第22話 レベル1の戦術(ハメ)
リヒターの大剣から放たれる凄まじい衝撃波が、地下の支柱を粉砕する。 「……なぜだ! なぜ私の剣が掠りもしない!」 リヒターが焦燥に顔を歪める。
マリアンヌの出力は、あの「初期装備」の強制連結により、限定的ながらも『UR本来の殺傷能力』を取り戻していた。
「……マスター。対象の戦闘パターン、解析完了。……次の一撃は、三秒後の『真空斬』です」
「分かってる。セシル、三歩下がって防御の構え。セレスティア、セシルの背後に『重力増幅』を。――リヒター、お前のスキルは空中で発生が遅れる『死に仕様(弱点)』なんだよ」
「なに……っ!?」
リヒターが跳躍し、大剣を振り下ろす。本来なら回避不能の広範囲攻撃。 だが、セレスティアの重力魔法により、リヒターの滞空時間がわずか「0.5秒」だけ伸びた。そのコンマ数秒のズレが、完璧だったはずのコンボを致命的な「隙」へと変える。
「そこだ、マリアンヌ! 鉄の右腕を叩き込め!」
「――了解。……排除します」
マリアンヌの無骨な鋼の拳が、空中で身動きの取れないリヒターの腹部に直撃した。 ドォォォォォン!!! 肉を打つ音とは思えない轟音が響く。銀色の甲冑がひしゃげ、リヒターは壁まで吹き飛ばされ、瓦礫の山に埋もれた。
「……ぐ、はっ……。バカな……。レベル1の……ただの指揮官が……なぜ……」
リヒターが血を吐きながら立ち上がろうとする。だが、その足元にはすでにファウストが設置した「魔力枯渇の罠」が張り巡らされていた。
「ひひ……。経験値を吸い取られる気分はどうですか? 英雄候補さん。……あなたの『強さ』も、私にかかれば良質な素材に過ぎない」
「やめろ、ファウスト。……リヒター、とどめは刺さない。お前にはまだ『利用価値』があるからな」
俺はフラつく足で、動けなくなったリヒターの前に立った。 鼻血は止まらず、視界もぼやけている。だが、その場にいる誰よりも、俺はこの戦場の「支配者」だった。
「リヒター。お前のステータスは高い。だが、戦い方が『綺麗』すぎるんだよ。……俺たちは、泥水を啜って、バグを突いて、仲間の命をチップにしてここまで来た。……お前のプライドじゃ、俺たちの執念には勝てない」
俺はマリアンヌの冷たい鉄の右腕に手を置いた。
「マリアンヌ。こいつから、使える装備とポーションを全部剥ぎ取れ。……それから、王都の検問を無効化する『金ランク冒険者の印』もな」
「……了解、マスター。……略奪を開始します」
無機質に告げるマリアンヌ。 かつての「正義の味方」リヒターが、ゴミ捨て場の住人たちに身ぐるみを剥がされるという、あまりにも無惨で泥臭い光景。
「……さあ、リベンジは終わりだ。……次は、俺たちをゴミのように捨てたあの『地上』へ、本物の地獄を教えに行ってやる」
俺は、最強のユニットたちに守られながら、初めて地下の闇から地上へ向けて、不敵な笑みを浮かべた。




