何も知らない事が幸せだと思えた
『いらっしゃいませー!!』
100万ルドの笑顔でお迎え。
それが喫茶【ジョージ】の精神。
…なんだよ、喫茶ジョージって。間違いなくリーゼントなおっさんがいるイメージじゃねえか。
『おいフウガ、コーヒーとミックスサンド2番に運んでくれ』
『イエス、ボス』
ロードさんに無理矢理働かせれて3日が過ぎた。
最初はコーヒー代だけのつもりだったらしいが、事情を説明すると、暖かい布団が完備された部屋を提供してくれた。
見た目はアレだけどすっごい良い人。
そのお礼に俺は顔の筋肉が吊りそうになりながら、一生懸命笑顔を作っている。
…ってか、ロードさん笑ってないじゃん。
俺だけすっごい笑顔とかなんかおかしくね??もう激おこぷんぷん丸だよね。
『コーヒーとミックスサンドお待たせしましたー!!ニコっ!!』
『おいフウガ、会計頼む!!』
『イエス、ボス!!ニコっ!!』
この店はなかなか繁盛している。
それはコーヒーの美味さもあるが、昔ながらの喫茶店って感じで、誰からも親しまれているのが要因だろう。
老若男女、様々な世代が来店する。
皆、この店が好きなんだな…。
『よしフウガ。休憩にしよう』
『…ふう。疲れた。今日も大盛況だったね!!』
『なーに、これでも少ないほうじゃ』
『あっ…そうなんだ…』
おいおい、これで少ないとか冗談だろ。
軽く行列できてたぜ。
『そういえばさ、この店ってこんな忙しいのにロードさんしかいないの??』
『ああ…少し前までは娘が手伝ってくれていたんだがな…最近はなにやら忙しいみたいでな。わし一人で切り盛りしとる』
『…え!?ロードさん娘さんいるの!!??』
マジかよ。娘がいるとか。
このおっさんの遺伝子を受け継いだとか、生まれながらにバッドエンド確定じゃねえか!!
やっぱり悪魔みたいな顔してるのかな…。
『ちょうどお前と同じぐらいの歳かな。女房が早く亡くなってな。わしが一人で育ててきた自慢の娘じゃ』
『そうなんだ…奥さん死んじゃったんだ…』
『ああ、でも最後には笑っとったわい。娘もわしに似て立派に育ったしの』
『ロードさんに似たの??それって…いや、なんでもないです』
『あ!?何か言いたげじゃな!?』
『あ…いえ、何も…』
ついうっかり口を滑らすところだった…。
けど、やっぱり似てるんだ。
娘さん、強く生きろよ!!陰ながら応援してるぜ!!
なんて事を思ってると、カランコロンと入り口の鈴がなった。
『いらっしゃいませー!!サンコっ!!』
…!?
ニコっと言うつもりがついサンコっと言ってしまうぐらい、店に入ってきた女性は美人だった。
例えるなら隣の家のお姉さんと同じぐらいに美人。
(ちなに俺ランキングでは隣のお姉さんが宇宙で一番可愛い)
『…誰だこの豚野郎は??』
『…へ!?』
『おうミカ、帰ってきたか』
『ミカ…さん…??』
『ミカはわしの娘じゃよ』
ああ…なるほどね…
似たって、そっちね…。なるほどね…。
気づかなかった私は豚野郎です…