一つ屋根の下
『ってかなんで、俺殺されるのよ??別になんもしてないじゃん!!』
『…一言で言えば不法入界じゃな』
『なんだよ、その不法入界って??』
納得いかない。
不法入界か、不動無我か知らんがなんで俺、いきなりKILL宣言されにゃならんのだ。
『良いか、フウガ。お前の世界にも不法入国というのがあるだろう??それと同じじゃ。正し、お前の考える不法入国とは訳が違う。不法入界は、別世界間を正しい手続きなしで渡る、大変重い罪なんじゃ』
『なんでそれが重い罪なんだよ!!』
『それはな、この世界も、お前のいた世界も一つの独立した世界なんじゃ。その独立した世界に、他の世界から干渉を受けることはあってはならないことなんじゃ』
『…なんとなく分かった。ただね、俺、一般人。俺、ただの男子学生。何もしないし、何も出来ない。分かる??帰ることができるなら今すぐ帰りたいよ!!』
本当そうだよ。
俺だってこんなところ早く出て行きたいさ!!
いきなり仮面野郎にチキンウイングアームロックくらわないで済むし。
隣の家のお姉さんの笑顔見たいし。
『いつぞやも言ったが、この世界から出る方法はない。それにお前の理屈は通用しない。お前が異世界人だと分かれば、有無も言わさず殺されてしまう!!』
『はは…なんだよそれ、この世界の怒りの沸点低すぎだろ…』
これは参った…。
一体どうすりゃ良いんだよ…。
『…お前異世界人だったのか!!』
『ギクッ!!』
その声は階段から聞こえてきた。
もちろん正体は…。
『ミカ、起きてたのか!!』
『あんだけ騒がしいと寝れるもんも寝れねえさ。…んで、今の話本当か??』
『…ああ。フウガは異世界人じゃ。ただ悪い奴じゃねえ。俺はそう思う』
『悪いか、悪くないかはどうでも良い…。ただ、こいつがいるせいで私たちまで迷惑が掛かるだろ!!』
『…そうじゃな』
その声は、喫茶店の、木造の建物を震わせるような大きな声だった。
…そうだよな。そりゃ怒るわな。
見ず知らずの人間のせいで迷惑が掛かるんだからな…。
ロードさんも反論できないし…。
『すいませんロードさん、ミカさん。俺、あの仮面野郎の所行ってきます。短い間でしたがありがとうございました!!』
俺のせいで二人を巻き込むわけにはいかないもんな…。
あの仮面野郎の所行って、謝ろう。事情を説明しよう。
精一杯。少しでも可能性があるなら、それに賭けよう。
『フウガ!!お前は何を言ってるんだ!!』
バチンっ!!
『…!?』
いきなりだった。
俺はロードさんに思いっきり平手打ちを食らっていた。
『お前は何にも分かっちゃいない。話し合いで済むはずがないんだ!!お前は100%殺されるんだぞ!!そんな所にわざわざ行かせるはずがないだろう!!』
『…はい』
俺はビックリした。
そして泣いた。
平手打ちの痛みよりも、ロードさんの優しさに感動した。
人間ってこんなにも暖かいいんだな…。
『…お取り込み中悪いけど、私の意見は聞かないのか??』
『ミカ!!お前には迷惑かけるかもしれんが、こいつは俺が面倒を見る!!良いな!!』
『当たり前だろ!!』
…えっ!?
ちょっと待って、さっきの流れで言えば『出て行け!!』って感じだったじゃん。
何この熱血親子。
嬉しいよ、嬉しいけど…なんか平手打ちくらったのが損したみたいじゃん…。
『おい、アルバイト!!』
『はい!!いや、フウガです…』
『お前は私たち親子が責任を持って、面倒見てやる!!心配するな!!』
『あざーっす!!』
かくして、俺はロード家に正式にお世話になることになったとさ。