煌めきに触れて その2
少女はイロハに手を引かれて、状況も飲み込めず呆然としている隙にイロハが立ち止まって、振り返る。
「あそこは、何ですか?」
「……何って、ゲーセンのゲーム機が並んでるね。ここの店長の趣味なんじゃないかな。やったことないの?」
「ないですね。いつも、まっすぐ行って帰っているので、あんまり買い物とかも得意ではなくて…」
「なら、適当に選んで遊べば?」
少女が適当に指を差した先には、ダンスを採点するゲームがあった。
「やり方は教えるから、後は自分でやりなよ」
これで離れられるだろう、と少女は考えていると、イロハは聞いていない様子で周囲に視線を向けていた。友人同士で楽しそうに遊んでいる様子を見て、先ほどとは違う高揚感で満たされていた。
他にアーケードゲームで遊んでいる様子を見て、イロハは思いついたことを口にした。
「一緒に遊びませんか?」
「……は?」
少女が戸惑っているなかで、イロハはアーケードゲームに書かれた文字を指差す。
「ほら、二人プレイって書いてあるじゃないですか。お金は私が出すので」
「一回なら、いいけど…」
二人はリズムに乗ってゲームの画面を見ながら踊る。適当に選んだ曲のリズム感に戸惑ったり、慌てて足を戻したりと、ちらちらとお互いを確認しながら自然と笑い合う。
「で、次はどうするの?」
「次は…あれにしましょう!」
その先にあったのはパンチングマシーンだった。
「へえ、意外と攻め気…」
早速、パンチングマシーンの正面にイロハは立つ。
イロハは瞳を燃え上がらせて、闘魂を込めた拳で──
「ていっ!」
パンチングマシーンは微動だにしなかった。
「ぷっ…ふふっ、なにそれ。そのへなちょこパンチ」
「も、もう一度…えいっ!」
イロハは全身の力を込めて、本人的には全てを拳に乗せたつもりで前のめりに繰り出した。
結果は、目を閉じたせいで測定するパッドに掠る形で当たった。……結果は、言うまでもない。
「あははっ、ちゃんと見てて。こうやんの、そんな力まなくても簡単だよ」
少女の放った拳はしっかりとハッドにめり込み、イロハを超える数値を叩き出した。
「すごい…!」
「いや、あんたが力を込められていないだけだよ」
そうして、二人は様々なゲームを遊び回った。
最後に、記念として写真を撮ることにした。
「どんな感じで撮る?」
「うーん、いっぱい撮りたいですけど、あんまり無駄遣いするのも良くないですよね…」
そう言って、イロハは自身を少女の身体と密着させた。
「……ちょっと?」
イロハの息遣いや体温が伝わり、少女の頬が紅くなる。聞いていないのか、ぎゅっ、ぎゅっとスペースを縮めてくる。
「あっ、もうすぐですよ。ほら、ポーズっ!」
大人しく少女はポーズを取って写真を撮ると、暫く無言のまま俯いた。
「へえ、デコレーションできるんですね。どういうのがいいかな。ハートとか、可愛いですよね! あとは、何がいいかな…」
イロハが名前を入力できることに気づいて、少女に振り返る。
「そう言えば、名前を聞いてませんでしたね。今日は楽しかったので、また会えたらいいですね…。私はイロハ、治療院で暮らしているのでいつでも遊びにください」
「私は…シェイラ」
少女が正気に戻った頃には、写真は現像され、笑顔のイロハに渡された。
「シェイラちゃん、また会いましょう!」
そう言って、イロハは去っていく。
その写真は画面いっぱいにピンク色のハートがデコレーションされており、実物よりも誇張されたまつ毛や目のハイライトがまるで幻想のように柔らかい光のなかで包まれている。




