番外編 転校生との帰り道(持田Side)
奏向に焼肉を奢ってもらった帰り道、俺は前から気になっていたことを、いい機会だから白峰さんに聞いてみた。
「白峰さんって、やっぱ奏向のこと好きなの?」
「えっ……!?」
なんで分かったんですか!? みたいな顔してたけど、そんなの気付かない方が馬鹿だって。
そんな鈍感野郎、奏向くらいだよ。
「あ、言いたくなかったら無理しなくていいから!」
「ち、違うんです……まさか1日に2度も恋バナをすることになるとは思っていなくて、少し驚いちゃいました……」
「誰と恋バナしたの?」
「遥香ちゃんです……」
「そっか。なんとなく察したわ……」
「え……こ、これだけで話した内容が分かっちゃうなんて、もしかして持田君は超能力者さんですか!?」
「そうだよ〜。だから今白峰さんがどんな下着つけてるかも俺の透視能力で丸見え〜!」
「キャッ……!!」
白峰さんは顔を真っ赤にさせると、慌てて大事な部分を手で隠した。ホント天然だわこの人。
「じょ、冗談だから……ここまで本気で驚いてくれると逆にこっちが焦るんだな……」
「え、そうだったんですか……? 今日は持田君までイジワルです……」
「でもさぁ、お互い苦労するよな……」
「あ、あの……それって持田君も、夜木君のことが、好きってことですか……?」
「好きだよ」
「やっぱり……」
「この好きは友達としてだけど」
「へ……?」
白峰さんはポカンと口を開けていた。
この人は俺と境遇が似てるようで、全然違う。俺なんかよりも、ずっと成功する可能性を秘めてる。羨ましいよまったく。
「白峰さん、いっそ俺らで付き合っちゃう?」
「な、何言ってるんですか……!?」
「ホント何言ってるんだろうな。もちろん冗談だから……マジごめん。なんか俺、今日浮ついてるわ。情けねぇ……」
珍しく感傷に浸っちまう。
俺は今日、優勝までしたっていうのに、この晴れない心はなんなんだろうな。
「持田君は、凄い人です……今日のバスケットもすっごくかっこよかったですし、いつも私に優しくしてくれて、気にかけてくれて……だから、その、何に落ち込んでいるのかは分かりませんけど、元気出して下さい……! そんなのいつもの持田君らしくありません……!」
俺らしく……か。
この人の裏表のなさは、不思議だな。
「ありがとう。白峰さんのおかげでなんかめっちゃ元気出たわ。今からフルマラソンでも走れそう!」
「ほ、本当ですか……!?」
「モチ、お礼にアイスでも奢るよ」
「じゃ、じゃあ私も持田君にアイス奢ります……!」
「ハハハ……それだと意味ないじゃん!」
「で、でも……」
申し訳なさそうに指を絡める白峰さん。
「じゃあ次の全国大会で優勝したら、その時は俺にアイス奢ってよ」
「わ、わかりました……!」




