ぼくはドしか引けない。
ド…♪
ぼくはピアノが好きだけど…。
曲を奏でることはできなかったし…。
それに上手に弾ける手や耳が無くなった…。
動画で見るコンサートや、ストリートピアノで弾く演奏者はとても楽しそうで…。
そんなことを気にせず一人で弾けば良いのだろうけど…。
ぼくは、みんなを楽しませたいし…。
みんなと楽しく音楽を…。
けれど、ぼくにはドの音しか分からなくなった。
そして、手にある指は左の小指だけになった。
他の音が分からない。
他の音が聞こえない。
左の小指だけのド…。
左の小指だけの音…。
誰に伝わるのか?
音楽の良さは、音楽の彩は…深く。
ドの音だけでは伝わらない…と、思う。
だから、ぼくはピアノを嫌いになった。
いや、ぼくがピアノから離れるようにした。
ピアノから離れると、他の彩を探すようになった。
ピアノと違う彩と出会い、ぼくを楽しませてくれた。
絵だけで楽しそうにしているキャラクター達。
絵と字で楽しそうにしているストーリー物語。
字なのに楽しそうにしているライフ生活と命。
森は木々の中にひっそりと花が咲き。
海は青々の中にひっそりと貝が隠れ。
山は岩々の中にひっそりと鳥が歩く。
世界は、様々な彩に溢れている。
ピアノがなくったて大丈夫…。
大丈夫なんだ…。
・・・・。
どこからかドの音が聞こえる。
ひたすらドを奏でるピアノの音がする。
ドの音ばかりで、何の変化もない音だけど…。
何故か気になる…。
気になるドの音が続く…。
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪(ソ…♪)
ド…♪
ド…♪(ファ…♪)
ド…♪
ド…♪(ミ…♪)
ド…♪
ド…♪(レ…♪)
ド…♪
ド…♪(ド…♪)
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪(ソ…♪)
ド…♪
ド…♪(ファ…♪)
ド…♪
ド…♪(ミ…♪)
ド…♪
ド…♪(レ…♪)
ド…♪
ド…♪(ド…♪)
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪(ソ…♪)
ド…♪
ド…♪(ファ…♪)
ド…♪
ド…♪(ミ…♪)
ド…♪
ド…♪(レ…♪)
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪ドォ…♪
…?
何故だか…ドの音以外の音が聞こえている?
その後も、ドの音が続き…。
ドの音が重なった時だけ…。
ドの音以外の音が聞こえる。
優しくて…。
ドの音に寄り添って…。
静かだけど…力強くて・・・・。
ドの音だけが響くだけのメロディに何かが添えられていくような。
ドの音が消えると…とても静かだ。
その間にもドの音に寄り添っていた音が…何かをささやいているように聞こえる。
なにも聞こえない。
だけど…。
ああ、温かい音色が一気に溢れてくる。
ぼくは、一人じゃないということを教えてくれているようだ。
それでも、ぼくはピアノから離れていたんだ。
それを思い出して…また、寂しい感じになる。
また、ドの音が聞こえてくる。
それを表現してくれているよな言葉が聴こえる…。
そんなことは無いよ、と…。
いつでも…戻っておいでよ?と…。
だって、さびしくても楽しい音はある。
だから、君はドの音を奏でて?
それ以外の音は任せて♪
さあ、音楽を…楽しもう♪
と、言ってくれているみたいだ。
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪(ソ…♪)
ド…♪
ド…♪(ファ…♪)
ド…♪
ド…♪(ミ…♪)
ド…♪
ド…♪(レ…♪)
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
ド…♪
…。
ド…♪
・・・・。
ド…♪
その曲が終わり。
ぼくは、ひさしぶりにピアノの椅子に座った。
そして…。
左の小指でドの音を弾いた。
ド・・・・♪