そのに-小さな変化
鐘が鳴ります。キーンコーン
教室を出て、 ガラッ
階段を登って、 スタタタタタ
扉を開けます。バンッ
「よ。」「よ。」
私と涼は互いに手の平を見せ合う。
-あれから物好き、涼と屋上で会う度一言二言話していたらなんとなく気が合って
なんとなく仲が良くなった。
とは言っても涼は一個年下なので校舎が別。
会うのも話すのも屋上だけだ。
私がいつもの場所に寝転がって、隣に涼が座る。
それが最近の日常。
別にお互い友達がいないわけじゃないけど、これが1番楽だ。
まだ会って一ヶ月も経っていないのに、ずっと前から知っていたように感じる。
こんなこと思ってるのは私だけかな。
ふと 涼を見てみた。「・・ん?」
涼は私の視線に気付いてそれまで覗いていたカメラを下ろした。
・・こんなに表情が変わらない人は見たことがない。
涼は会った時もそうだったけど、表情という表情がなかった。
私は涼がほんの少し微笑んだとこぐらいしか見た覚えがない。
表情筋がないのかな?
「なんだ?」
「別にー、なんでもな・・」
い、
と言おうとした瞬間、強い風が吹いた。
私一応女なのでもちろんスカートを穿いている。
それが無防備にも大きくめくれあがった。
ここで普通の女の子なら悲鳴の一つもあげるだろう。
しかし、私はスパッツという強い味方がいる
そして何より乙女心が非常に足りなかったので特に何もせず、
元に戻るまで反射的に見ていただけだった。
私は涼に視線を戻し、なんでもないよ、と言い直そうとしたが
「・・・。」
唖然としてしまった。
涼の、ポーカーフェイスは崩れてなかった
だけど目が私の足を見ていて、そして明らかに・・
「涼・・顔、赤い・・?」
そういうと、涼は はっとして
「そんなわけないよ」
と、まるわかりの嘘をついた。
私も最初はぽかんとしていたが、次第に色々込み上げてきて
「・・ぷっ・・ぁははははははっ。あはっあはははは。」
吹き出してからはもう笑いが止まらなかった。
表情を変えずに赤面するなんて普通できたもんじゃない。
涼が一生懸命なんか言っていたみたいだったけど私にはもはや聞こえてなかった。
でもおかしいな、そんな面白いと思ったっけ?
笑いが全く止まらない。
涼はひーひー言う私に、ごまかそうとしてだろうか、背中を向けて再びカメラを手にしていた。
-実はこの時私の感情が、特別なものへと変わっていたのは、自分を含め誰も気付くことはなかった。
というかそれどころじゃなかった。
腹筋が痛かった。
-つづくっ-