愛する人?もう見つけたわ。
ほんのり性描写注意!
全員、病んでいます。ご注意ください
夫に愛人がいるけれど、そんなことはどうでもいい。だってもう愛していないもの。
結婚して半年で夫に愛人がいることを知った。今まで私に囁いた愛は嘘だと知った。誠実な人ではなかった。大嘘つきだった。私の中で、夫は憎悪の対象となった。
それから夫への愛も信頼も消え失せた。ついでに心も死んだ。
私の体調不良を理由に閨を共にすることも無くなった。夫も私を抱かない理由が出来て、愛人の元へ通う回数が増えた。
それから一ヶ月、二ヶ月…と時間が過ぎていくと義母から、喧嘩をしているのかと心配され、あれこれ聞かれた。
体調不良で、お互いの時間が合わなくてと言い訳を並べていたが半信半疑のようだった。まぁ、嘘だもの。
半年経つ頃には、義母の怒りがついに爆発した。後継ぎを作らないつもりか、と。
「いい加減にしなさい。どうして?貴方達、仲良くしてるのに何故、寝室は別なの?」
「夫には愛する人がいるので、私は必要ないかと」
「…愛人」
キッと夫を睨む義母。その目に耐えきれないのか、夫は顔を背けている。卑怯者。
「私はいつでも離婚を受け入れます」
「ま、待って!息子に言い聞かせるわ!」
「あら、愛人を妻にすれば良いのでは?」
「平民を妻に出来ないわ!」
「お義母様はご存知でしたのね」
「あっ…」
「ふふっ。あちらには子がいるそうですよ?後継ぎにはなれないかしら?」
義母の顔色は悪くなっていく。私には何も知らせず、愛人と別れろとでも言っておいたのかしら?まぁ、別れていないみたいだけど。
最悪の空気の中、義母と夫を無視して部屋を出て行く。
いいのよ。もう夫には興味ないわ。だって…
私も愛する人を見つけたわ。もう夫なんていらない。
薬指に嵌めた指輪に口付けて、愛する人を思い浮かべた。
会いたい…早く会いたい…
✩義母Side
どうしてこうなったのかしら。
息子の頬を引っ叩いた。何も言わずにただ俯く姿に更に苛立った。
「別れてないとはどういうことなの!」
「…言ったではありませんか。僕には愛する人がいると」
「私はあの女に大金を払ったのよ!?別れて別の街へ行けと!」
あの女は泣くフリをして、しっかりと渡した金を持って行った。あの女狐め!
そんな女狐に騙された息子なんて情けなくて涙が出る。
「子供がいるって本当なの?」
「…もうすぐ二歳になります」
「…その子は後継ぎには出来ないわよ」
「僕の子ですよ!」
「平民との子供なんて駄目に決まってるわよ!」
これからどうすべきなの。これで嫁と別れたら、もう嫁いでくれる娘なんていない。
結婚前に愛人の話が広まったせいだ。街で一緒にいる所を何度も目撃されたようで、断られる日々。
ようやく見つけた嫁の家の援助をするという条件で、結婚出来た。嫁は愛人のことを知らなかったようで、安堵していた。
「必ず嫁と子を作りなさい。二人作れば、後は好きにしなさい」
「…本当ですね?分かりました」
…そうよ。後継ぎとスペアさえ産まれればいい。平民の子では駄目なの。この血を絶えさせない。平民の血なんて入れさせないわ。
嫁も受け入れるしかないのに。いつまで拗ねているのかしら。もう逃げられやしないというのに。
✩???Side
半年前、夫に愛人がいることを知り、泣き続ける彼女を慰めたことから始まった。
誰にも見られないようにと庭の隅で、こっそり泣く姿に庇護欲が掻き立てられた。
