幼馴染
劇場から出て三人で話しながら暫く待つと、カジュアルな服に着替えサングラスと帽子を被ったアリアが出てきた。
「アナタたちは何か食べたいものはある? ないならファミレスにするけど」
「オレは何でもいいぜ」
「それが一番困るってよく言われるはずよ。ま、ワタシは好きなとこに連れてくけど」
早速、ファミレスへと歩いていくとテッドはヒスイの様子を見て話しかけた。
「何か言いたそうだな」
「いや、そういうわけじゃない。ただファミレスという言葉が出るとは思わなくて…」
少し、いや高いレストランだったらどうしようかと、ヒスイは悩んでいた。払えないわけではないが、普段慣れない場所やエチケットが必要な場所へ連れて行かれるのだろうかと。
「ソレって、家に帰れば勝手に食事が用意されてるってこと? そんなわけないじゃない。今回とか、多少なりとも時間に誤差はあるものよ。そんなときは適当な店で食べてから帰るの。いちいち用意させるほど、面倒をかけたくないからね」
「確かにいきなり用意するのは……いや、そっちじゃなくて。アリアみたいな人でもファミレスに行くんだと思って。ほら、もっと貴位の高い店に行くのかと身構えてしまって…」
「え? 食べに行かなくもないけど、ワタシは美食家ってワケでもないし。そういう店は、テッドなら分かる?」
「多少ならな。でも、ほとんどお前と同じものを食べてるんだから知見に差はないと思うぞ」
「そうよね……あっ、もしかして良い店を期待してた?」
「いや、…ファミレスにしてほしい」
*
そんな流れもあって、四人は特に障りもなくファミレスの席に着いた。
「もうメニューは決めたか?」
ヒスイは頷いてメニューをレックへと渡した。
手持ち無沙汰になり、丁度向かいに座るアリアとテッドを見るとアリアがメニューを持って悩んでいた。
「ワタシはこれにしようと思ってるんだけど、テッドは?」
「ふむ、それなら俺はこれにしよう」
「いいわね」
二人で話し合って分け合うメニューを決めていた。
「仲が良いんだな」
ヒスイがそう口にすると、二人が同時に顔を上げてヒスイを見つめた。
「そうね、長い付き合い…というか長く離れたコトなんてあったかしら?」
「ないと思うな。第一、同じ屋敷で暮らしてたら嫌でも顔を合わせるだろ」
「ふふっ、アンタが泣きべそかいて帰ってきたときも隠れる場所がなくてワタシに慰められてたものね」
「随分と昔のことを……はぁ、それを言うならお前は昔から“お嬢様”って呼ばれてたな。ふっ、『お嬢様、いかがいたしましたか?』」
「なによ、お坊ちゃん。『ワタクシめにご用事がおあり?』」
にやにやと笑いつつ、互いに腹を黒く染めていた。
「こほん……やっぱりその感じだと、ワタシたちって主従関係にでも見えてるのかしら?」
「まあ、確かに…違うのか?」
「違うわ。どちらかといえば、ワタシのママがテッドの家で勤めてるの。だから、テッドを従者だなんてデマもいいところなのよね。ワタシはテッドの家の好意で支援してもらったのよ。少し調べれば分かることなのに」
「人ってものは分かりやすい標識を探すものさ。……とはいえ、俺の両親も大概だな。実の子どもよりもアリアを可愛がるなんて……お陰で俺はアリアの母親に面倒を見てもらって、実は取り替えっ子でしたと言われても驚かないな」
「同じ家にいるから家族でしょ。別に、テッドのお父様もお母様もアンタを蔑ろにはしてないんだから。ま、ワタシの方が愛されてるだろうとは思うけど」
「俺もそれは否定しないけどさ。とっ、俺たちの話ばかりになったな。そろそろ食事が来るし、続きは食べ終わったあとにしよう」
*
四人で食べ終わったあと、休憩も兼ねてヒスイとレックは思い出話をした。
「守護者の弟子か、思ったよりも大物だったな」
「レック、見てないの? 新聞記事に載ってたじゃない。“朝刊のヒーロー”って」
「ゴホッ、こほっ…!」
忘れようとしていた言葉に、ヒスイは飲んでいた水でむせてしまった。レックが心配そうに背中をさする。
「あ、そうそう忘れかけるとこだった。ワタシ、アンタに頼みに来たのよ」
「な、なにを?」
なんとか呼吸を落ち着かせて、アリアの言葉に返事する。
「今回の演奏のテーマは“勇者”だから、当事者であるフィルモニア様と話す機会を作ってくれない? ……あと、せっかく来てくださったのに謝罪しないと」




