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メスガキ系幼馴染をわからせるのは諦めて普通の青春送ります……おや!? 幼馴染のようすが……!  作者: 野谷 海


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第18話 幼馴染と修羅場すぎる




 

「……ヤベっ、寝ちまってた。ごめん白峰さん! ってあれ……」


 目を覚まし辺りを見渡すも、さっきまで隣にいた筈の白峰さんの姿がなかった。


「怒って帰っちまったかな……」


 肩を落とすと、俺の隣にはペットボトルの水と置き手紙が残されていた。


『熱中症になったら大変なので、起きたらお水飲んで下さいね? 用事があるので、お先に失礼します。今日はとっても楽しかったです。P.S.今度は夜木君から誘ってくれると嬉しいです』


「やっちまった……なんで寝ちまったんだよ俺のバカっ!」


 俺はすぐに白峰さんへ謝罪と近い内に必ず埋め合わせをするという旨のメールを送った。しばらく返信を待ってみたけど既読にもならず、俺はとぼとぼと帰路についた。




 帰宅したはいいが、遥香が寝ている間に何も言わず出かけていたから、部屋に入るのが憂鬱だった。


 そーっと扉を開けてみると、残念ながら遥香は既に目覚めていた。


 俺の姿を確認するなり無言で床を指差し「ここに正座しろ」とでも言いたげな表情を浮かべている。


 観念した俺は、黙ってそれに従った。遥香はわざとらしくコホンと咳払いを入れ、問う。


「あたしが寝ちゃった隙にどこ行ってたのか、20字以内で簡潔に答えて貰っていいですか?」


「こ、公園へ散歩に行っていました……」


「へぇ……誰と?」


「ひ、ひとりですよ……?」


「嘘じゃない?」


「も、もちろん……」


「その反応は絶対嘘だ。ちょっと匂い嗅がせて」


 遥香は四つん這いになりクンクンと鼻を近づける。


「おい、お前は犬か!?」


 慌てて距離をとるも、余計に怪しまれてしまった。


「なんで逃げるの? やましいことがないなら匂い嗅いでも大丈夫だよね?」


「あ、汗臭いかもしんねーし……」


「あたし、奏向の汗ならシャワーで浴びても平気だけど?」


「気持ち悪いこと言うんじゃねーよ!」


 平然とド変態発言を繰り出した遥香は、すぐ何かに気付いたように目を細めた。


「え、てか待って……奏向ちょっとこっち来て」


「嫌だって!」


「匂い嗅ぐんじゃないから! 早くそこでお座り!」


 犬の躾をするように声を張る幼馴染。


「なんだよ……」


 やむなくその場で腰掛けると、遥香は俺のTシャツの襟元をつまみ、ため息を溢す。


「ここ、リップついてる」


「は!? 誰の!?」


 襟を引っ張って確認すると、確かに一部がピンク色に染まっていた。


「あたしに聞かないでよ! 奏向がさっきまで会ってた人のに決まってるでしょ!?」


 これは一体どういうことだ?

 

 白峰さんとは公園で読書をしていただけだし、ましてや触れ合うような距離に近付いた覚えもない。


 まさか、俺が寝ている間に、彼女から……?


 ――いやそんな訳あるか。


 でもこれはどう説明する? 遥香になんて言い訳すればいいんだ……?


 あ、そうだ、こういう時はアレだ。


「き、記憶に、ございません……」

 

「殺すぞ?」


 ――目が本気(マジ)だった。

 


 俺は再度正座を求められ、足が痺れだす頃合いまで無言の時間が続いていた。ベッドに腰掛け足を組み、俺を見下ろしていた遥香は、その重い口をやっと開く。

 

「あたしが何に怒ってるか、わかってる?」


「俺が勝手にどっか行ったから……」


「違うし……まぁ、それもあるけど」


「どっちだよ」


「だ、か、ら! 奏向がどこで誰と会おうと、まだあたしは文句言える立場じゃないんだし、言ってくれれば普通に送り出したのに、それをわざわざ嘘ついたり、こそこそ出て行っちゃったことに怒ってるの! 奏向にはあたしってそんなに心の狭い女に見えとーと!?」


「うん、見えてた」


「あーね、やっぱ殺す」


 一切の感情を消した表情で立ち上がると、テーブルの上にあった、スイカを食べる時に使ったフォークをおもむろに手に取る遥香。


「冗談ですっ!!」


「じゃあ誰と会ってたか、教えて」


「し、白峰さんです……」


 遥香は深く息を吐くと、フォークを戻した。


「ま、知ってたけど……正直に白状したし許してあげる。でも今度からはちゃんと言ってよね? 隠される方が傷付くんだから……」


 その儚げな表情に、俺は胸が締め付けられる思いだった。


「悪かった……今度からは、ちゃんと言う」


 あわやメスガキがヤンデレ化するところであった。そんな化物、いよいよ手が付けられん。


「2人で、何してたの……?」


「公園で読書を……」


「ふーん……」


「これは本当だぞ!?」


「別に疑ってないよ……今日会って、夜空のこと、やっぱ好きだって思った……?」


「ま、まぁな……」


「でもさぁ、奏向ってドMだから、夜空よりあたしの方が色んな面で合ってると思うんだけどなぁ〜?」


 一見普段通りのテンションに戻ったようにも思えるが、無理して明るく振舞っているのが、なんとなく伝わる。


「知ったように言うなよ。俺は断じてドMではない」


「あたし知ってるよ〜? 奏向は意気地なしだもんねぇ〜? このヘタレ〜」


 少し耐性がついてきた俺には、流し目を送る遥香の魂胆がおおむねわかってしまった。


「そんな安っすい挑発には絶対乗らん」


「ちぇっ、つまんないのー」



 なんとかご機嫌が戻った様子の遥香は漫画を読み始め、俺は夕方に放送されていたテレビアニメを無心で眺めていた。


 すると、テーブルの上に置いてあった俺のスマホからメッセージの通知音がピロンと鳴る。


 俺よりも素早く反応した幼馴染は、スマホをまじまじと覗き込んだ。


「白峰夜空さんからメッセージきてますけど~?」


 まるで汚いモノでも触るかのようにスマホをつまみ、こちらへ向ける。

 

 そのギットリとしたジト目が、俺の背筋をそっと撫でた。


「お、おう……」


 スマホを受け取りメールを開くと『じゃあ、夜木君の明日1日、私にくれませんか……?』という文面に、眉の下がった渋い表情の絵文字が添えられていた。俺はそれに了解と返すと、幼馴染と向かい合う。


「なあ遥香……明日、白峰さんと会ってきていいか?」

「ムリ!」


 音よりも早い即答だった。


「は!? お前さっき言ってたことと全然違うじゃねーか!」


「冗談だし。まあホントは嫌だけど。そのかわり、デートの感想と心境の変化を日記に書いて提出して下さい」


「は……? それこそ意味分かんねーよ」


「あたしには知る権利があると思いまーす」


「こ、口頭で言うから……」


「ま、それで手を打ってあげよう。あ、あとアイスね? 高いやつ」


「その後付けはズルいだろ!?」


 幼馴染の承諾を得た俺は、明日の予定に備えてこの日はいつもより1時間早く眠りについた。

 


 

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