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第56話

 朝、背中と胸に違和感を覚えながら、俺は目覚めた。


 違和感の正体にはすぐに気がついた。まず一つ、ベッドではなくソファーで寝ていたから。


 もう一つは、なぜかウェリカが俺の胸に頭を乗せる形で寝ていたから。


 机に突っ伏しているみたいに頭と腕を俺の胸の上に乗せて、下半身は床にだらりと垂れ下がっている。眠っているのか、顔をうずめたまま、俺が起きた事に気づいた素振りを見せない。


 髪に顔が隠れていて見えないので、指で毛先を掴んで形の良い耳に掛けてやる。こうして露わになった顔は、幸せそうな寝顔だった。半開きになった口からはよだれが垂れていて俺の服にべっとりと粘着質の液体が付着しているが、まあいいかと思わせるくらいの表情だった。


「美少女貴族がだらしない顔しやがって……」


 一旦ウェリカから視線を外すと、分厚いカーテンの下から明るい日差しが射し込んできている事に気がついた。身体は若干痛くなってるけど、案外ソファーでも熟睡できるものなんだな。


 手を伸ばせばちょうどカーテンに手が届いたので、掴んで横に引っ張る。するとまぶしい光がウェリカの寝顔に当たる。


「ふぁああ……」


 するとウェリカがあくびをして、ぱちぱちとまばたきをした。そして寝ぼけまなこで俺を見た。


「へぁ!? あ、あたしなんで!?」


 この状況に気がついたらしいウェリカが立ち上がりながら上ずった慌て声を出した。


「俺が知りたいよ。ベッドで寝たんじゃないのか?」

「あ、待って、思い出したわ。あたしちょっと前に一度起きて、あんたが目覚めるの待ってたのよ。でもいつまでも起きないから待ちくたびれて……」

「それで寝たのか。俺の上で、よだれを垂らして」

「わ、悪かったわよ……」


 俺が濡れた胸元を指差すと、ウェリカはばつの悪そうに言った。


「別にいいけど。お前の寝顔可愛かったし」

「かわっ!? ちょ、忘れなさいよ!」

「はいはい」

「本当にわかってる!?」


 ウェリカが顔を赤くして言ってきて、適当に返事をしたが、正直忘れるつもりはない。願わくば彼女がこうして幸せな寝顔で寝られる日々を、守っていきたいから。

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