魔法って家宝なの
『ロードさんって、手品師だったんだね!!』
『は!?何を言っておる!!』
『え!?』
いやいや、なんで隠すのさ。
手品師ってことがバレたらダメな訳!?
ってか、種も仕掛けも分からなかったし。
『これは【appear】で出したんじゃ』
『あ、あぴあ~??』
『お前はそんなことも知らんのか!?良いか、アピアーはこの世界で使われる魔法のことじゃ』
『…嘘だ~。隣の家のお姉さんは【私、魔法使えます♪】って顔して…る!!たしかに、俺はお姉さんにより、恋という魔法にかかっていた!!』
『お前が何を言ってるのか分からんが、アピアーで出したコーヒーというのは、ロード家に代々伝わる伝統的な魔法じゃ』
おじさん何言ってるの??
その理屈で言えば俺の家は代々隣の家のお姉さん一家に恋をしているということになるじゃん…。
そんな馬鹿な話が…あった!!
そういえば親父は隣の家のお姉さんのおばさんのこと、美人だな~って、いつも言ってるもんな!!
しかも、お母さんには内緒だと釘を刺されている。
…この前、親父と喧嘩した時に、その事母さんにチクったけどね。
『簡単に説明すると、各家系には、子供に受け継がれる魔法があってだな、それがアピアーなんじゃ。勿論家系毎に特色が違っていて、わしの家系は代々、コーヒーを出すというのが受け継がれてきたアピアーなんじゃ』
『なるほどね…ってことは、隣の家のお姉さんは代々俺の一家を恋に落とすという魔法を使っているわけだな…。でもなんで??』
『…それは分からんが、アピアーについては理解できたか??』
『うん、ばっちり理解した。でも、おじさんのそのアピアーって意味あるの??コーヒーぐらい自分で作れば良いのに』
『まあ…そのコーヒーを飲んでみろ…』
『うん、じゃあ。いただきます』
…!?
なんだこれ!?
メチャクチャうまい!!
今まで飲んできたコーヒーとは比べ物にならない。
俺、コーヒーってブラックは飲めなかったけど、これは飲める。
『ロードさん、これメッチャ美味いよ!!』
『はは、そうか!!』
ロードさんは初めて笑った。
コーヒーを褒められて、嬉しかったのだろう。
『分かったか!?このコーヒーは代々、ロード家の家宝なんじゃ。それを守り続け、そして人々に提供する。それがわしの使命じゃ』
『…ん!?提供する??ロードさんって、なんの仕事してんの??』
『勿論、喫茶店の主人じゃ!!』
『…へえ~』
嘘だろおい、こんな悪魔みたいなおっさんが喫茶店の主人とか。
罰ゲームでも行きたくないよ。
…でもコーヒーは美味いんだよな。
『まあ、なんとなくアピアーのことについて分かったよ。でもこの世界のこと分かんないからさ、ちょっと他を回って調べてみるよ』
『そうか。お前が何者か分かんが、気をつけてな』
『うん!!ありがとう。じゃあね!!』
そう言って、駆け出そうとした。
すると、後ろから声がする。
『ちょっと待て、コーヒーのお代がまだなんだが』
『金取るのかよ!!…ったく、騙されたぜ。んで、いくらだよ』
『300ルドじゃ』
『はいよ~。じゃあ1000円からで』
『ん??なんだこの札は??この札じゃこの世界では使えないぞ』
『なんだってー!!…ということは…』
『食い逃げか??』
サングラスをかけたスキンへッド迫ってくる…。
こんなのちょっとしたトラウマじゃん!!
ドンドン距離が迫る…。
ああ…なんで俺こんなについてないんだよ…。
まさかサングラヘッド(略した)に殺されるなんて…。
『あの…痛くしないでね…』
『ニヤリ』
『キャー!!!』
その声はアンリテッドワールド全体に響いたそうな…。