彼女の涙をそっと指で拭うが、また溢れ出る涙。その泣き顔も美しい…と見惚れていたせいか、思わず口付けをしてしまった。
驚き、頬を赤くさせ、美しい瞳が大きく見開いた。
もう止められず、舌を絡ませて押し倒し、体を重ねた。
それからは毎日のように愛し合うようになった。手を繋ぐだけの日もあれば、長い時間口付けだけをしたり、まるで付き合いたての恋人のように貪るように体を重ねる日々。
私の独占欲が大きくなっていくと、夫と揃いの指輪を捨てさせた。バレないように同じデザインではあるが、私と彼女の名の刻印が入った指輪を贈った。
あぁ、愛おしい。私のものだ。
彼女が妊娠したら、すぐにでも奴から奪ってやる。
✩息子Side
僕には愛する人がいる。身分のせいで結婚は出来なかった…が、子供だけは産んでもらった。いつか子供を後継ぎに…と考えていた。
一応、夫の義務を果たそうと妻を抱いていたのだが、ある日の体調不良だからと断られてから半年。
半年、妻は理由を作って断り続けるようになった。
恐らく妻は気付いたんだ。まるで汚物を見たかのような目で見てくる。
その目から逃れるように、愛する人の元へと通い続けた。
そしてついに母上に知られてしまった。
二人産めば、彼女と再婚できる?それならば、今夜から毎日抱いてしまおうと考え、妻のいる寝室へと向かった。
…いない?どこへ行った?
探し回っていると、仕事中の使用人数人がコソコソと話していた。
「ねぇ、大旦那様の所、誰が掃除に行く?」
「あー…毎回掃除大変なのよねぇ。激しいから」
「すごいお盛んよねぇ。大奥様とはもう何年もしてないのに。やっぱ若い娘のが良いんだろうねぇ」
キャーッ!と使用人達が楽しげに騒いでいた。
父上が…若い娘と…?
最近、顔を合わせることがなくなっていたことに気付く。
まさか…母上がいるのに…そんなわけない。
心臓が早鐘を打つ。
「さっき廊下を歩いてたら聞いちゃったんだけど、すっごい声が漏れてたわ。隠す気無くなったのかしら」
急いで父上の寝室まで走った。嘘だ。信じられない。
扉の向こう側から女の喘ぎ声とベッドの軋む音が響く。
そっと扉を開ければ、父上の背中と妻と同じ髪色をした女が交わっていた。
まさか…
「お義父様っ」
妻だ。
嬉しそうに口付けを強請る、見たことのない姿を僕はただ見つめていた。
父上は酷く興奮した様子で何度も彼女に口付けながら愛を叫ぶ。
「あ、貴方達!何をしてるのよ!!」
母上の叫び声を聞くまで、僕は二人の交わりを見続けていた。
✩義母Side
息子と嫁の様子が気になりつつ、ゆったりとお風呂に入っていた。
後継ぎが出来れば…そうすれば、平民の血をこの家に入れなくて済むのよ。
嫁が嫌がろうと、嫁の義務なのだから産んでもらわないと困るのよ。
恐らく息子は今夜から子作りをするだろう。それが無理矢理でも仕方ない。
お風呂から上がり、寝室で横になる。
…そういえば、旦那様と眠ったのはいつだったかしら…
寝室も別、交わりも無くなってしまってから数年…?
…お誘いしようかしら。はしたないけれど…と、薄着の上からガウンを着て夫の寝室へと向かった。
…あら?息子が廊下にいるわ。何故、部屋にいないのよ。それに旦那様の寝室の前…何をして…
「あぁっ、君は最高だっ。愛してるんだ!」
「わ、私もっ、愛してるのぉ!」
夫と嫁の声が聞こえた。幻聴…?そうよね!
