法源が後ろを振り向くと、大男に似にた人間が数人迫ってきた。

 どれも同じように無表情だ。

 恐怖を感じた法源は、傍らの幹に飛びつき、素早く上った。見上げる数人の戦闘員。

「上ってこない? 武器も携行していない。何故だ……考えていても仕方ない。あばよ」

 法源はそう言いうと、折れそうもない木をめがけ、次々に飛び乗っていった。

 戦闘員は追いかけようともしない。ただ突っ立っているだけだ。

 それは奇妙な光景だった。


 暗い室内で腕を組み、ただ画面を見つめている初老の男が呟いた。

「Gドロイドから送られてくるデータには、興味深いものがあるな、バイオヴォーグ……どちらが先に国防院に気に入ってもらえるか楽しみだ……覚えておけよ、朝倉君。君のバイオヴォーグよりもワシのGドロイドが遙かに実践に役立つ事をな」


 やっとの思いで、崖の上の一軒屋の手前数十メートルまでにたどり着いた法源だったが、服は泥にまみれ、さらに素足だった。もっとも靴を履いていようがいまいが、バイオヴォーグには関係の無いことだ。

 法源はゆっくりと辺りを見回し、警戒する。ここでは妨害工作がなされていないようだ。

 いきなり庭の方で女性の後ろ姿が見えた。

「典枝」

 そう思った法源は一目散に駆け寄った。

 しかし女性の顔を見た法源の足が止まり、鬼のような形相になった。

「……貴様……」

「典枝さんじゃなくて悪かったわね」

 振り向いた女は神室だった。「典枝さんは彼処」

 神室の指さす方向を見ると、複数の戦闘員に囲まれ蹌踉めくように出てきた女性を認めた。その女性のお腹は大きかった。

「こうちゃん、悪かったわ」

 典枝は涙ぐんだ。

「あれだけ待っててくれと言っていたのに」

 法源は叫ぶ。

「だって、高圧線に触れて死んだってきいたのよ」

「あの時、俺は死んだと思った。だがこうやって生きている。なあ、一緒に来てくれ」

「もう駄目……」

 俯いた典枝の姿に法源はいきり立った。

「お前を殺して俺も死ぬっ」

 叫ぶと同時に、法源は典枝めがけ体当たりするように跳んだ。

 典枝を囲んでいる隊員は一斉に身構える。しかし法源の力は底なしだ。皆はじけ飛び、その中には血塗れの典枝の姿があるに違いない……。

「なんて事言うの!」

 そう叫んだ神室も大地を蹴った。

 両者が空中で激しくぶつかり合った。鈍い音が響き、二人は土煙を上げ、大地に転がった。

「殺人の汚名を着せられたまま俺は死ぬんだ」

 仰向けに寝転んだ法源が叫んだ。

「何度言わせるのっ。あなたは人を殺してなんか無いわ」

 神室の声を無視するように法源が立ち上がり、瞬時にして神室に飛びかかった。

 神室は身を翻す。法源の手が空を掴む。

「止めてっ」

 神室が両手を広げ、法源の両手を掴む。両者の力比べだ。

 しかし力の差は歴然だ。徐々に神室が後ずさりしながら追い込まれてゆく。

「この前のようには行かないわよ」

 そう言いながら押されるまま法源の力を利用し、神室は巴投げを打った。

「うわ」

 思いがけない攻撃に宙を舞う法源。ドスンと言う地響きとともに二百キロの体重がある法源は勢いよく大地に叩きつけられた。

 神室は身を翻し法源にのし掛かる。

「射殺される前に、大人しく捕まって」

 しかし法源は弓なりになったかと思うと、神室を跳ね返した。

「なんて人なの」

 弾き飛ばされた神室の言葉が終わらないうちに、いきなり駆け寄ってきた法源の右アッパーが神室の顎を狙う。

 咄嗟に弓なりになり、すんでの所でアッパーカットを見切る。

 しかしその衝撃は強烈だ。掠っただけで神室の右頬が裂け、血が吹き出た。

「う……」

 反射的に右頬に手を当てる。見ると右手には血がべっとりとついた。

 神室は法源を睨む。

