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第83話

「行ったね」

「行ったね」

「行っちゃったね……」


 アルドリノールの手を引いて、図書室から去っていくウェリカ・クラウディアの後ろ姿をモンブランたち図書室に残された三人は見送った。


 突然、しかも強引に手を引っ張られたのにも関わらず振り解く事もしないでされるがままになっている光景を見て、やはりアルドリノールはロリコンであるという認識をモンブランはさらに深めた。ロリコンは皆、自分がロリコンであると認めないものだ。もしくは自らがロリコンであると自覚していない場合もままある。彼が自覚するときはいつか訪れるのだろうか。訪れずとも、認めさせればいいだけの話であるが。


「わかっちゃった。私」


 一度開かれ、既に再び閉ざされた出入口のドアを見ながら、ミリアはどこか恍惚とした表情で口元を抑えながら囁くような声で言った。やはり貴様もわかるか、とモンブランは黙って頷いた。


「わかったって……何を?」


 セラフィーナが頭上にクエスチョンマークでも付けたくなるほどにわかりやすく首を横に傾げ、わからないと言った仕草をした。貴様はまだわからないのか、まだまだ修行が足らんなとモンブランは小さくため息をついた。


「あいつもロリ――」

「ウェリカちゃん、アルドリノール先生の事が好きなんだよ!」

「そうか、そう来たか」


 いかにもロリの定義から外れた人間が考えそうな事だなとモンブランは一気に冷めた気分になった。腐る前にさっさと自分で自分に若返りの魔法でも使って欲しいところだと、ミリアの発達した胸部を見てモンブランは思った。


「え、そうなの!?」


 セラフィーナがミリアの考察を耳にして急に大きな声を出して、驚愕の反応を示した。貴様さっき静かにしろとか言ってただろうに。もしかしてアレだろうか。普段は大人しい癖に情事が絡むとモンブランみたいに甘々な妄想をしてしまう系の痛い奴なのだろうかとモンブランはセラフィーナの頭に栗を盛りつけたくなったが生憎ここに栗は無かった。


「だって何とも思ってないならあんな焦って連れ出したりとかしないじゃん!」

「確かに……まるでセラたちから早く遠ざけようとしてるみたいだった……」

「だよねだよね! そうなんだよきっと!」


 勝手に結論付けて盛り上がる二人とは異なり、モンブランは心底呆れていた。ロリが大人を好いていたとしてもそれは恋愛感情や性的欲求に由来するものでは無いのが定説だ。それにウェリカは親からもあまり愛情を与えられずに育てられたと聞いている。尚更、自分を大切にしてくれる大人に対して勘違いした感情が芽生えてしまうのも何ら不思議では無い。


「モンブランちゃんはどう思う!?」

「アルドリノールがウェリカをどう思っているか、それが重要だ」

「だよね! どう思ってるのかな!」

「あいつの中では、もう答えは決まっているだろうさ」


 あとはいつ自覚するか、それだけだ。


「あ、あの……」


 どうにかして自覚させられないかと思案していると、セラフィーナがテーブルに置かれたままであった本の一段落を指差しながら、モンブランに声を掛けてきた。


「何だ」

「この……魂壊竜の封印を解いて服従させる事に成功したエボニーって人、確か……」

「ああ。こいつもロリコンだ」

「ええ……」


 あいつも自分がロリコンだとなかなか認めようとしなかったなと、いつかの出来事をモンブランは回想する。あいつは今……何してたんだったか。


「そ、そうじゃなくて……国立魔法学校の……」

「ああそうだ。校長だ」


 思い出した。優れた魔法の才能と魂壊竜を服従させる事に成功した実績を買われて母校であるバキア国立魔法学校に教師として舞い戻ったのだった。数年担任をやった後、最近ようやく校長に成り上がったんだった。


 もっとも。


「我はあいつに服従などした覚えは無い。むしろあいつが我に従ったのだ」


 この考えを曲げるつもりは、モンブランには無いのだが。

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