部屋に近付くと二人の声が響いた。
嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘…
「あ、貴方達!何をしてるのよ!」
扉を開くと裸の二人がこちらを見ていた。嫁は驚いていたが、夫は鼻で笑った後、また嫁を押し倒して口付けていた。
そこで私は気を失った。
これは夢よ。悪夢なのよ。目を覚ませば、いつも通り…
✩義父Side
彼女が気を失うまで抱き潰した後、廊下で騒いでいた妻と呆然とする息子を見に行く。
気を失って倒れた妻を一瞥した後、近くにいた使用人に連れて行かせた。
「何を驚いている?」
「は、母上と仲が良かったのでは…!何故、よりにもよって妻を…」
「愛おしいからだ。お前の愛人を知ってから悲しみ、苦しむ姿を見て惚れた。お前が愚かで助かった。私のものだ…」
部屋へと戻り、彼女の体中に痕をつけていく。私のものだ。
眠る彼女にまた覆いかぶさった。
翌日、妻の元へ行き、離婚か今まで通り過ごすのか決めておけと吐き捨てた。
泣いて嫌がる妻に離婚届を渡してその部屋を出た。
数年前までは愛していた女だった。だが、気付いてしまった。
息子は私の子ではないと。
話しているのを聞いてしまった。妻と私の友人がコソコソしているのを見て、気付かれないように後をつけた。
人目のない場所で、口付けて「僕達の息子は、立派になったな」と。
許せない。許さない。
信じていたのに。信じた私が愚かだったのか。
復讐を考えた。苦しめたい、生き地獄を味わえと。
そんな時、彼女を見つけてしまった。愛おしい彼女をもう手放せない。
あの二人…いや、三人に絶望を与えた後、彼女と二人で暮らそう。
私のものだ。
✩彼女Side
こんなに上手くいくと思わなかったわ。
誰かに目撃され、同情されるように毎日同じ場所で、泣き真似をしていたら義父が引っかかってくれた。
これはチャンス!
か弱く、夫に裏切られた可哀想な嫁を演じた。まさか口付けられるとは思わなくて驚いたけど…
最初は利用して夫に復讐しようと思っていた。けれど、義父の甘い言葉に流され、愛されるようになって、今では復讐なんてどうでも良くなった。
愛し愛されるって、やっぱり幸せよね。
義父が裏切らないように、もっと私に依存してもらわないと。私ももっと義父を愛して囲い込むの。
「お義父様。私、幸せです」
「私もだ…もう離さないぞ」
もう隠さなくていいのよね。私達、愛し合っているのだから。
「私、必ずお義父様の子を産みます。裏切りません。だからお義父様も私以外を抱かないで…」
「あぁっ…約束しよう!」
義父から聞いた。夫とは血の繋がりがないと。
義母の不貞だと。復讐をしたいと。
あぁ、仲間だわ。
慰めの言葉と抱擁で、義父の凍りついた心を溶かす。
そしてその時がやってきた。
抱かれている最中、大きな声を出したのが良かったのか、愚かな二人が現れた。
あの絶望した顔。今思い出しても笑えるわ。
あれから義母はベッドから出ないで泣き続けているらしい。
離婚届にサインをさせようにも喚き散らして話にならない。
夫にも離婚を迫ったが、拒否された。
「絶対に離婚はしない」
私達がくっつくのが気に食わないのね。
いいわ。いつかはサインしてもらうけど、今は秘密の愛を楽しむとしましょう。
「旦那様。今日はお仕事が休みなのでしょう?お庭で散歩しませんか?」
「あぁ、いいな。行こう」
指を絡ませて、見つめ合った。
この愛だけは手放せない。
✩息子Side
廊下の窓から庭を見る。
本物の夫婦のように寄り添う二人。お似合いだ。
ズキズキと痛む心を無視して、ただ二人の姿を見つめる。
あの日。僕が父上との血の繋がりがないと知った。
いや…本当はもっと前から気付いていたのかもしれない。ただ認めたくなかった。
父上の友人と顔が似ているかもしれない…ホクロが同じ場所にあるのは偶然なのか…
あの日に父上が吐き捨てた言葉が頭の中で何度も繰り返された。
「親子揃ってよく似ているな」
僕の本当の父親は、あちこちの女に手を出すクズだと知った。
本当に僕の父親なのか知りたくて呼び出した。
その人はあっさり認めた。
母上とは遊びだった。ただ父上にも抱かれていたので、どちらの子供が産まれるのか賭けだったらしい。そして産まれたのが、この男の血が流れる僕…
あぁ、僕も父親と同じだ。妻がいるのに愛人を作った。騙していた。
妻も父上も苦しんだはず。
離婚を迫られたが、頷けなかった。今、自分が何をすれば、どうすればいいのか分からない。
庭を歩いていた二人が口付けている。
幸せそうに見つめ合っては口付けて。
…あぁ、僕は最低だ。あの二人を見て興奮してる。あの時の情事も今でも鮮明に思い出せる。変態だ。
離婚したくないのは、まだ二人を見ていたいから?寝取られているのを喜んでいるから?