「よくも傷物にしてくれたわね」

 ふてぶてしく法源が笑う。

「顔は女の命ってか」

 ぎゅっと傷口をつまみ、飛びかかった神室の左腕が、法源の胸元をつく。二度、三度……。しかし……びくともしない。

 法源は上着を毟り取る。赤黒い人工筋肉に覆われた上半身が露出した。そして両手で、どん、と神室を突いた。

 その勢いでまたもや数メートルはじき飛ばされる。


 遙か彼方でナラシノ狙撃隊数人が冷ややかに法源に狙いをつけ始めた。

「狙撃準備」

 狙撃隊がスコープを覗く。


 神室は突進し、アメラグのディフェンスさながら、法源の胴体に組み付いた。

 そして力一杯押す。神室の特殊合金製ブーツが大地をがっちりと踏みしめる。

「そうだ、法源をそのまま海に沈めるんだ」

 和田は双眼鏡を見ながら喚いた。

 法源は強力な両足で踏ん張る。だが徐々に神室に押されていった。しかしなすがままの法源ではない。両手を組み、神室背中めがけて力一杯振り下ろした。

 鈍い音とともにスーパースーツが軋む。

「うッ」

 神室は呻く。

 強烈な力に神室は息が詰まりそうだ。しかしスーパースーツは法源の力に耐える。

 法源の足はずるずると押し下がる。法源の後ろには崖。

「コン畜生ッ!」

 後ろを振り向きながら法源は何度も何度も神室の背中を攻撃する。その衝撃は半端ではなかった。

「いかんッ!」

 双眼鏡で二人の戦いを見ていた和田が目を離し叫ぶ。

「いくらスーパースーツでも、法源の力では裂けてしまうぞ。神室、早くたたき落とせ」

 朝倉は、和田の傍らで腕組みをしていた。

「突き落とすのが先か、裂けて背骨を折られるのが先か」

「そんな、先生……」

 同じく西村が嘆くように言う。

 再度双眼鏡を覗きながら和田は命令を出した。

「ナラシノ部隊に狙撃中止命令を出せ」

「狙撃中止」

 通信兵がナラシノ部隊に伝達する。

「神室、早く海に沈めろ」

 和田の声は聞こえないまでも、神室は法源の攻撃に耐えながら押した。強力な足を持っている法源でも、神室の金属ブーツが大地をがっちりと掴んでおり、後ずさるしかなかった。

 あと数メートルで崖下までという所まできた。

 法源も充分に分かっていた。

 しかし背中のスーパースーツがさけ始めているのを法源は見逃さない。あと一度の拳を振り下ろすことで神室の背骨が折れることを知っている。

「神室、これで終わりだ」

 法源は大きく振りかぶった。

 その時、体勢が一瞬、崩れた。

 隙を突いた神室は、一か八かの賭に出た。腰を下ろした神室は、反動で法源を肩に担ぎ上げたのだ。

「うわッ」

 二百キロを越す全重量が神室の震える両足にかかった。こうなったら拳を振るっても満足な力は出なかった。

「投げ捨てろッ」

 和田が叫んだ。

「七恵、投げろ」

 西村も叫んだ。

 しかし……固唾をもって見守っていた全員が、信じられない光景を目の当たりにした。

 法源を肩に担いでいた神室が、もろとも崖下に飛び込んだのだ。

 真っ逆さまにゆっくりと落ちてゆくと、もの凄い勢いの水柱が舞い上がった。

「なんだと! 何故一緒に飛び込んだ?」

 和田が叫び、わっと全員が崖に向かって走って行く。朝倉も西村も二井見、C班も続く。

「七恵~ッ」

 西村が叫び、崖下を腹ばいになって見下ろした。

 崖下には、激しく逆巻く波しぶきが間断なく轟いている。波同士がぶつかり、白波を立てている。岸に近づくにつれそれは巨大な壁になり、崖にぶち当たり、砕け散る。

 どこにも二人の姿はない。

 近くで待機していた海上保安庁の救護船が二隻、現場に急行する。

「七恵~ッ」

 西村の目に涙が光った。「死ぬなよ~ッ」

 どれくらいの時間が経過しただろうか?

