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第59話

「あたしも……改造されたのかな……」


 ノコエンシス領まで戻る馬車のキャビンの中でウェリカが唐突に尋ねてきた。


「違うだろ」

「なんでそう言い切れるのよ!?」


 無意識の内にそう返事をした後、気づく。


「どうして俺、そんな風に言い切れたんだ……?」

「はぁ!?」

「いや、ごめん。そんな訳ないだろって考えるまでもなくそう感じて……」

「どうしてよ!?」

「どうしてなんだろうな……」


 こめかみを抑えてしばらく逡巡してみるが、答えは出て来なかった。

 

「元々、魔法が使えなかったってカトレアから聞いたんだけど、本当か?」


 とりあえず、俺の知っている事を確認する。カトレアは風邪を引いて体調が良くなったら魔法の才能に目覚めていたとか言っていた。


「ええ。姉上からはそう聞いているわ。正直その頃の記憶は曖昧だから、あたしもよく覚えてないのよ。ああでも、ずっと家のベッドで寝てて、苦しかったのは覚えているわ」

「なら改造はされてないんだろう。ずっと家にいたんだから」

「でも……父上がこっそり……とか……」

「もしそうなら、自分で改造しておいてあんな蛇蝎みたいな嫌い方するか?」

「だ、だか……? ま、まあ、確かにそうよね……」

「だから、お前が魔力を手に入れたのはもっと別の要因があるんだよ」


 魔法の才能は生まれ持ってのものであり、後天的に手に入れる事は不可能だ。その論理からして冷静に考えると、ウェリカの九百倍の魔力量も何らかの方法で後天的に植えつけられたものだとするのが自然なはずだ。だけど俺は、ウェリカは改造されていないと確信している事に気がついた。可能性としてはあるはずなのに、それは無いと脳が自動で修正してくる。自分でもどうしてなのか全くわからなかった。


「じゃあ何なのよ。別の要因とやらは」

「わかんないけど……大切なのは、どのようにして力を手に入れたか、じゃなくて、力をどのようにして使うか、じゃないか?」

「どのようにして使うか、ね……」


 ウェリカは俺の言葉を聞くと、自分の手の平を色々な角度から眺め始めた。


「あんたは……どう使ったらいいと思う? あたしの、この力」


 しばらくそうした後、俺の目を真正面から見据え、そう尋ねてくる。


「お前が望むように使えばいいと思う」

「そう言われても……」

「なら、俺のために使ってくれ。最強の風魔法使いを、俺は見てみたいんだ」


 好きにしろと言われてもどうすればいいのかわからないと言いたげだったウェリカに俺はいつか言った事をもう一度言った。


「……あんたのために、か。それも悪くないのかもね」


 ウェリカはしばらく考えを巡らすかのようにぼんやりと天井を眺めると、囁くような声でそう言った。


「だったら……その……」


 そしてウェリカは、そのままの声でぼそっと呟く。


「だったら?」

「もっと教えなさいよ! 最強になるための方法を!」

「わかってるよ」


 なぜか照れたように言うウェリカに、俺はやれやれと思いながらも、はっきりと頷いたのだった。

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