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第80話

 授業終了後、俺とウェリカはいつものようにグラウンドにやって来た。


「何をするつもりだ貴様ら」

「軽く指でつっつく感じを意識してみろ。多分お前ならそれくらいでも全力殴打になるはずだから」


 なんかくっついてきている奴もいるけど、とりあえず放っておいてウェリカに一言アドバイスをしてやる。


「わかったわ。つっつけばいいのね」


 そう言ってウェリカは俺の肩を指で突いてきた。別に物理的に突けとは言っていないけど、イメージするのにはこういうのも必要だろうと思い直す。


「イメージは出来たわ。初級魔法――ウインドショット!」


 ウェリカが雲一つない青々とした空へと右手を掲げ、魔力を集中させる。


「風魔法使いか。面白い」


 俺の斜め後ろに立っている奴――モンブランがフッと笑みを浮かべてウェリカを見た。


「ぶへぇ!?」


 ウェリカが変な鳴き声を発しながら二つ結びの髪を揺らして魔力を放出するとともに、とてつもない風圧がグラウンドに吹き荒れ、土煙がペガサスの如く唸り声を上げて空へと翔けていく。その一方でウェリカはしっかりと地面を両足に付けたままで、飛んでいく事は無かった。今までのように衝撃に負けて一緒に吹っ飛ばされないようになった辺り、着実に進歩はしていると言えるだろう。


「なんだこの魔力は!?」


 だけどやっぱり普通の魔法使いからしてみればとんでもないレベルなのだという事を、綺麗に整えられていた髪をぐちゃぐちゃに乱して愕然とした表情をしているモンブランを見て再認識させられたのであった。


 *


「九百倍の魔力、か。常識外れもいいところだな」

「人の魂を破壊する竜が言っても説得力無いな」


 発言自体は真っ当だが、言っているドラゴンだけどが人なだけについ何言ってんだとなってしまう。


「ねえ、どうやって人の魂を破壊するって、どうやってるの?」


 俺の言葉を聞いてか、ウェリカが素朴な疑問を純粋な顔でモンブランにした。「あたし変な事聞いてる?」と俺を見て首を傾げているが、とんでもない事を聞いている自覚が無い辺り本当に魔王になってしまうのではないんかないかってちょっと不安になるぞ。


「今は『誓約』があるから破壊は出来ない。だが方法なら説明出来るぞ」

「教えて!」


 きらきらとした笑顔でそう言えちゃう辺り、やはりウェリカは魔王になる存在なのかもしれない。


「まず心臓辺りをこう、ガッとやった後、グチャグチャっとやって、バゴーンとやるんだ」

「ぐちゃぐちゃ? ばごーん?」

「そうだ。使う魔力が中途半端だと性格を歪ませるだけで破壊には至らないから気をつけろ。勢いよく使うのが肝心だ」


 ウェリカは両手で側頭部を抑えて考える素振りを見せていたがやがて俺に「あんた意味わかる?」と尋ねてきた。


「わからない」


 俺は首を横に振る。いくらなんでも抽象的すぎるし、身振り手振りをされても何がどうなっているのか、具体的には何をどうすればいいのかが一切わからなかった。


「そう……」

 

 むしろこのまま、わからない方が世界のためにもいいだろうなと、肩を落とすウェリカを見て、俺は思ったのだった。


「それと一つ。魔法を発動する前にもう少し魔力を練る時間を作れ。高度な魔法になればなるほど事前の準備に時間を費やした方がいい」

「わ、わかったわ……」


 モンブランはウェリカに指をさしてこう言った。なんでこういうアドバイスは流暢なんだよ。


「あと貴様はもっと弾けろ。暴れろ。遠慮するな」


 俺にはそう言ってきたが、もう意味がわからなかった。


「さすれば貴様も、ロリコンになれる」

「ならねえよ!」


 もう意味がわからなかった。

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