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限界課金厨、推しのいる世界で「石」がない!  作者: 沼口ちるの


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第17話 仕様(バグ)の強制執行

「開けろと言っている! 抵抗すれば賊とみなして掃討するぞ!」


厚い鉄のハッチの向こうで、守備隊の重装歩兵たちが盾を鳴らす。 絶体絶命だ。マリアンヌはコア不在により『5パーセント』の出力しか出せず、稼働限界まではあと数分。セシルやセレスティアも、先ほどの修復作業で魔力は底を突いている。


「……マスター。扉の破壊まで、残り10秒。……私の『自爆』シークエンスを承認してください。これ以外の解決策は、私のデータには存在しません」


マリアンヌが淡々と「死の最適解」を繰り返す。彼女にとって、主を守って消えることは、運営が設定した『チュートリアルを終わらせるための儀式』なのだ。


「……ふざけんな。プログラム通りに死ぬのが『正解』だって? ……そんなの、バッドエンドしかねぇクソゲーの言い分だろ」


俺は地面に転がっていたファウストの実験の残りカス――『不安定な魔力回路の破片』を拾い上げ、マリアンヌの剥き出しの排熱ポートへ無理やりねじ込んだ。


「あ、ぐ……、マスター……。異物の混入により魔力圧が暴走。このままでは……」


「セシル! 彼女の排熱を逃がさず、冷気で外側からガチガチに固めろ! セレスティア、彼女の精神回路にバリアを張り続けろ! 自爆の衝撃を、一方向ベクトルに閉じ込めるんだ!」


「正気ですか、マスター!? 爆発のエネルギーを内側に閉じ込めれば、彼女は内側から粉々に弾け飛びますよ!」 ファウストが絶叫する。


「弾け飛ぶ前に、ベクトルを固定するんだよ! ……いいか、これは攻撃スキルじゃねぇ。ただの『推進力』だ!」


俺が狙っているのは、かつてのゲームで一部の廃人が発見した「移動バグ」だ。 自爆の瞬間にノックバック耐性と地形判定を無理やりぶつけることで、座標を強制的にずらす――通称『爆破高速移動ボム・ダッシュ』。


ドォォォォォン!!!


ハッチが守備隊の手によってこじ開けられた。 「賊を発見! ――な、なんだ、あの光は!?」


兵士たちが目にしたのは、全身から凍てつく蒸気とどす黒い火花を噴き出し、限界まで膨張したエネルギーを抱えたマリアンヌの姿だった。


「……自爆、出力……限界突破。……座標、固定、不能……!」


「マリアンヌ! 爆発を全方位に広げるな! セシルの氷で『銃身』を作れ! 出口は後ろ一点だ! ――物理演算システムをバグらせろ!!」


俺はマリアンヌの腰を掴み、その背に縋り付いた。ルミナとファウストも必死に俺に掴まる。


「……あ、あああああああッ!!!」


爆発的な衝撃が、シェルターの中を駆け抜けた。 本来なら周囲を焼き尽くすはずの炎が、無理やり後方へと押し出され、その反作用で俺たちは弾丸のように前方へと撃ち出された。


「……が、はっ……!」


風圧で肺が潰れそうになり、背後ではシェルターが衝撃で半壊する音が響く。守備隊の驚愕の表情が、一瞬で後ろへ飛び去った。


「……マスター……。……やはり、この運用は……想定外……です……」


「……当たり前だ! 運営の想定通りになんて、死なせてたまるかッ!」


俺たちは、王都の灯りが届かない、さらに深い『地下水道』の入り口へと、叩きつけられるように墜落していった。 泥水の中に突っ込み、全身を激痛が走る。だが、生きている。


「……はは、……。脱出、成功だ。……ざまぁみろ、理不尽な設定が……」


俺は泥水を吐き出し、過負荷で沈黙したマリアンヌを、闇の中で強く抱きしめた。 タイマーはまだ止まっていない。だが、俺たちは「死ぬはずのイベント」を自力でスキップしてやったのだ。

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