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限界課金厨、推しのいる世界で「石」がない!  作者: 沼口ちるの


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第23話 泥濘の防波堤

地下水道の出口――そこは、王都の華やかな表通りではなく、廃液が流れ出す「裏庭」の湿地帯だった。 だが、そこは今、地獄と化していた。


「……ちょうどいい。王都の防衛イベントが発生中か」


俺はリヒターから剥ぎ取った『金ランク冒険者のギルド・クレスト』を高く掲げ、混乱する正規軍の若手兵士たちに怒鳴り散らした。レベル1の俺には、リヒターの「名声」というハッキングツールこそが最大の武器だ。


「聞こえるか! 冒険者リヒターの代理だ! 左翼の攻撃を、そのまま敵の後続に叩き落とせ!」


「リ、リヒターさんのギルド印!? は、はい! 了解しました!」


混乱する兵士たちは、その紋章を見ただけで俺を「英雄の使い」だと誤認する。俺たちはその喧騒の影で、自分たちに最も都合のいい「安地(安全地帯)」を作り上げた。


「セレスティア、攻撃を。……救済の光ではなく、破滅の光を導くんだ」 「承知いたしました。……迷える魔物たちに、永劫の安らぎを」


「セシル、五秒後に崩落するあの崖の下へ滑り込め。……あそこだけが、唯一のアンチ(安全地帯)だ」 「……了解。貴殿の眼を信じる」


地響きと共に、魔物の第一陣が衝突した。 王都の正規軍が悲鳴を上げ、炎が上がる。その喧騒の影、誰にも知られない場所で、俺たちの「効率的な虐殺レベリング」が始まった。


「……マリアンヌ。行け。リヒターの代わりに、お前が『王都の盾』になってやれ」


「――了解。……『不変の誓い』、リミッターを緊急解除」


マリアンヌの巨大な鉄の右腕が、地圧を無視して一閃された。 衝撃波だけで数十体のオークが肉片へと変わり、その血が、俺のレベル1の頬を熱く濡らした。


「ふふ……。英雄の名声を盗み、兵士を盾にして、自分たちは最も効率よく獲物を狩る。……マスター、あなたは本当に、清々しいほどの外道だ」


ファウストが、戦場に散らばる「素材」と「魂」をフラスコに回収しながら喉を鳴らす。 英雄なんていらない。名誉なんて、ヘドロに沈めてやればいい。


「俺はこの最弱の体で、この世界クソゲーのシナリオを完膚なきまでにブッ壊してやる」


俺は、鼻から流れる血を拭い、混乱する王都の灯りを冷たく見据えた。

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