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こつん、と音がしたから顔を上げた。
ただそれだけのことに、空気が少し揺れた。
無だ。ここにはそれしかない。
真っ白な世界に自分がいる。
まっさらの中にぽかんと浮かんでいる。
自分というものを視認できたことは無い。
肉体があるわけでも、明確に自我があるわけでも無い。
いや、たった今まで明確でなかった、と言い換える必要がある。
音が自分を震わせて、ぼんやりとしたものに色を付けて生み出した。
何も無いということも、今知ったことだ。
こつん、とまた音がした。
どこからだと見渡すが、白の中にいるせいか、自分がどこにいて何を見ているのかすら分からない。
ついさっきまで心地良かったのに、はっきりとした意識はこの状況を不快に思った。
もっと見たい、と思うと、ぐっと力が入った。その後に知らない色が来た。白が明るい色なら、これは暗い暗い色だ。
これは嫌だ、と力を抜くと、世界が変わった。今度はカラフルな丸いものが自分の周りを無数に回っていることに気が付いた。
真っ白な中だった。自分も同様に回っていた。自分という形と、違う形を見た。カラカラカラと軽い音がする。
自分たちは何かを中心に回っていた。その何かを見ようと少し意識を上に向けると、同じように考えたらしい丸いものが大きく飛び上がっていた。そして、弾かれたように円から出ていく。落ちていく。
なんだこれは。
そう思った。
よくよく見ると、他にも丸いものが高く行っては落ちていく。
落ちていくのを見ていると、ちかちかと光るものと、強く光るものと、全く光らなくなるものとそれぞれ違いがあった。
自分はどうなるのだろうか?
気になった。やってみたいと思った。
少し勢いをつけて飛び上がると、周りを回っていた丸たちが見上げてきたような気がした。そして、中心にいたのは。
息を呑むと、体が強く弾かれた。
こつん、と軽い音だった。
下に強く引かれていく。ここで私は全てを思い出した。
ああなんてことをしてしまったんだと。