あぁ、僕はどんどん醜くなっていく。
二人が幸せそうに微笑む姿をただ見つめることしか出来なかった。
手放せない。まだ…僕は…
✩義母Side
「離婚なんてしない!」
部屋の物を投げては壊していく。
どうして、何故、どこでバレたの。ただの遊びだったのに。愛してるのは夫なのに。どうして?
酷く冷たい瞳が私達を睨んだ。
『親子揃ってよく似ているな』
『あの男も離婚されるそうだ。良かったな、お互いに』
『この家の後継ぎは心配しなくていい。私と彼女の子が継ぐ。楽しみにしててくれ』
離婚しても、この家に残っても地獄。
庭から笑い声が聞こえる。あぁ、また始まるのね。
幸せそうに笑うあの二人の声。まるで新婚のように庭を散歩する。聞きたくないのに。見たくないのに。
ふらふらと窓に近付く。
口付けて。抱き合って。見せつけて。
「早く私達の子供に会いたいな」
「私もです。ねぇ、旦那様。子沢山に憧れているので、頑張ってくださいね」
「あぁ、勿論だ。今から名前を考えないとな」
夫が嫁を抱きしめる。幸せそうに。
私に気付いた嫁が、夫に見えないように嫌な笑みを浮かべた。
夫の首筋に口付けて、猫のように甘える。
夫は嬉しそうに嫁の頭を撫でた。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
そこは私の場所なのに。私の夫なのに。
どれだけ喚こうと、泣いても、怒っても、夫は私を見やしない。
離婚しても行く当てなんてない。あの男は遊びだから、私と再婚なんてしないだろう。そもそも借金まみれだと聞く。
愛している夫は嫁に夢中。それでも私は諦められない。
いつかまた愛が戻ると信じて。
✩義父Side
あれから時が経ち、子供が産まれた。男女の双子だ。彼女と私に似た可愛い子。
乳母を雇ってはいるが、彼女が自分でも子育てがしたいと言ったので、私も協力して育てることに。
「ふふっ。いっぱい飲んで大きくなるのよ」
乳をやっている姿は女神のようで、ついじっくり見てしまう。子供に嫉妬してしまう。
授乳が終われば、私の番だと彼女の膝に頭を乗せる。
「あらあら、旦那様ったら」
優しく頭を撫でられる。心地良い…幸せだ…
ただ、邪魔な二人が未だに離婚に応じないのが腹立たしいが。
あれから暫くして、二人を離れへと押し込んだ。
さっさと離婚して本当の夫婦になりたいというのに…邪魔な奴らだ。
彼女に知られないように消してしまった方がいいな。
今度、馬車に細工をして二人…いや、親子三人仲良く消えてもらおう。
不慮の事故で消えれば…
「あら、旦那様。怖いお顔をしてどうなさったの?」
眉間のシワを優しく指で擦られ、ふっと息を吐く。
「いや、幸せだなって思ってね」
今はこの幸せに包まれていよう。彼女と子供達を腕の中で守りながら。
愛おしい存在を抱きしめた。
この先どんな事が起きても絶対に手放さない。
「愛している」
愛おしい人と共に生きて、共に死のう。それが私の望みだ。