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第86話

「貴様、ロリコンでは無いな」

「だからそうだって言ってんだろ」


 理事長室から出るや否や、案の定待ち構えていたかのようにモンブランが廊下に立っていて、自室に戻ろうとする俺の後と小さな歩幅でとことこと追ってくる。


「あれは貴様と同い年か。随分と仲が良さそうに見えたが」

「見えたがって……見たのかよ」

「見たぞ」

「はぁ……」


 こいつなら出来るよなと、最早驚きもしなくなった自分の方に驚いた。


「ため息をつきたいのはこっちの方だ。教師たるものがロリコンでは無いなんて由々しき事態だ」

「ロリコンが教師になったらマズいだろ……」

「ロリコンが教師になる事自体が悪なのでは無いぞ。己の欲望を制御出来ず幼女を傷つける奴が悪いのだ」

「そういう事をするのがロリコンなんじゃねえの?」

「我は善のロリコンだ。だからそういう事はしない」


 ダメだ。やっぱりこいつとはまともに話が出来ない。なんかもう、思考回路の構造からして違っている気がする。手懐けたエボニー先生には改めて敬服せざるを得ない。


 こんな奴の力を借りるのは癪でしか無いのだが、俺は後ろを振り返り、モンブランに向かって口を開く。


「来週、俺とウェリカをブーゲンビリアまで連れて行け」

「我の力を欲するか」


 モンブランは俺の言葉を聞くと腕を組んで偉そうにふんぞり返った。銀髪の毛先が、廊下に触れて僅かに煌めきを放つ。ずっと思ってたけど、あの長さで邪魔にならないのだろうか。


「いいだろう。ロリコン以外に手を貸すつもりなど無かったが、ガランスからも協力してやれと言われているからな」


 そうだったのか。結局回復魔法を掛けてもらったお礼も言えてないし、今度会ったら色々と感謝しないとな。


「言っておくが貴様にでは無いぞ。ウェリカに協力をしてやれとガランスは言っていた」


 そうだったのかよ。まあ何にせよ協力してくれるのならいいけど。


「だが貴様を置き去りにすればウェリカは悲しむだろうからな。仕方なく、貴様も連れて飛んで行ってやろう」

「飛ぶって……やっぱり飛ぶのか……」

「当然だ。翼があるのに飛ばないのは馬鹿だろう」


 そりゃそうなんだろうけど、飛ぶのか。空を……。


 いや、躊躇してる場合じゃないだろ。これくらいの無茶はしないといけないだろ。アルドリノール。


「貴様もしかして、高所が怖いのか」

「いいんだ。今更怖いなんて言ってられないし」

「大丈夫だ。落ちたら最悪我がどうにかする」

「そうなったら最悪だな……」

「我に傷を癒されるなどそうそう無いのだぞ。むしろ最高だろう」

「落ちる前に拾ってくれよ!?」


 お願いだから地面に落ちる前に空中で上手い感じにキャッチして欲しい。そもそも落ちないようにして欲しいけど。


「少しは我を信用しろ。我は最強のドラゴンだぞ」


 見た目幼女にそう言われても、はいわかりました、と首を縦に振る事は難しい。だけど。


「まあ……少しは、頼りにしてるよ」


 ちょっとくらいは、信じてもいいかなとも、そう思った。

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