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境界:ジェネラルブラッド  作者: 徘徊猫
希望を残した最後の都市

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11/34

全てを赦し、認める者

 「ふふっ、イロハちゃん。うちは君に自己救済を選択させてみせるよ」

 セツナは郊外にある工場地帯へと足を踏み入れていた。周囲を確認すれば、流れる排水の音や機械が動き続ける音が聞こえる。


 そこにはもう一台の車が止まっていた。

 既にそこには誰もいないが、セツナには分かっていた。そこにいた人物は既に工場の中に消えていると。

 「躊躇いがないねぇ、やっぱり場数が多いからかな」

 少しくらい抵抗してくれてた方が面白かったのに、と思いながらセツナは工場を進んでいく。それまでに、おそらく自社ブランドのポスターが貼ってある。『清浄水ーMaximumー』


 そして突き当りまで来ると、そこには他と比べて飾り付けられた部屋に行き着いた。中からは声にならないうめき声が聞こえる。

 あちゃーと、セツナは思いながら、その部屋の扉を開けた。


 そこには一人の幼い女の子が立っていた。

 その身体は血で濡れていて、きょとんとした表情で入ってきたセツナを見上げる。

 「随分と早いね…」

 「逆に、君が早すぎたんだよ。レックとかいう子、本当にお人好しだね。ま、お陰でこっちでは面白いものが見れたからいいけど」

 血の匂いが漂う空間で、世間話の感覚で二人は語り合う。

 「ぅっうううぅっ」

 「攫われた子はどうだった?」

 「面白い子だったよ。気になるの?」

 「ううん、元気であればいいから」

 目の前で大人が頭を抱えて呻いていても。


 セツナが目の前の女の子の様子をよく見ると、下腹部あたりから血が流れた跡がある。火薬の匂いと合わせると、どうやら撃たれたらしい。

 その血溜まりには数人の男たちがまるで湖を求めて飢えた獣のように群がって倒れている。

 けれど、目の前の少女はしばらく観察していたセツナに小首を傾げた。


 「……やっぱり、壊れちゃった? はぁ、だから上手いこと調整してたのに」

 「まだ“生きてる”よ。だから、大丈夫。私が側で支えるから」

 幼い少女に屈託はない。ただ純粋に彼を慈しむ目を向けた。彼女の差し出す手は小さく、角ばっていない柔らかな手だ。


 「ほら、君だって“人の為に”聖血を集めたんだよね。君は“悪い子”じゃないから。それで多くの“犠牲”が出てしまったことは過ちだけれど、きっと乗り越えられるよ。だって、それが君の信じたことなんだから。君が選んだ君の選択は“間違ってない”よね」

 ただ人を慈しみ、否定せず、優しく包み込む。

 暴れても離さない。だって、その先は暗闇だから。

 「やめろおぉぉぉ! もうやめてくれぇぇっ、俺はそんな人間じゃない。俺が悪かったっ、だから解放してくれ、嫌だっ」

 「あっ…」

 けれど、その身体は強い力に押されれば簡単に倒れる。そのことに男は一度正気に戻るが、その視線に気づいて慈愛に満ちた笑みを返す。

 それと同時に悪寒が走り、男はますます縮こまる。


 「へぇ、結局このおじさんもやっぱりつまらない人だったね。悪役にすらなりきれないだなんて」

 「そんなことない。確かに彼は自分のためだったり、正義感だったりに揺れてはいたけど、それは彼自身が自分を救おうとしたからだよ」

 まるで赤子のように泣きつかれた男は、そのまま気絶するように倒れた。


 「それで、次はどうするの?」

 「それは──」

 セツナは愉快そうに笑みを見せる。


 「君、治癒者フィルモニアの帰還を世界に広めるの!」

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