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第75話

 底の無い暗闇から引っ張り出されたかのような感覚を全身に感じ、私は目を覚ました。夢の中で誰かと話していたような気がしたけど、誰と話していたのか、何を話していたのか、もう思い出せない。


 夢の記憶なんていつもこんな感じだしあまり考えないようにしようと思いながら、私は傍らに置いてあった眼鏡を拾い上げる。レンズには埃一つついておらず、やたらと綺麗に磨かれていた。


 それよりも、私は今どこにいるんだ? 眼鏡を掛けてふと横を見ると、シンシュさんがベッドで寝ているのが視界に入って思わず身震いする。


 私はシンシュさんと戦って――それからどうなったんだ?


 思い出そうとしてみたけど、これも夢のように、何も思い出せなかった。


 ――私たちは、どうなったんですか。


「……ん」


 心の中で尋ねながらシンシュさんを見ていると、タイミングを見計らったかのようにシンシュさんが目を覚ました。


「レイノ……さん……申し訳……ありませんでした……」


 まだ目覚めて十秒も経っていないはずなのに、シンシュさんは私を見るや否やそう言って頭を下げてきた。


「なんで……シンシュさんが謝るんですか……」


 私は思った事を、そのまま口に出した。


 謝らなければならないのは、どう考えても私の方だろう。


「……わかっていたんです。あなたに敵意を向けて、戦っても、何の意味も無い事に」


 シンシュさんは自嘲的に声を漏らす。


「本当に戦うべきなのは、あなたじゃないって事に」

「じゃあ、誰と戦うって言うんですか」

「それは――」


 私が少々乱暴に聞くと、シンシュさんは水色の髪を整えながら、大きく息を吸った。そして。


「ブーゲンビリアにいる『魔物化現象』を引き起こした張本人です」

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