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メスガキ系幼馴染をわからせるのは諦めて普通の青春送ります……おや!? 幼馴染のようすが……!  作者: 野谷 海


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番外編 図書委員の放課後『ミステリー』





 これは――俺と白峰さんが毎週月曜日の放課後、図書委員会の仕事を終えてから、教室で読書をするようになってからの記憶。


 彼女が1週間の中で一番楽しみな時間だと言ってくれた――俺にとっても特別で、誰にも渡したくないと思っていた非凡な放課後(ゴールデンタイム)の物語。



 ***



 俺は今日、白峰さんが前に通っていた学校のクラスメイトから受けた仕打ちで、好きだった本を嫌いになってしまったことを聞いた。


 少しでも彼女の為になればと、俺は2人きりの教室でミステリー小説を音読していた。

 

「――じゃ、今日はキリがいいしここまでにしとくか」


 隣に視線を向けると、白峰さんは眉をひそめながら考え込んでいるようだった。


「すっごく不思議な事件です……」


「確かに俺も驚いた。まさか死体が電柱にぶら下がってるなんて、現実で見たらホラーだよな」


「はい……一生のトラウマものです……夜木君は犯人さんがどんな目的でこんなことをしたと思いますか?」


「うーん、そうだな……うっかり殺しちゃったけど、可哀想だからなるべく早く見つけて欲しかったとか?」


「とっても素敵な理由で、夜木君らしいです……」


「じゃあ白峰さんはどう思うの?」


「そうですね……私は、この人は自ら命を落としたんじゃないかって思いました」


「自殺ってこと? でもそれじゃミステリーにならなくないか?」


「わ、私、どんなミステリー小説を読んでても、最初から誰かを疑ってかかりたくないんです……じ、事故の可能性もありますし……」


「ハハ……白峰さんらしいな。じゃあなんで白峰さんはミステリーが好きなの?」


「えーっと、そうですねぇ……改めて聞かれると悩んでしまいますけど……あえて言うなら、作者の方と会話をしているような、そんな気がするからでしょうか……?」


「どういうこと?」


「作者の方が蒔いた伏線や、トリックとかミスリードなんかが出てきた時、まるで『どうだ? この謎が解けるか?』と、言われているような気がして、友達のいない私には、その挑戦がすごく嬉しかったんです……本の中でなら、たくさんの人と会話が出来ましたから……」


「白峰さんって慣れてくると案外お喋りだもんな?」


「そ、そうなんですか……? 知りませんでした……」


 恥ずかしそうに縮こまる白峰さん。


「本と会話なんて俺は考えたことなかったけど、なんかそれって凄いことだよな。だって大昔の人とも会話ができるってことだし」


「そ、そうなんです……! 100年以上も前に書かれたミステリーを読んだ時なんかは、鳥肌が止まりませんでした……!」


「なんか白峰さんのおかげで俺の中の読書の概念変わったわ。ありがとな!」


「こ、こちらこそありがとうございます……私なんかの為にお時間を割いて頂いて申し訳ないです……」


「全然、俺がやりたくてやってることだし」


「夜木君は……やっぱり優しいです……」


「こんなの普通だよ」


「私……一度本を嫌いになって、良かったかもしれません……」


「え――」


 この時の彼女のミステリアスな表情に見惚れていたのもあったけど、この言葉の真意を、聞き返すことは俺にはできなかった。


 

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