 その波間から頭が一つ浮かんだのを朝倉は見逃さなかった。

「七恵だ」

 拡声器を掴んでいた和田が言う。

「神室、聞こえるか」

 朝倉が言う。

「聞こえていないようだ」

 和田が朝倉の視線の先を見つめる。

 波間から神室は両手を振ったように見える。

「無事か……」

 和田の安堵の声に反するように両手を振っていた神室は、次の瞬間波間に沈んだ。それた力尽きて沈んだのではなく、はっきりと自分の意志で潜ったのだった。

「アイツは何をやってんだっ」

 和田が喚いた。


 神室は法源を探していた。

 海面より下は不思議なくらいゆったりと海水が流れている。

 『法源さん何処? 法源さんを助け出さなきゃ……。スーパースーツ、重いわ……』

 裂け始めているとは言え、重いスーパースーツでは水中で足手まといに思った神室は、スーパースーツを半ば切り裂くようにして海中で脱ぎ捨てた。

 スローモーションを見ているように、ゆっくりと海中に溶け込んでいくスーパースーツ……。

 下着姿だけの姿になったが、息継ぎのため海面から顔を出すと、激しい海流に揉まれ、抵抗するまもなく上部の下着が流された。

「ああ、いやん……」

 一瞬、胸に手を当てたが、そんな事より神室にとっては、沈みゆく法源を探し出すのが先決だった。

『……確かこの辺……』

 息が続かない。波が逆巻く海面から顔を出し、呼吸を整えると再度潜る。

「神室、戻れ、戻れ!」

 和田のわめき声もきかずに何度となく顔を出し、何度となく潜った。

 救護船二隻がゆっくりと停船した。

「現場到着、捜索に当たる」

 何度目かの潜水を試みていたとき……両手を上に上げたまま、泡立つ海水の中、沈みゆく法源を発見した。

 動いていない。その重さに身を任せるまま、沈んでいる。

 突き出た両手を神室は掴んだ。そして強烈なキックで海上へと誘った。勢いで最後の下着が脱げ、全裸になった。しかし神室は無我夢中だった。

 揺れる水中で救護船の底が見える。

 重い……呼吸が苦しい……。

 神室は水中で法源を持ちかえると、全力を振り絞り、救護船めがけて空中に放り上げた。

 双眼鏡を当てながら海面を捜索していた海上保安庁職員全員、魂消た。波間がぶくぶくと泡立つと、いきなり黒い物体が、船めがけてとんできたからだ。

「うわあ」

 船員誰もが声を上げた。そしてその物体がかなりの勢いで船体に転がり、甲板が拉げ、反動で船体が激しく揺れた。

 転がったショックで法源は口から大量の海水を吐きだした。

「法源だっ! 海水を吐かせろっ」

 責任者が法源を見て指示する。法源の唇は真っ青でチアノーゼ状態だ。

 さらに逆巻く海面から神室が顔を出した。大きく息をしている。

「彼処に一人っ」

 ロープが括り付けられた浮き輪が数個、神室の方に投げ込まれた。

 激しい波に揉まれながら、浮き輪めがけて泳いできた神室を確認した職員が、マイクを持ち叫んだ。

「聞こえるか、さ、浮き輪に掴まれ、……よし、みんな引っ張れっ」

 無我夢中で飛んできた浮き輪にしがみついた神室だったが、直ぐに叫んだ。

「駄目ッ!」

 浮き輪から手を離し、そして水中に潜り込んだ。

「一体どういうことだ?」

「力尽きた?」

「いや、そのように見えないが」

 海面をのぞき込む船員達。

 暫くしてまたもや船員達は驚いた。

 いきなり全裸の女が水中から飛び出してきたからだ。そして揺れる甲板に飛び乗ったかと思うと、しゃがみ込んだ。

 見られまいと腕組みをし、全身から海水を滴らせながら神室は微笑んだ。

「バスローブか、毛布ありません?」

 船員は蹲っている全裸の女を見やりつつ、命令をした。

「誰か、このマーメイドに毛布を。それと温かい飲み物も」


 それから数日後、第六区の展望室で西村と神室、そして和田が日の当たるガラスに寄り添うように立って外を眺めていた。太陽は眩しいくらいに輝いている。

「朝倉先生の努力もあって、法源は快方に向かっているようだよ」

 西村の言葉に神室は微笑んだ。

「よかったわ」

 和田は神室を睨む。

「スーパースーツを脱ぎ捨てた罪は重いぞ」

「だって、脱がなきゃ、法源さんを助けられなかったもの」

 和田のぎらぎらした言い方に神室は口を尖らせた。

「馬鹿者っ! 法源の生き死にはどうでもいいんだ。それよりあのスーパースーツが敵国の手に陥ったら秘密が暴かれてしまう。これは国家秘密法に抵触する事態だ。お前の処分だけでは済まされない重大な罪だ。もっとも……」

 神室は和田を見た。

「海上保安庁の潜水士がくたくたになったスーパースーツを水深十メートルで発見したから、とりあえずお前は無罪放免とする」

 ふっと、安堵の溜息をした神室に、西村が憤慨した。

「七恵、何で法源を助けたんだ。あいつは君を殺そうとしたんだぜ」

 西村の言葉に神室は静かに言った。

「同じ仲間だから」

 西村は呆れた。

「仲間だって? あの犯罪者が?」

 神室は西村をじっと見つめた。

「犯罪者って? 殺人を犯したのは法源さんではないことが分かっているのよ」

 毅然とした神室の言い方に、西村はたじたじとなった。

「まあ、そりゃそうだけど、方々で騒ぎを起こしているし、一連の事件をもみ消そうとして国防院が躍起としているし……くどいようだけど君を殺そうとしたのは、あいつだよ」

「確かに殺されるかと思ったわ、でも何であれ……」

「何であれ……?」

 その場にいた全員が神室の言葉を待った。

 ガラス越しに青空を見つめた神室が呟く。

「仲間よ仲間」


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